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製薬会社の経理に転職を成功させるためには?業界特有の知識と実践的ノウハウを完全解説

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2025年8月20日 ジャスネットキャリア編集部

製薬会社の経理は研究開発費の複雑な会計処理や薬事法規への対応など、一般的な経理業務とは大きく異なる専門知識が求められるものです。そのため、他業界では得られない専門性と安定性を兼ね備えた経理職として、転職先として魅力的な選択肢と言えるでしょう。

本記事では、製薬会社の経理部門で実際に求められる業務内容から、転職成功のための具体的な準備方法、さらには入社後のキャリアパスまで、業界にくわしいエージェントの視点から解説します。

目次

■製薬会社の経理職が注目されている理由

製薬業界は日本経済の中でも特に安定性と将来性を兼ね備えた分野として注目を集めています。高齢化社会の進展により医薬品への需要は継続的に増加し、新型コロナウイルスの影響で医療・ヘルスケア分野への関心がさらに高まりました。このような背景から、製薬会社の経理部門は単なる数字の管理者ではなく、企業の戦略的パートナーとしての役割を担うようになっています。

製薬会社の経理職は、一般企業の経理とは大きく異なる専門性を要求される職種です。研究開発投資の巨額な資金管理から、複雑な薬事承認プロセスに関わる会計処理、国際的な取引における為替リスク管理まで、幅広い知識と経験が求められます。そのため、 この分野での専門性を身につけることで、キャリアの選択肢が大幅に広がり、他の業界では得られない貴重な経験を積むことができる のです。

■どんなものがある?製薬会社の求人例

【中堅製薬会社】経理スタッフ(研究開発会計担当)

ジェネリック医薬品・新薬開発の製薬会社で、研究開発投資の拡大に伴い、専門的な会計処理を担当できる人材を募集

職務内容 研究開発費の月次・四半期決算処理
臨床試験費用の予実管理と会計処理
開発プロジェクト別原価計算
監査法人対応(研究開発関連項目)
予算策定業務のサポート
応募資格【必須】 経理実務経験3年以上
日商簿記2級以上
Excel中級レベル(関数・ピボットテーブル)
待遇 年収:450万円~600万円
賞与:年2回(5.5ヶ月分)
退職金制度:確定拠出年金
各種社会保険完備
資格取得支援制度
【大手製薬会社】経理課長候補(連結決算・税務担当)

新薬研究開発・製造販売、海外事業展開を行う大手製薬会社で、海外子会社の増加により、連結決算・国際税務の専門家を急募

職務内容 連結決算の統括(月次・四半期・年次)
海外子会社の決算指導・管理
移転価格文書化対応
国際税務プランニング
税務調査対応
部下3-5名のマネジメント
監査法人・税理士法人との折衝
応募資格【必須】 経理実務経験8年以上
連結決算経験3年以上
マネジメント経験
英語ビジネスレベル(TOEIC750点以上)
待遇 年収:750万円~1,000万円
賞与:年2回(6ヶ月分)
退職金制度:確定給付年金
各種社会保険完備
住宅補助:月3万円
資格取得支援制度(受験費用全額補助)
【外資系製薬会社】経理財務部長

バイオ医薬品の研究開発・製造販売、グローバル企業の日本法人。日本市場での事業拡大に伴い、経理財務部門を統括する部長職を新設

職務内容 経理財務部門全体の統括(部下15名)
本社(米国)への月次・四半期レポーティング
日本法人の中期事業計画策定
M&A・提携案件のファイナンシャルデューデリジェンス
資金調達・運用戦略の立案・実行
内部統制制度の整備・運用
経営陣への財務分析レポート作成
税務戦略の立案(移転価格含む)
応募資格【必須】 経理財務実務経験12年以上
部門マネジメント経験5年以上
英語ネイティブレベル(海外本社との会議・資料作成)
財務分析・企業価値評価スキル
待遇 年収:1,200万円~1,800万円
賞与:年1回(業績連動、年収の30-50%)
ストックオプション制度
退職金制度:確定拠出年金(会社拠出月5万円)
各種社会保険完備
住宅補助:月8万円
自家用車通勤可(駐車場代会社負担)
海外研修制度

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■どんな業務が製薬会社の経理部門にはあるのか

製薬会社の経理部門における業務は、一般的な企業の経理業務に加えて、業界特有の複雑な処理が数多く存在します。

(1)研究開発費の会計処理

最も特徴的なのは、研究開発費の会計処理です。製薬会社では売上高の15〜20%を研究開発に投資することが一般的で、この巨額な投資をどのように会計処理するかが企業の財務状況に大きな影響を与えます。

(2)臨床試験に関わる費用

臨床試験に関わる費用管理も重要な業務の一つです。第Ⅰ相から第Ⅲ相まで続く長期間の臨床試験では、数十億円規模の費用が発生することもあり、これらの費用を適切にタイミングと金額で計上することが求められます。また、薬事承認が得られなかった場合の損失処理や、承認後の特許権の会計処理なども、製薬会社特有の重要な業務です。

(3)知的財産権の管理

知的財産権の管理も欠かせません。特許権、商標権、ライセンス契約に関わる収益認識や費用処理は、製薬会社の収益構造を理解する上で不可欠な知識です。さらに、海外子会社との移転価格設定や、各国の薬価制度に応じた収益予測なども、グローバル展開する製薬会社では日常的に行われている業務となっています。

■なぜ製薬会社の経理には専門知識が不可欠なのか

製薬業界は他の業界と比較して、極めて高度な専門知識が要求される分野です。

(1)法規制への理解が必要

まず、薬事法や医療機器等法といった法規制への理解が必要になります。これらの法律は頻繁に改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップし続ける必要があります。また、IFRS(国際財務報告基準)やUS-GAAP(米国会計基準)など、国際的な会計基準への対応も必須です。

(2)科学的な知識が必要

研究開発段階における会計処理の判断には、科学的な知識も求められます。例えば、ある研究プロジェクトが技術的に実現可能かどうかを判断するためには、基礎的な薬学知識や臨床試験のプロセスを理解している必要があります。これらの判断が、開発費の資産計上か費用計上かを決定し、企業の財務諸表に大きな影響を与えるからです。

(3)ビジネスモデルへの理解が必要

さらに、製薬会社特有のビジネスモデルへの理解も重要です。特許切れによるジェネリック医薬品の影響、バイオシミラーの台頭、個別化医療への対応など、業界のトレンドが財務に与える影響を予測し、適切な会計処理を行う能力が求められています。

■どんな資格が製薬会社の経理転職に有利なのか

(1)日商簿記検定2級以上

製薬会社の経理部門への転職において、最も基本となるのは日商簿記検定2級以上の取得です。しかし、それだけでは不十分で、公認会計士や税理士といった国家資格があると大きなアドバンテージとなります。特に 公認会計士の資格は、監査法人での製薬会社監査経験と組み合わせることで、非常に高い評価を得ることができます

(2)USCPA(米国公認会計士)

USCPA(米国公認会計士)の資格も注目されています。多くの製薬会社が海外展開を積極的に行っているため、米国の会計基準に精通していることは大きな強みになります。また、BATIC(国際会計検定)なども、グローバル企業での経理業務において評価される資格です。

(3)薬事関連の資格

意外に重要なのが、薬事関連の資格です。 薬事コンサルタント資格や臨床開発モニター(CRA)の知識があると、研究開発費の会計処理において非常に有利になります 。これらの資格は直接的な経理資格ではありませんが、製薬業界の特殊性を理解していることを証明できるため、転職活動において差別化要因となります。

■どのような経験が製薬会社経理への転職で評価されるのか

(1)研究開発型企業での経理経験

製薬会社の経理部門への転職において最も評価されるのは、同業界での経理経験です。

しかし、異業界からの転職でも十分にチャンスがあります。特に評価される経験として、研究開発型企業での経理経験が挙げられます。 IT企業やバイオテクノロジー企業、化学メーカーなどでの経験は、研究開発費の会計処理や知的財産権の管理といった面で共通点が多いため、高く評価される傾向にあります

(2)監査法人での経験

監査法人での経験も非常に価値があります。 特に製薬会社の監査に携わった経験があれば、業界の特殊性を理解しているとともに、厳密な会計基準の適用経験がある ことを証明できます。また、税理士法人でのM&A関連業務や国際税務の経験も、グローバル展開する製薬会社では重要視されます。

(3)プロジェクトマネジメントの経験

プロジェクトマネジメントの経験も見逃せません。製薬会社では長期間にわたる研究開発プロジェクトが数多く並行して進行するため、 複数のプロジェクトの予算管理や進捗管理ができる能力は高く評価されます 。ERPシステムの導入経験や、決算早期化プロジェクトの経験なども、業務効率化を重視する現代の製薬会社では重要な経験として認識されています。

■どうすれば転職活動が成功できるのか

製薬会社の経理部門への転職を成功させるためには、戦略的なアプローチが必要です。

ステップ①業界研究

まず、業界研究を徹底的に行うことから始めましょう。各社の事業領域、パイプライン、財務状況を詳しく調査し、自分がどの企業で最も価値を発揮できるかを見極めることが重要です。

ステップ②:転職エージェントの選択

転職エージェントの選択も慎重に行う必要があります。 製薬業界に特化したエージェントや、経理・財務職に強いエージェントを複数活用すること で、より多くの機会を得ることができます。また、直接応募も効果的な手段です。興味のある企業の採用情報を定期的にチェックし、タイミングを逃さないようにしましょう。

職務経歴書の作成では、製薬業界での経理業務に関連する経験を具体的な数字とともに記載することが重要です。例えば、「研究開発費○億円の予算管理を担当」「月次決算を○日短縮」といった具体的な実績を示すことで、採用担当者に強い印象を与えることができます。面接対策では、業界特有の質問に備えて、薬事法規や研究開発プロセスについて基本的な知識を身につけておくことが重要です。

経理・会計に強い専門のエージェントであれば、履歴書・職務経歴書の添削はもちろん、面接対策、勤務条件の交渉なども任せることができ、さらに製薬業界の情報などにもくわしいため適切なサポートを受けることができるでしょう。

■製薬会社経理職への転職成功事例を紹介

一般企業経理からの転職成功例(Tさん・29歳・男性)

Tさんは大手商社で5年間経理業務に従事していましたが、より専門性の高い分野でキャリアを積みたいと考え、製薬業界への転職を決意しました。商社での経験は主に貿易取引の経理処理と月次決算業務でしたが、製薬業界特有の知識は全くありませんでした。

転職活動では、まず業界研究に3ヶ月を費やし、薬事法の基礎知識や研究開発プロセスについて独学で学習しました。また、製薬業界経験者との情報交換を積極的に行い、業界特有の課題や求められるスキルを把握しました。面接では「なぜ製薬業界なのか」という質問に対し、「社会貢献性の高さと、専門知識を活かした長期的なキャリア形成」という明確な志望動機を伝えました。

結果的に、中堅製薬会社の経理部門に年収50万円アップで転職成功。現在は研究開発費の会計処理を担当し、「商社時代とは比べ物にならない専門性の高さと、医療に貢献している実感が得られている」と語っています。

研究開発企業からの転職成功例(Sさん・33歳・女性)

SさんはIT企業で7年間経理業務に携わり、特に研究開発費の管理と知的財産権の会計処理を専門としていました。結婚を機に安定性のある業界への転職を検討し、これまでの経験を活かせる製薬会社を選択肢として考えるようになりました。

IT業界での研究開発費管理経験は製薬業界でも高く評価され、特に臨床試験の長期間にわたる費用管理や、特許権の評価・償却処理について即戦力として期待されました。転職活動では、薬事コンサルタント試験を受験し、薬事法規への理解を深めるとともに、製薬業界への本気度をアピールしました。

面接では具体的な業務経験をもとに、「IT業界で培った無形資産の評価ノウハウを、製薬会社の特許権管理に活用したい」と提案し、採用担当者に強い印象を与えました。大手製薬会社の知的財産会計チームリーダーとして年収100万円アップで転職を実現。「研究開発型企業の経験が直接活かせる理想的な転職だった」と満足されています。

■製薬会社の経理職では、どのようなキャリアパスが描けるのか

製薬会社の経理部門でのキャリアパスは多様で魅力的です。

(1)経理部門内でのスペシャリスト

まず、経理部門内でのスペシャリストとしての道があります。研究開発会計、税務、連結決算、予算管理など、それぞれの分野でエキスパートとして成長し、最終的には経理部長やCFO(最高財務責任者)を目指すことができます。

(2)他部門への異動

一方で、経理部門から他部門への異動も盛んに行われています。経営企画部門では、M&Aや事業計画の策定において経理の知識が重宝されます。事業開発部門では、ライセンス契約の経済性評価や提携先企業の財務分析において経理経験が活かされます。さらに、海外子会社の管理職として駐在する機会もあり、国際的なキャリアを積むことも可能です。

(3)コンサルティング業界への転職

コンサルティング業界への転職も有力な選択肢です。製薬業界での経理経験は、経営コンサルティングファームや財務コンサルティングファームで高く評価されます。また、独立して税理士として製薬会社専門の業務を行う道や、監査法人で製薬業界の監査専門家として活躍する道もあります。

■まとめ:製薬会社の将来性と経理職

製薬業界の経理職は、今後さらに重要性が増していく分野です。高齢化社会の進展により医薬品市場は拡大を続け、特に希少疾患治療薬や個別化医療の分野では大きな成長が期待されています。これに伴い、複雑な収益認識や研究開発投資の評価など、高度な専門知識を持つ経理人材の需要は増加の一途をたどっています。

デジタル技術の進歩により、経理業務の自動化は進んでいますが、判断を伴う高度な業務はますます人間の専門性が重要になってきています。AI技術による定型的な処理の自動化により、経理担当者はより戦略的で分析的な業務に集中できるようになり、企業経営により深く関わる機会が増えています。

製薬会社の経理部門への転職は、安定性と専門性、そして将来性を兼ね備えた魅力的なキャリア選択です。適切な準備と戦略的なアプローチにより、この分野での成功を実現することができるでしょう。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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