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「日商簿記2級は意味がない」と言われる理由5選

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簿記講師 鯖江 悠平

せっかく簿記2級に挑戦しようと思っても、巷では「簿記2級は取得する意味がない」なんて言われているのを聞いたことがありませんか?

ここでは長年、会計専門学校で簿記講師を務める鯖江悠平さんに、「簿記2級は意味がないと言われてしまう理由」と「簿記2級のメリット」についてお話いただきました。
これから資格取得と目指す人は、ぜひ参考にしてください。

目次

■ 「簿記2級は意味がない」と言われる理由は?

■ 簿記2級の試験概要

■ 日商簿記2級を持つ、実際のメリット

■ 「簿記2級は意味がない」と言われる理由は?

(1)2016年度から段階的に出題範囲が変更になった

①以前は実務と試験内容の乖離があった
以前の日商簿記2級では時代の流れとともに実務ではほとんど用いることがなくなった論点の出題があり、一部において出題内容と実務の乖離が生じていました。無駄な範囲を学習する必要があるなどの理由から、意味がないと感じる人もいたようです。

② 現在は試験内容も実務に即している
現在はビジネスシーンで使用することを想定したブラッシュアップがおこなわれ、2016年度から2018年度にかけて簿記2級の出題範囲は段階的に変更されていきました。

改定によって、外貨建取引やリース取引、その他有価証券の処理、税効果会計、連結会計などが追加され、反対に為替手形や社債、保証債務などは削除されました。もともと簿記1級の範囲だった内容が含まれるようになっています。そのため学習時間が増大し、さらに難易度も上がっています。

2016年以前の簿記2級資格を持つ方からは、「実務と乖離しているため意味がない」というイメージを持たれているのかもしれません。

(2)出題範囲変更前の合格率が今より高かったので、希少性が少なかった

参考までに出題範囲が変更になる前の2014年の合格者数をご覧ください。

136回(2014年2月)41.6%
137回(2014年6月)34.6%
138回(2014年11月)26.4%

平均すると34.2%の合格率です。

一方、直近の2024年の合格率ですが

166回(2024年2月)15.5%
167回(2024年6月)22.9%
168回(2024年11月)28.8%

平均、22.4%となっています。また、直近で一番低い合格率は165回の11.9%となっています。

以前は合格率が現在に比べて、やや高かったこともあり簿記2級保有者としての希少性を感じなかった方も多かったのではないでしょうか。しかし現在は合格率が20%台を推移していることを考えると、人材不足と言われている経理業界では希少性の高い人材となり得るのではないでしょうか。

(3)商業を学習する高校生にも人気の資格という印象だった

日商簿記検定は、どの世代からも汎用性の高い資格として根強い人気のある検定です。商業を学習する高校生にも人気の資格であり、出題範囲が変更されるまでは在学中に日商簿記2級を取得していた生徒も多かったようです。

そのため、「人気がある=簡単」と誤解されていたのではないでしょうか。

(4)ネット試験が導入され、いつでも受験が可能となりタイミングの希少性が薄れた

① 東京商工会議所ではネット試験のみになっている

現在、日商簿記2級、3級にはネット試験が導入され、いつでも受験することができます。また現状では、大半の地域で紙を使った統一試験も平行して実施されていますが、2023年4月より東京商工会議所では日商簿記検定試験2・3級の統一試験は廃止され、ネット試験のみとなっています。

いつでも受験が可能であるということは、統一試験のみの頃を経験している人からすれば、「1年間でチャンスが大幅に増えた=誰でも取得できる資格だ」と認識されている可能性もあります。

②合格率のみで見ると、ネット試験の方が受かりやすい
参考までに、2024年4月~6月日商簿記2級のネット試験の合格率は39.8%。

同時期の167回統一試験(2024年6月)の合格率が22.9%であることを考えると、ネット試験の方が合格しやすいと言えるでしょう。

【日商簿記のネット試験とは?そのメリットデメリット、統一試験との違い、対策について】
https://edu.jusnet.co.jp/edu_article/certification/bookkeeping_article/32848/

そのためそれを知っている一部の企業では、同じ簿記2級でも統一試験とネット試験では書類選考での評価が違うという場合もあるようです。

また日商簿記1級に関しては難易度が高く、ネット試験も導入されていないため、就職活動において、一定の高い評価を得られるようです。

(5)将来的にAIに代替されるのではないかと思われている

経理の業務について、「将来的には全てAIに代替されるのではないか?」という記事をよく見たりします。確かにある程度はAIの発達により代替されている部分はあると思います。しかし、最終的には人間が最後のチェックや判断をしなくてはなりません

一方で、入力などのAIが得意とする事務的な作業に限った話では、危機感を持った方がいいかもしれません。

しかしイレギュラーな処理の判断や解釈を伴う高度な業務は、AIに代替することは難しいと思います。単純な作業はAIに任せ、より高度な仕事に時間を割くことで、スキルアップに繋がるのではないでしょうか。

■ 簿記2級の試験概要

簿記2級の試験について、最新の情報は以下のHPを参考にしてください。

【商工会議所の検定試験】
https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2

■ 日商簿記2級を持つ、実際のメリット

(1)さらなる上位資格へのきっかけになる

日商簿記2級を取得する一番のメリットとして感じるのは、やはり日商簿記1級や税理士、会計士などのさらに上位資格を目指すきっかけになる点でしょうか。

日商簿記2級の取得には、全く知識がない状態から勉強を始めると400時間以上はかかると言われています。これを取得することは大きな自信につながるのです。

【日商簿記2級を取得するのにかかる勉強時間、難易度は?】
https://edu.jusnet.co.jp/edu_article/certification/bookkeeping_article/91201/

(2)転職・就職活動で有利になる

日商簿記2級を持っていることが、応募条件になっている企業もあります。そうでなかったとしても、取得資格として履歴書でアピールすることができます。

今は全国的に人手不足なため、経理人材についても売り手市場が続いていますが、より好待遇の企業に転職する際にも簿記2級は役に立ってくれるでしょう。

また始めは経理スタッフとしての採用でも、簿記2級の知識を活かして勉強を重ね、より高度な業務を担うことができるようになれば給与アップも可能です。簿記2級を取得することで、資格手当が加算される企業もあります。

日商簿記2級の知識は、企業活動を理解するための基礎
不自然な計上に気づけるか?
上記でも述べたとおり、経理の仕事は今後AIに代替されていく部分もあると思います。しかし簿記2級の知識は単なる試験に合格するためのものではなく、もっと本質的な企業活動を理解するための基礎なのです。

例えばですが、経費にガソリン代が計上されているにも関わらず、車両保険や車両の減価償却費などが計上されていないケースの場合、違和感を覚えますよね。

テナントとして部屋を借りた場合でも、経費に家賃が計上されているにも関わらず、水道光熱費は計上されていないケースも違和感を覚えるのではないでしょうか。このような場合は、取引を精査してみる必要があるケースではないでしょうか。

企業経営の大局観を意識して学習する
その不自然さに気づけるのは簿記検定に合格するためだけではなく、仕事にいかすために学んだ人にのみできることではないでしょうか。そういった企業経営の大局観を意識して簿記の勉強をして欲しいと思っています。

そのような勉強で身についた知識は将来的にも代替されることはなく、あなたの経理人生のきっと役に立ことでしょう。

このコラムを読んで、簿記2級の勉強を頑張ろうと思っていただければ幸いです。

執筆者プロフィール

鯖江 悠平(さばえ ゆうへい)
簿記講師

簿記専門学校卒業後、専門学校の簿記会計講師を担当。

これまで簿記会計の授業だけではなく、テキストや問題集等の教材開発、学生の就職相談や卒業生の転職相談など幅広く業務に携わっている。

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