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【グロース上場企業編】デジタルグリッド、エネルギーの新しい流通を支える経理の役割

経理部門のリーダーに求められるものは、企業の規模やステージによって大きく異なります。様々な企業の経理部門で、リーダーとして働く方を紹介するこのコラム。

今回はエネルギー課題の解決を目指すデジタルグリッド株式会社にて、経営企画部の財務経理チームでリーダーを努める小山 憲志郎様にお話をお伺いしました。

小山憲志郎氏_写真

デジタルグリッド株式会社 経営企画部 財務経理Team Lead 公認会計士 小山 憲志郎 氏

■現在の会社の事業内容は?

わたしが勤めるデジタルグリッド株式会社は、“エネルギー制約のない世界を次世代につなぐ”ことをビジョンに、電力の購入者と発電事業者を直接結ぶプラットフォーム「デジタルグリッドプラットフォーム(以下「DGP」)」を開発・運営しています。

デジタルグリッドが開発した「DGP」では、発電者と電力利用者が直接かつ自由に取引できるネットワークを構築しています。発電家と電力利用者をダイレクトにつなぐことで、中間コストを抑制し、原価や取引条件などを可視化したオープンな取引環境を実現しました。電力利用者は必要に応じて電力の調達方法を選択できるため、低コストでの電力調達が可能です。

有難いことに「DGP」は2020年のリリース以来、工場やオフィス、病院など約1300社の企業に導入いただいております。「DGP」による電力の直接取引により、大手電力会社を介した契約と比較して、10%以上のコスト削減が可能なケースもあるんです。2026年7月以降は個人の商店などでも利用できるよう、さらにサービスの対象者を拡大いたしました。

新しい仕組みで「エネルギーの民主化」をもたらし、エネルギーの未来に選択肢を提供するというのが、わが社の命題です。

■財務経理チームの会社の中での役割は?

わたしの在籍する財務経理チームは経営企画部の中にあります。財務経理の社員は4名、派遣社員2名で構成されており、財務を担当するのはわたしと、直属の上司であるCFOの2名です。

わたしの役割を簡潔に申し上げると、財務経理チームのとりまとめ、財務、会計、j-sox対応がメイン業務になります。財務はデットによる資金調達をメイン業務として、資金管理・運用や全社における予算策定業務も実施しています。会計は会社全体の数字のチェックに始まり、新規取引の会計への影響や会計処理の検討、開示業務等があります。当然監査法人対応も実施します。少し変わった業務としては、フロント経由で取引先から会計処理のご相談を受けることもあります。電気という商品は、環境価値の取引をはじめ従来の基準では想定されていない新しい取引形態が次々に出てくる分野です。そのためお客様の経理部門から「どう処理すべきか」とご相談いただくことがあり、契約内容を一緒に読み解きながら考え方を整理してお伝えしています。

j-sox対応は内部統制監査報告書提出までの一連のプロセスのプロジェクトリーダとして業務を実施しています。

経理4名というのは、従業員が100名近くいる規模の企業としては少ないと思われるかもしれません。しかし今後もできるだけ少人数でやっていきたいという思いもあり、AIを積極的に駆使して業務の効率化を進めていきたいと模索しているところです。

一例をあげると、現在は毎月の予実管理は予算と実際の使ったところをそれぞれ人間の手で積み上げた数値を突き合わせて分析しています。しかし、会社に集まる数値や情報すべてをAIに読み込ませて、プロンプトをいれるだけで求めるものが出てくるという状態になるのが理想とするところですね。当然、最終的には人間が確認しなければいけないのですが、AIで処理できる部分は任せていくという方針でいます。

デジタルグリッド株式会社_社内風景写真

■これまでの職務経歴は?

(1)公認会計士を目指した理由

わたしは中学生の時に東日本大震災で被災し、被災者支援の一環で高校は名古屋の商業高校に進学しました。そこで簿記に出会い、大学では商学部へ。大学2年生で日商簿記1級に合格し、さらに4年生で公認会計士試験(論文)にも合格しました。税理士ではなく会計士を選択した理由として、当時のわたしには「大きな会社の中身を見てみたい」という気持ちが漠然とあったんだと思います。公認会計士であれば上場企業の監査に携われますし、業種も規模も問わず、いろいろな会社の数字に触れられる。加えて税理士の資格を取得することも可能ですしね。商業高校で簿記に出会ったときに感じた面白さを、いちばん広い範囲で味わえるのが会計士だと考えました。

公認会計士としての自立には2年以上の実務経験が必要なため、卒業後は監査法人に就職。監査法人では所属部署で担当する業種は特に決まっていなかったため、小売り、不動産、金融など幅広い業種の監査対応を勉強させていただきました。さらにそこではIPO監査も担当することができましたので、IPOに関する知識も身に付けることができました。

また実は、大学2年生の冬に短答式試験に合格したあと、都内の会計事務所でインターンとしても勤務していたんです。論文式試験の勉強と並行しながら、卒業までの2年半ほど。そこで数字を作る側の面白さを知り、数字を見る監査よりも、いつかは事業会社で数字を作ることをやってみたいという思いが芽生えました。

(2)デジタルグリッド株式会社へ転職した経緯

監査法人に勤務して3年が経過した頃、そろそろ事業会社への転職を検討してもいいかな、と考えていたタイミングで知人を介してデジタルグリッド株式会社の紹介を受けました。当時は上場に向けて動いているタイミングで、IPOを知っているメンバーを探しているという話でした。そこで懇親会を開催してもらえたんです。たしか2軒目だったかな、社長と別の役員が何かの論点をめぐって言い合いを始めて。普通なら候補者の前ではやらないと思うのですが、お二人とも一切気にする様子がない。正直、面食らいましたね。ただ同時に、ここは立場に関係なく自分の意見をぶつけ合える会社なんだと。取り繕わない姿を見られたことが、入社を決める決め手になりました。

■入社してからの業務で苦労したこと、またそのやりがいは?

(1)苦労したこと

入社した時点では、もちろん経理業務をやること自体が初めてでした。たくさんの上場企業を監査してきましたが、実際に数字を作る立場になってみると、改めて上場企業ってすごいなと思いましたね。

監査では完成した情報を見ていたのですが、それを完成させるために情報を集めて正しく処理していくことの難しさを実感し、財務諸表などを上場基準まであげていくのには本当に苦労しました。また最初は監査法人的な視点を持っているのがわたしだけだったので、まずはそれを経理部門、ひいては社内全体に理解してもらわなくてはならない。例えば負債の網羅性を確認するために、どういった視点でどんな情報を集めてほしいか、ひとつひとつをチームメンバーに理解してもらうためにかなりの時間がかかりました。もちろん「別の部署の〇〇の資料が欲しい」となった場合は、他部署の方に説明して理解を得てから資料を集めます。経理というのは部署だけで完結するものではない、他部署との連携も重要なんだと学んでいきました。

(2)やりがい

弊社は2025年4月、東京証券取引所グロース市場に株式を上場しました。グロース企業ならではかもしれませんが、新しいことをやりだすスピードが非常に速いのが特徴です。当然、新しいことをやるとなると困難が降りかかってくることも多いのですが、わたしにとってはそれが面白さの1つでもあります。

電力という商品は目に見えないうえ、制度改正によって新しい取引の形が次々と生まれます。そうなると、会計基準にまだ定められていない取引を扱うことになる。電力と環境価値を切り離して取引するバーチャルPPAや、蓄電池に関する会計処理などがその代表例です。

こうした取引は、収益をどの時点で認識するのか、資産として計上すべきものは何か、といった論点に教科書どおりの答えがありません。近い性質の基準を探して、この取引の実態に当てはめてよいのかを一つずつ検討していくことになります。

苦労するのは、判断を伴う処理ほど、会社と監査法人のあいだに立つ場面が増えることです。事業部門は「この取引はこういう意図で組成している」という実態を持っている。一方で監査法人は基準に照らして慎重に見る。わたしの仕事は、その事業実態を会計の言葉に翻訳して、なぜこの処理が妥当なのかを筋道立てて説明しきることです。ときには社内に「その主張は通りません」と伝えなければならないこともあります。

ただ、議論を尽くした末に処理が固まったときの手応えは格別です。前例のない取引に、自分たちで最初の答えを出す。これは会計士冥利につきるやりがいだと感じています。

さらに財務に関しての業務は公認会計士にとって弱い分野ではあるのですが、入社してからはそこも鍛えられました。最初はCFOについて行き、見て覚えるという感じだったのですが、今では一人で対応できることも増えています。まだまだ半人前で様々指導を受けながらも、自分でできることが増えていくのは大きなやりがいにつながっています。

■経理パーソンとして今後の目標は?

会社が大きくなるにつれて、財務経理が会社成長スピードについていく財務経理体制を作ることだと思っています。

体制構築という意味では、会社の成長に合わせて単純に人数を増やしていくやり方は取りたくないと考えています。そして「わたしがいなくても回る」状態をつくることが望ましいです。減らす努力をしているとは言え、各担当者の属人性が残っている業務は正直存在しています。業務を標準化したうえでAIに任せられる部分は任せ、誰が担当しても同じ品質で処理できる仕組みにしていきたいです。AI、本当にすごいですからね。

そして最終的には私がいなくなることが目標です。いないのに回っているみたいな、
意外にそんな日は近いかもしれないです(笑)

小山憲志郎氏_写真
執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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