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【企業のステージ別】インタビュー 経理部門リーダーに求められる役割と業務内容中小企業編

経理部門のリーダーに求められるものは、企業の規模によって大きく異なります。

現在、あなたが経理部で働いているとしても、将来的なキャリアは今の会社で役職をあげていくだけではありません。経理のキャリアには様々な可能性があり、そのためには自分がなりたい姿をイメージして経験を積んでいくことが重要なのです。

今回はアニメーション制作会社の株式会社スタジオコメットにて取締役制作本部長を務める寺内勇美様にお話をお伺いしました。

寺内氏が大学を卒業しキャリアをスタートしたのは、大手企業の経理/IT(事務管理)部門。社長の右腕としてご活躍される現在の立場から、中小企業の経理部門リーダーに必要な経験、その業務についてお話いただきましたので、ぜひ参考になさってください。

株式会社スタジオコメット 取締役制作本部長 寺内勇美
キャリアの変遷
  1. ① 大手印刷会社  事務管理部門(経理/IT)
  2. ② 大手印刷会社  経営企画部門
  3. ③ 大手印刷会社  新規事業開発部門(アニメ事業)
  4. ④ 中堅出版社   原作著作権管理部門 責任者
  5. ⑤ アニメ制作会社 制作および管理部門統括

■ 現在の会社の事業内容は?

わたしが今、勤めているのはアニメーションの制作をする会社です。

売上の大半はテレビアニメ制作の受注で、年間に2作品(1作品=1話30分尺×12話)を制作、それ以外に単発の案件をいくつか制作しています。

またアニメ制作の受注だけではなく、アニメ制作の発注者である製作委員会に当社自らリスクを取って出資参画することもあります。制作会社が製作委員会に出資参画する対価として得られるものは概ね次の通りです。

  1. ① アニメ著作権の共同所有者となるため、アニメの2次利用収益から著作権の持ち分に応じた配当を得られる
  2. ② アニメ本編の制作受注以外に、アニメの2次利用に伴い新たに発生するアニメや作画等の制作物を優先的に受注する権利などを得られる
  3. ③ 製作委員会の下請け企業という地位を脱し、製作委員会の構成企業と対等なビジネスパートナーとして共同事業の運営に携わる地位を得られる

アニメ制作は作品ごとにプロジェクトチームを組んで行います。現在、社員は20数名、フリーランスの方が30名程度です。

■ 現在の会社で担当されている業務は?

わたしは取締役制作本部長として、社長の専権事項(資金繰り等)以外のすべてを統括する立場です。

具体的には、制作部門と管理部門(総務、法務、経理)を統括し、担当者兼責任者として企画・営業・作品編成を担っています。

社長はアニメ制作受注側のプロデューサーとして半世紀近いキャリアがあり、わたしはアニメ制作発注側のプロデューサーや原作者の代理人としてアニメ制作に20年近く携わってきたことに加えて事務管理経験があるため、丁度よい補完関係にあると思います。

管理部門責任者としては、税理士、社労士、弁護士、ITインフラ管理など、専門家に一部業務をアウトソーシングしつつ、総務、法務、経理を円滑に管理運営することが主な役割です。事務員が1名います。

当社くらいの規模感の企業では、どの事務管理部門の出身者であっても、ほぼすべての事務管理分野をひとりでカバーできるオールラウンダー的な役割を求められるように思います。以下にその一部を紹介させていただきます。

総務業務:

わたしが勤怠管理や給与の額面計算などを行い、会計事務所に給与の控除額計算や給与明細の作成をお願いしています。勤怠管理ツールは今年度から紙のタイムカードに替わりクラウドシステムを導入し、日々の勤怠管理や月次の締め処理等を行っています。

また働き方改革への対応など労働環境の適正化を図るため、社労士と協議しながら、会社の就業規則、賃金規定、育児・介護休業規定、36協定、労働条件通知書などを改めて作り直しました。

経理業務:

請求書のチェックはすべて行います(社長・事務員と三重チェック)。問題がないか確認してから、会計事務所に伝票類を送付して記帳・仕訳・法人税申告書の作成などをお願いしています。銀行借入など財務関連は社長が行っています。

一般的な企業の経理部門で経験を積まれた方でしたら、普通にこなせる業務かと思います。

当社くらいの規模感の企業ですと、納税に間違いがなければ大きな問題にはならないこともあり、現状、月次で財務諸表を作成する管理会計のニーズはそれほどありません。

金融機関から何らかの数字を求められた場合は、会計事務所から試算表等を都度取り寄せて対応しています。ただ今後は、経営課題の把握や業績向上のために管理会計を整備していく必要があると感じています。

法務業務:

アニメ制作会社では、制作受注時に締結する制作委託契約、現場のフリーランスの方と締結する業務委託契約、製作委員会への出資契約といった契約管理業務が発生しますので、その都度、契約書ドラフト作成や他社が作成した契約書の確認、締結済み契約書の保管などを行っています。

また訴訟などがあった場合は弁護士に相談し、必要書類の準備や裁判所への出廷なども行っています。

まとめ:

事務管理部門の責任者のキャリアとして、各分野の実務経験があることは間違いなく有利に働きます。実務経験を積む際は、(特に大企業のように担当業務が細分化されている場合などは)部門業務全体の構造や流れを俯瞰して理解することが重要になります。

経理分野で言えば、支払い、債権回収、資金、設備などについて広く浅く知識を持っていれば、当社くらいの規模感の企業で十分に経理業務を行うことができるものと思います。

■ これまでの職務経歴は?

わたしが最初に就職したのは大手印刷会社です。

最初は、企業の広告・販促物の印刷を生業とする事業部で、主に経理部が月次決算に使用する大量のデータをITツールで整理する事務管理部門に配属され、数字の精査・集計をする担当でした。大企業ならではの業務ですので、なかなか説明は難しい部門です。企業によっては経理部や情報システム部が担っている場合もあります。

営業部門、支払い部門、製造現場などから出てくる数字はばらばらで、そのままでは決算などに使うことができません。それらを整理し、必要に応じてデータ編集したあと経理部に引き渡します。社内のお金の流れをほとんどすべて見ることができる部署で、膨大な伝票データ(月間数万レコード)を短時間で処理する必要がある業務を担当したため、ここで学んだ事務管理のスキル(特に全体構造と流れを理解するスキル)が現在の仕事にも役に立っています。おかげで大量の伝票や膨大なデータにも怯まなくなりました。

8年間経験を積んだあと、次は有価証券やICカード等の高セキュリティ印刷を生業とする事業部に異動して営業の業績管理、販売計画、経営企画を2年経験したあと、雑誌や書籍等の出版印刷を生業とする事業部に異動して新規事業を担当し、事業部の顧客である出版社との協業によるアニメ事業立ち上げに携わりました。

アニメ事業を推進する部門でアニメ製作委員会の発注側プロデューサーとして経験を積んだあと、子会社である児童書出版社に転籍してアニメの原作出版物の著作権管理を行う部門の責任者となり、著名な未就学児向けアニメの原作者代理人として経験を積みました。

また児童書出版社では原作者の代理人業務と並行して、テレビ局と共同で未就学児向けテレビ番組の企画・運営責任者を担当したのですが、それにより原作をアニメ化してメディア展開を行うことで収益を上げるというアニメ事業全体の構造と流れについて一層深く理解することができ、大きな収穫となりました。

■ 今の会社に転職された経緯は?

アニメ事業は、制作会社、テレビ局、原作出版社、配信会社、レコード会社などが、一つの作品ごとにプロジェクトチームを結成し、その成功に向かって各自の役割を果たしながら推進する共同事業です。

わたしが最初にアニメビジネスに関わるようになった頃から、今も一緒に仕事をしているたくさんの人達がおり、その縁もあって今の会社に転職いたしました。

わたしはアニメ製作委員会側のプロデューサーとして、また原作者代理人としてアニメに関わってきましたが、もっとも根本的なアニメが生まれる現場を経験したい、制作の最前線に関わりたいという思いで転職を決意しました。

最初に就職した大手印刷会社や次の児童書出版社と比較するとかなり小規模な会社に入り、自分ひとりで多くのことを熟す必要がある環境に身を置いた結果、50歳を過ぎても仕事のスキルが磨かれ成長している感覚があります。また小規模な会社ゆえに社内会議が少なく責任の所在が明確な点も個人的に好ましく思っており、非常にやりがいを持って仕事をすることができています。

■ 現在の業務の苦労は?

苦労というか、やはり人に関するところは、一人一人をしっかり見て公明正大な評価や対応をすることで信頼関係を築けるように心掛けています。

今の会社は社員数が少なく一人欠けても業務に支障が出てしまいますので、社員の様子から目を離さず、気になることがあれば直ぐ声を掛けて確認するようにしています。

一方、クリエイターは個人事業主が多く実力主義の世界のため、社員とは異なるアプローチが必要になります。一国一城の主が成す創作活動に対するリスペクトを欠かさず、期待値に基づいて予め条件(納期・品質・報酬等)を提示して納得して貰い、その結果が期待値を上回ることを願いながら接するようにしています。

■ 今後の業務上の目標は?

現在は年間2作品にプラスαという作品の制作数ですが、これを3作品まで作れるようにして、もう少し安定した売り上げ規模まで伸ばしていきたいです。

そのために社内の戦力を社員・フリーランス問わず育てていきたいと思っています。

ざっとお話をしてきましたが、わたしの現在の仕事はキャリアのはじめで経理分野に関わる事務管理部門であったことで、それがすべて現在に繋がっています。社長の右腕を探している中小企業は、世の中に多数あるかと思います。そういった企業に転職することも、また経理パーソンとしての選択の一つでしょう。

わたしの経験がみなさまの参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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