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【元面接官が教える】経理転職の面接、こんなステレオタイプの回答はダメ!

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2025年7月4日ジャスネットキャリア編集部

経理職への転職を考えている方にとって、面接は最も重要な関門の一つです。経理職は企業の経営を支える重要なポジションであるため、面接官は専門知識だけでなく、人柄や適性も慎重に見極めようとします。

本記事では、以前に企業の経理部門で面接官をやっていた編集部員が、経理転職の面接で頻繁に聞かれる質問と、マズい回答例と採用に近づく回答のポイントをご紹介します。経理面接の経験を有する人間の情報も参考にしていただければと思います。本記事を読んで自信を持って面接に臨んでください。

目次

■経理の転職面接での基本的な流れ

(1)面接の前準備

面接では準備が必要です。まず、応募企業の業界や事業内容について理解することから始めましょう。例えば製造業と小売業では求められる経理業務の知識が異なるため、その企業特有の会計処理や経営課題をおおよそ想定しておくことが大切とよく言われますが、その部分は本質ではないと思います。

自分の経験やスキルを整理し、どのように応募企業に貢献できるかを明確にしておきましょう。過去の業務で達成した成果を数値で表現できるよう準備しておくのは当然ですが、どのように頭を使って与えられたタスクをこなしたかを自分の言葉で表現できると、面接官に強い印象を与えることができます。

例えば、「月次決算の早期化により、従来15日かかっていた作業を10日に短縮した」といった成果を得たとしても、なぜ10日に短縮することができたのか、自身の工夫やその過程で学んだことを示すことが、あなたの能力を示す有効な材料となります。

こうした説明は何も経理経験者の説明だけにとどまりません。
未経験者であっても、自身の頭を使って何を成し遂げることができたか、その経験が面接官に印象を残すことができるかがポイントとなります。

また、簿記検定や税理士試験などの資格取得状況や、使用経験のある会計ソフトについても整理しておきましょう。資格証明書のコピーや、実際に作成した帳票類のサンプルがあれば、面接時に持参することを良いかと思います。

(2)面接当日の流れ

経理職の面接はある程度の企業規模になると通常、人事担当者との一次面接と、経理部門の管理職との二次面接に分かれることが多いです。ベンチャー企業の場合は、いきなりCFOが面接に参加することもあります(未経験者であっても)。

もっとも、一次面接では人柄や基本的なコミュニケーション能力が重視され、二次面接では専門知識や実務経験について詳しく質問されます。未経験者の場合は、過去の自身の略歴や課題に対する対応について深く聞かれるかと思います。

面接当日は、清潔感のあるビジネススーツを着用し、時間に余裕を持って到着するよう心がけましょう。経理職は数字を扱う職種であるため、時間管理能力や持続的に粘り強く作業を遂行する能力も評価の対象となります。面接開始の10分前には受付を済ませ、落ち着いて面接に臨める状態を作りましょう。

面接中は、質問に対して簡潔で分かりやすい回答を心がけることが重要です。また、緊張していても笑顔を保ち、相手の目を見て話すことで、好印象を与えることができます。

■経理職に特有の面接対策

(1)業務知識の確認

面接では経理部門の業務内容についての理解が求められます。経験者であれば、事前に業務内容を整理し、基本的な経理の項目や管理部門の役割について確認しておくことが重要です。

面接においては、法務や人事に関する知識も役立つ場合があります。また会社法や税法など、経理業務に関連する法律や規則についても基本的な内容を見直しておくことが大切です。

(2)会計ソフトの理解

面接では、どの会計ソフトを使用した経験があるか、どの程度習熟しているかが問われることがあると思います。

そのことが合否を左右するとは考えにくいですが、弥生会計、勘定奉行、SAP、Oracle Financialsなど、使用経験のあるソフトについては、具体的な機能や操作方法について説明できるよう準備しておきましょう。
もし経験のないソフトについて質問された場合でも、「使用経験はないものの、これまで複数の会計ソフトを習得してきた経験」を説明することができれば十分及第点になると思います。

また、ExcelやAccessなどのオフィスソフトを使った業務効率化の経験があれば、それも大きなアピールポイントになります。マクロの作成やピボットテーブルの活用など、具体的なスキルについて説明できるよう準備しておきましょう。

■経理職の面接でよく聞かれる質問例と回答のポイント

(1)志望動機に関する質問例とマズい回答例

質問例:「なぜ当社の経理職を志望されたのですか?」

この質問では、あなたの転職に対する本気度が問われます。単に「経理の仕事が好きだから」という抽象的な回答ではなく、その企業の魅力や、自分のキャリアビジョンとの関連性を示すことが重要です。

回答例:「御社の安定した成長戦略と、グローバル展開への積極的な取り組みに魅力を感じております。前職では中小企業の経理を担当していましたが、より大きな規模での決算業務や、国際会計基準への対応など、新たなチャレンジをしたいと考えておりました。御社であれば、これまでの経験を活かしながら、さらに専門性を高められると確信しております」

これはいかにもAIが答えそうなステレオタイプの回答です。これでは面接官が聞きたいことに答えていません。

POINT
自身の現職での環境と転職に至ったきっかけをスムーズに説明し、それが説得力のある内容であるか否かで面接での本気度を伝えることができます。

質問例:「経理職を選んだ理由を教えてください」

回答例:「数字を通じて企業の健全性を支える仕事にやりがいを感じるからです。大学時代に簿記を学んだ際、企業活動のすべてが数字で表現される面白さに魅力を感じました。また、経理は企業の全部門と関わる職種であり、会社全体を俯瞰して見ることができる点も魅力的です。正確性が求められる仕事ですが、その分責任感とプロ意識を持って取り組めます」

POINT
これもステレオタイプの回答で、面接官の聞きたいことに答えているとは言えません。経理職において求められるのは、忍耐力をもって地道に何かを積み上げた経験です。自身の言葉で頭を使って、何らかの成果を獲得してきたという経験を説明できるかポイントとなります。

(2)業務経験に関する質問例とマズい回答例

質問例:「これまでの経理業務でもっとも印象に残っている仕事は何ですか?」

この質問では、あなたの業務に対する取り組み姿勢や、どのような成果を上げてきたかが評価されます。具体的なエピソードを交えて、あなたの能力や人柄が伝わるよう回答しましょう。

回答例:「前職では、年次決算の精度向上プロジェクトに取り組みました。従来は外部の税理士事務所に依存していた部分が多く、決算確定まで時間がかかっていました。そこで、月次決算の精度を高めることで年次決算をスムーズに進められるよう、チェック体制を見直しました。結果として、決算確定までの期間を従来の2ヶ月から1ヶ月に短縮でき、経営陣への報告も早期化できました。この経験を通じて、日々の積み重ねが大きな成果につながることを実感しました」

POINT
これもステレオタイプの回答でしょう。月次決算の精度を高めるために、企業のどの箇所がボトルネックであったか、なぜボトルネックを把握することができたか、ボトルネックを除去するためにどのような取り組みを行ってきたか、こうした中での自身の役割は何か、その過程で何を感じたかといったことを説明することがポイントとなります。

質問例:「経理業務で困難だった経験とその解決方法を教えてください」

回答例:「新しい会計基準の適用時に、既存システムでは対応が困難な状況に直面しました。システム改修には時間とコストがかかるため、まずは手作業とExcelを組み合わせた暫定的な対応方法を考案しました。同時に、IT部門と連携してシステム改修の準備を進め、3ヶ月後には完全に新基準に対応できる体制を構築しました。この経験から、変化に対する柔軟な対応力と、関係部門との連携の重要性を学びました」

POINT これもステレオタイプの回答となります。会計基準の適用はどの企業も一律に経験を経ています。既存システムのどの箇所が具体的に課題であったのか、会計基準と照らし合わせて説明することで自身の会計知識の深さを説明することができます。

また、他部署の連携などで内部統制の課題がどこにあり、どのように克服したかといった点まで踏み込んで説明することで自身の知識と実行力をアピールすることもできます。

(3)スキルや資格に関する質問例とマズい回答例

質問例:「お持ちの資格について教えてください」

資格について聞かれた際は、単に取得した資格名を列挙するのではなく、それらの資格がどのように実務に活かされているかを説明することが大切です。

回答例:「日商簿記検定2級と、税理士試験の簿記論に合格しております。簿記2級の知識は日々の仕訳処理や財務諸表の作成で活用しており、税理士試験の学習で身につけた知識は、より複雑な会計処理や税務申告の際に役立っています。現在は税理士試験の財務諸表論の学習を続けており、さらなる専門性の向上に努めております」

POINT
これもステレオタイプの回答例です。こうした資格取得が自身のキャリアにとってどのような位置づけにあるか、このキャリアが面接する会社にとってどのような貢献に繋がるかを想起させるかを踏まえて説明することがポイントになります。

(4)会計ソフトに関する質問例と回答例

質問例:「どのような会計ソフトを使用した経験がありますか?」

回答例:「前職では弥生会計を主に使用しており、日次・月次の仕訳入力から決算書の作成まで一通りの操作ができます。また、前々職では勘定奉行を使用していたため、複数のソフトに対応可能です。どちらのソフトでも、マスタ設定から帳票のカスタマイズまで対応できますし、新しいソフトでも基本的な考え方は共通しているため、比較的短期間で習得できると思います」

POINT
これもステレオタイプの回答でしょう。本質は会計ソフトの使用でその操作性や悩んだことなどを説明すること。そのように答えると「考えて会計ソフトを動かすことをアピールすることができる」ので、もう少し踏み込んだ回答ができるかと思います。

質問例:「会計ソフト以外で業務に活用しているツールはありますか?」

回答例:「Excelは日常的に使用しており、VLOOKUP関数やピボットテーブルを活用した集計業務や、マクロを使った定型業務の自動化も行っています。また、PowerPointでの資料作成や、Accessを使った簡易的なデータベース管理も経験があります。これらのツールを組み合わせることで、業務効率化を図っています」

POINT
これもステレオタイプの回答でしょう。どのような作業でExcelやPowerPointを使用しているかを説明しないと、片手落ちになるので注意が必要です。

(5)決算業務の経験有無に関する質問例とマズい回答例

質問例:「決算業務の経験について教えてください」

決算業務は経理職の中でも特に重要な業務で、面接でも聞かれることが多い質問になります。経験の有無によって当然回答はは異なりますが、経験が無くとも自身の経験に照らし合わせて経理部門に貢献できることをアピールすることがポイントです。

回答例:「前職では月次決算と年次決算の両方に携わっておりました。月次決算では、各部門からの実績データを集約し、損益計算書と貸借対照表を作成していました。年次決算では、棚卸資産の評価や減価償却の計算、引当金の設定など、より詳細な作業を担当しました。また、監査法人との対応も経験しており、監査資料の準備や質問対応も行っていました。決算業務を通じて、企業の財務状況を正確に把握し、経営陣に有用な情報を提供することの重要性を実感しています」

POINT
こちらもステレオタイプの回答です。経理部門は自部門だけの作業では期限内に業務を終えることができません。他者との関係の中でどう決算業務を期限内で完結させてきたか、自身の経験の中で具体的に説明することが大事になります。

また、未経験者であってもあきらめる必要がありません。この記事ですでに説明しましたが、面接者はどのように頭を使って与えられたタスクをこなしたかを自分の言葉で説明できるかを見ているので、この点を整理してください。

質問例:「決算業務で気をつけていることはありますか?」

回答例:「決算業務では正確性とスピードの両立が重要だと考えています。そのため、日頃から月次決算の精度を高めることを心がけ、年次決算時の修正項目を最小限に抑えるよう努めています。また、スケジュール管理を徹底し、各作業の期限を明確にして進捗を管理しています。さらに、決算数値の妥当性を検証するため、前年同期との比較や予算との差異分析も必ず行うようにしています」

POINT
これもステレオタイプの回答となります。日頃から月次決算の精度を高めるために何を心がけているのか、心がけることによってどのような成果があったのかを説明することが必要です。

(6)前職の退職理由に関する質問例とマズい回答例

質問例:「前職を退職された理由を教えてください」

退職理由については正直に答えることが大切ですが、ネガティブな印象を与えないよう配慮が必要です。前向きな理由や、新たなチャレンジへの意欲を示すようにするといいでしょう。

回答例:「前職では3年間経理業務に携わり、基本的な業務については一通り習得できました。しかし、さらなるスキルアップを図りたいと考えた時に、現在の会社では新たなチャレンジの機会が限られていることを感じました。御社では連結決算や国際会計基準への対応など、これまで経験のない業務にチャレンジできると伺っており、自分の成長につながると確信しております。」

POINT
これもステレオタイプの回答になります。自身の有しているスキルとキャリアアッププランが地に足をついているか、会社への貢献を面接官に想起させられるかといった説得力の有無がポイントとなります。

■経理面接での逆質問の重要性

(1)逆質問の重要性

面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれる逆質問の時間は、あなたの意欲や関心の高さを示す重要な機会です。「特にありません」と答えてしまうと、企業への関心が低いと判断される可能性があります。事前に2〜3個の質問を準備しておき、面接の流れに応じて適切な質問を選んで使いましょう。

ただし、逆質問は、コミュニケーション能力発揮の場でもあるので一方的に自分が話すことがないよう「会話」として成立させるように心がけることが必要です。

また逆質問では、その企業で働くことへの具体的なイメージを持っていることを示すとともに、面接だけでは分からない情報を収集する機会として活用してください。

(2)逆質問の具体例

「経理部門の組織体制について教えてください。現在何名体制で、どのような役割分担になっているのでしょうか?」
「入社後はどのような業務から担当させていただけるのでしょうか?また、将来的にはどのようなキャリアパスが考えられますか?」
「現在の経理部門が抱えている課題や、今後取り組みたい改善点があれば教えてください」
「会計システムの更新や業務プロセスの見直しなど、今後予定されている変更はありますか?」
「御社で活躍されている経理担当者に共通する特徴があれば教えてください」

これらの質問は、あなたが真剣に転職を考えており、入社後の具体的なイメージを持っていることを示すことができるでしょう。

■面接官が重視するポイント

(1)コミュニケーション能力

経理職は数字を扱う職種ですが、実際の業務では多くの人とのコミュニケーションが必要です。各部門から必要な情報を収集したり、経営陣に財務状況を報告したり、外部の税理士や監査法人と連携したりする場面が頻繁にあります。

面接官は、あなたが専門的な内容を分かりやすく説明できるか、相手の立場に立って対応できるかを重視しています。面接中も、質問に対して簡潔で分かりやすい回答を心がけ、相手の反応を見ながら適切なコミュニケーションを取ることが大切です。

(2)問題解決能力

経理業務では、日々様々な問題や疑問が発生します。勘定科目の判断に迷う場面や、システムエラーへの対応、法改正への対応など、決められた手順だけでは解決できない状況も多くあります。

面接官は、そうした問題に直面した時に、どのようなアプローチで解決に取り組むかを知りたがっています。過去の経験から、問題の原因を分析し、関係者と連携して解決策を見つけた事例があれば、積極的にアピールしましょう。

経理転職の面接では、専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力など、総合的な人材としての資質が評価されます。事前の準備を怠らず、具体的なエピソードを交えた回答を用意することで、面接官に強い印象を与えることができます。

自己PRでは、これまでの経験で得た成果を数値で示し、それが応募企業でどのように活かせるかを明確に伝えることが重要です。また、逆質問の時間を有効活用し、企業への関心の高さと入社意欲をアピールしましょう。

執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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