40代での転職は、これまでのキャリアの集大成とも言える重要な転機です。特に経理職への転職を考える場合、「未経験でも可能なのか」「年齢的に不利になるのではないか」といった不安を抱く方も多いでしょう。しかし、実際には40代の経理転職には多くの可能性が秘められています。ここでは、経理未経験の40代が転職を成功させるための具体的なポイントを詳しく解説します。
40代未経験でも経理に転職できる?成功の秘訣と具体策を徹底解説

2025年7月15日ジャスネットキャリア編集部
目次
■経理未経験者向けの転職市場の現状
(1)経理職の需要と40代転職市場の特徴
現在の経理の転職市場は、慢性的な人材不足に直面しています。特に中小企業では、経理業務を担える人材の確保が急務となっており、未経験者であっても採用する企業が増加傾向にあります。
40代の転職市場においては、これまでの豊富な社会人経験が大きな武器となります。長年培ってきたビジネスマナーや責任感、さまざまな業界での経験値です。経理職は正確性と継続性が重要視される職種であり、40代が持つ他業種とは言え業務経験と安定感は、企業にとって大きな魅力となります。また、若手社員と比較して定着率が高いという点も、採用企業側から評価される要因のひとつです。
(2)未経験を歓迎する企業が増加する背景
企業が経理未経験者の採用を積極的に行う背景には、いくつかの要因があります。まず、経理業務のデジタル化が進む中で、従来の経験よりも新しいシステムへの適応力や学習意欲が重視されるようになってきました。40代の転職者は、これまでの職歴で培った学習能力と新しい環境への適応力を持っており、企業にとって魅力的な人材と映ります。
さらに、経理職に求められるスキルが多様化していることも、未経験者にとって有利に働いています。単純な会計処理だけでなく、経営分析や予算管理、税務対応など、幅広い業務が求められる現在では、他業種での経験が活かせる場面も多く存在します。営業経験があれば売上管理に、人事経験があれば労務費管理に、それぞれの専門知識を活用できるのです。
■40代の経理転職における求人情報
(1)実務未経験でも応募可能な求人の探し方
経理未経験者が求人を探す際には、「未経験歓迎」「経験不問」といったキーワードで検索することが基本となります。しかし、単純にこれらの条件だけで絞り込むのではなく、企業規模や業界特性も考慮して選択することが重要です。
中小企業やベンチャー企業では、経理担当者が幅広い業務を担当することが多く、未経験者でもさまざまな経験を積むことができます。一方、大企業では研修制度が充実している場合が多く、体系的に経理スキルを身につけることが可能です。40代の転職者は、自身の学習スタイルやキャリアプランに合わせて、適切な企業規模を選択することが成功の鍵となります。
また、求人票の「歓迎要件」にも注目しましょう。「営業経験」「マネジメント経験」「ExcelなどのPC操作スキル」といった項目があれば、これまでの経験を活かせる可能性が高い求人と判断できます。
(2)求人サイトやエージェントの活用法
40代の経理転職では、複数の求人チャネルを効果的に活用することが重要です。一般的な転職サイトに加えて、ジャスネットのような経理・会計分野専門の転職エージェントで、かつ派遣事業もやっているところを併用することをお勧めします。派遣事業をやっていると、エージェントが人事だけではなく経理の現場担当者とパイプがあるので、経理部門の細かなニーズを知っています。
転職エージェントを利用する際は、自身の経験やスキルを詳細に伝え、経理職への転職意欲を明確に示すことが大切です。エージェントは求人票には表れない企業の内情や、面接でのポイントなど、貴重な情報を提供してくれます。
特に40代の転職では、企業との年齢的なマッチングや職場環境に合うかが重要になります。そのため、スキルフィットだけでなくカルチャーフィットまでわかるエージェントの利用は、最も大事な要素と言えるでしょう。
■経理職に必要な資格とスキル
(1)取得したい資格(日商簿記2級)
経理職への転職を目指す40代にとって、日商簿記検定は最も重要な資格のひとつです。
40代という年齢を考慮すると、転職活動の時点で日商簿記2級は最低限取得しておきたいところです。2級にとどまらず、日商簿記1級の勉強を継続的に行う気持ちが必要です。
資格取得の学習は、通信講座やオンライン学習、スクール通学などさまざまな方法があります。40代の学習者は時間の制約があることが多いため、自分のライフスタイルに合った学習方法を選択することが継続につながるでしょう。
(2)40代が経理職に求められるスキル
40代の経理転職者に求められるスキルは、基本的な簿記知識に加えて、PCスキル、コミュニケーション能力、そして業務改善への取り組み姿勢です。特にExcelの操作スキルは必須で、関数の活用やピボットテーブルの作成など、実務レベルでの操作ができることが望ましいです。
また、40代という年齢を活かすためには、マネジメント経験や他部署との調整能力も重要な要素となります。経理職は他の部署との連携が多い職種であり、これまでの社会人経験で培ったコミュニケーションスキルが大いに活用できます。問題解決能力や提案力も、40代の経理担当者に期待される重要なスキルです。
■経理業務の具体的な仕事内容
(1)経理の仕事内容の詳細
経理職の業務は大きく分けて、日常業務、月次業務、年次業務に分類されます。
日常業務:現金出納管理、伝票起票、請求書処理など、正確性とスピードが求められる業務
月次業務:売上計上、費用処理、月次決算書の作成など、会社の月間業績を把握する重要な業務
年次業務:決算書の作成、税務申告、予算策定など、会社の1年間の成果をまとめる最も重要な業務
40代の転職者にとって、これらの業務を理解し、段階的にスキルアップしていくことが、経理職としての成長につながります。
最近では、経理業務のデジタル化が進んでおり、会計ソフトやクラウドシステムの操作スキルも必要になってきています。しかし、根本的な会計の考え方や処理の流れは変わらないため、基礎知識を身につけることが最優先です。
(2)経理職の業界別特性
経理職といっても、業界によって特徴や求められるスキルが異なります。製造業では原価計算や在庫管理が重要で、小売業では日々の売上管理や店舗会計が中心となります。サービス業では人件費管理や請求業務が多く、IT業界では開発費の管理やプロジェクト会計が特徴的です。
40代の転職者は、これまでの業界経験を活かせる分野での経理職を狙うことで、より有利に転職活動を進めることができます。たとえば、営業経験者なら売上管理に強みをもち、製造業経験者なら原価への意識を持った経理業務ができるでしょう。業界特性を理解し、自身の経験との親和性を見極めることが成功への近道といえます。
■40代未経験者の成功事例
【ケース1】未経験から経理職に転職した成功事例
40代で営業職から経理職に転職
Nさんは20年間営業職として働いていましたが、数字への興味と安定した職種への転換を希望し、40歳で経理職への転職を決意しました。転職活動前に簿記2級を取得し、営業時代の数字管理経験をアピールポイントとして活用しました。
転職先は中規模の製造業で、営業部門との連携が多い経理ポジションでした。Nさんの営業経験は、売上計上や与信管理業務で大いに活かされ、入社1年後には経理チームのリーダー的存在となりました。現在は経理部門の副責任者として、後輩の指導や業務改善に取り組んでいます。
【ケース2】転職後にスキルを伸ばした成功事例
人事職から経理職に転職
Hさんは転職時に簿記3級を取得していましたが、入社後に簿記2級、さらに税理士科目合格を目指して学習を続けました。
人事時代の労務管理経験は、給与計算や社会保険業務で活かされ、特に人件費管理の分野で専門性を発揮しました。現在は経理業務に加えて、人事労務の兼任担当者として、より幅広い業務を担当しています。転職後の継続的な努力が大きな成果につながることを示す好例です。
【ケース3】40代の強みを活かした成功事例
マネジメントスキルをアピールして経理へ転職
Sさんは部門管理者として予算管理や数値分析の経験があり、40代で経理職に転職する際に、これらのマネジメントスキルをアピールして評価されました。
転職先では経理業務の標準化や効率化プロジェクトを任され、チーム全体の生産性向上に貢献。40代という年齢とこれまでの管理経験が組み合わさることで、単なる経理担当者ではなく、経営に近い視点での業務ができる人材として重宝されています。
■転職活動のポイントと注意点
(1)転職時のよくある問題とその対策
40代の経理転職でよくある問題のひとつは、年収の大幅なダウンを受け入れられずに転職を諦めてしまうことです。未経験での転職では、一時的な年収減少は避けられないことが多いでしょう。しかし、経理職は専門性が高く、経験を積むことで着実にキャリアアップが可能な職種です。長期的なキャリアプランを考慮して判断することも重要です。
また、面接で年齢を気にしすぎて消極的になってしまうのも問題のひとつです。40代の豊富な経験と安定感は企業にとって大きなメリットであり、自信を持ってアピールすることが大切です。未経験であることを弱みととらえるのではなく、新しいことに挑戦する意欲と学習能力をポジティブに伝えましょう。
(2)年齢の壁を克服するためのポイント
年齢的なハンディキャップを感じる40代転職者は、他の候補者との差別化を明確にすることが重要です。これまでの職歴で培ったスキルや経験を経理業務にどう活かせるかを具体的に説明し、即戦力としての価値を示すことが必要です。
また、学習意欲と柔軟性をアピールするために、資格取得への取り組みや、新しいシステムへの適応事例などを具体的に伝えることも効果的です。「年齢が高い=変化に対応できない」という先入観を払拭するために、積極的な姿勢を示すことが重要になります。
■経理職の平均年収と将来性
(1)経理職の労働環境と福利厚生
経理職は比較的安定した労働環境が期待できる職種です。月末や決算期には残業が増える傾向がありますが、年間を通じて、規則正しい勤務スケジュールを維持しやすい特徴があります。
経理部門は在宅勤務やフレックスタイム制度の導入も進んでおり、40代のライフスタイルに合わせた働き方が可能な企業も増加しています。経理業務のDX化により、場所や時間にとらわれない働き方の選択肢も広がっています。
(2)経理職の平均年収
経理職の平均年収は、経験年数や企業規模、地域によって大きく異なりますが、全国平均で約400万円から600万円程度となっています。未経験から始める場合、初年度は300万円台からのスタートになることも多いですが、経験を積むことで着実に昇給が期待できます。
40代で経理職に転職した場合、5年程度の経験を積むことで、450万円から550万円程度の年収レンジに到達することが可能です。また、簿記1級や税理士試験科目などの難易度の高い資格を取得することで、さらなる年収アップが期待できます。
(3)経理職のキャリアパスと市場動向
経理職のキャリアパスは多岐にわたります。一般的な経理担当者から始まり、主任・係長クラス、経理課長、さらには財務部長や経営企画部門への展開も可能です。また、税理士資格を取得して独立開業する道や、CFO(最高財務責任者)を目指すルートもあります。
市場動向としては、経理業務のデジタル化とAI化が進む一方で、より戦略的な財務分析や経営支援業務の重要性が高まっています。40代の転職者は、基本的な経理スキルに加えて、経営視点での分析能力や提案力を身につけることで、長期的なキャリア形成が可能になります。
■企業が求める経理職の人物像
(1)経理職における業務改善の取り組み
企業が経理職に求める重要な要素のひとつが、業務改善への積極的な取り組み姿勢です。経理業務はルーティンワークが多い一方で、効率化や精度向上の余地が常に存在します。40代の転職者は、これまでの職歴で培った業務改善経験を活かし、経理業務の最適化に貢献することが期待されています。
具体的には、帳票の標準化、チェック体制の構築、システム化による自動化推進などが挙げられます。また、他部署との連携改善や、月次決算の早期化なども重要な改善テーマです。40代の豊富な経験を活かして、現状に満足せず常に改善を求める姿勢を示すことが、企業から高く評価されるポイントです。
(2)マネジメント経験の重要性
40代の経理転職者にとって、マネジメント経験は大きな武器となります。経理部門では、チームワークが重要であり、後輩指導や部門間調整などのマネジメントスキルが活かせる場面が多く存在します。特に中小企業では、経理担当者が幅広い業務を担当するため、組織運営能力が重宝されます。
マネジメント経験がある40代転職者は、将来的に経理部門のリーダーやマネージャー候補として期待されることも多く、長期的なキャリア形成の観点からも有利に働きます。面接では、具体的な部下育成事例や、チーム目標達成のための取り組みなどを具体的にアピールすることが効果的です。
■まとめ
40代での経理未経験転職は決して不可能ではありません。むしろ、これまでの豊富な社会人経験と人生経験は、経理職において大きな強みとなります。成功のためには、適切な準備と戦略的なアプローチが重要です。
まず、日商簿記2級の取得を通じて基礎知識を身につけ、これまでの職歴で培ったスキルと経理業務の関連性を明確にすることから始めましょう。年齢をハンディキャップと捉えるのではなく、安定感と豊富な経験をもつ即戦力人材としての価値を積極的にアピールすることが大切です。
経理職は専門性が高く、経験を積むことで着実にキャリアアップが可能な職種です。40代からのスタートでも、継続的な努力と学習により、充実したセカンドキャリアを築くことができるでしょう。新しい挑戦への一歩を踏み出す勇気をも、計画的に転職活動を進めることで、必ず成功への道筋が見えてくるはずです。
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ジャスネットキャリア編集部
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