税理士試験に挑戦する方は、「簿記論・財務諸表論のどちらから受ければいいのだろう」と悩むと思います。
税理士試験は年1回。できれば結果を出したいですよね。ここでは長年、会計専門学校で簿記講師を務める鯖江悠平先生に、「簿記論・財務諸表論は、どちらから勉強するのがよいのか。また一番効率よく合格できる勉強方法」を教えていただきました。ぜひ参考にされてください。
簿記論・財務諸表論は、どっちから受ける?1年で両方受かるタイパ重視の勉強方法とは
簿記講師 鯖江 悠平
税理士試験に挑戦する方は、「簿記論・財務諸表論のどちらから受ければいいのだろう」と悩むと思います。
税理士試験は年1回。できれば結果を出したいですよね。ここでは長年、会計専門学校で簿記講師を務める鯖江悠平先生に、「簿記論・財務諸表論は、どちらから勉強するのがよいのか。また一番効率よく合格できる勉強方法」を教えていただきました。ぜひ参考にされてください。
まずは簿記論と財務諸表論の違いを説明いたしますので、以下の比較表をご覧ください。
簿記論 | 財務諸表論 | |
---|---|---|
合格までの勉強時間の目安 | 500時間 | 500時間 |
理論と計算の割合 | 理論0:計算100 | 理論50:計算50 |
試験時間 | 2時間 | 2時間 |
簿記とは、会社の帳簿を記録するための技術です。
簿記論は、企業活動において日々取引が発生しますが、その記録や集計、計算方法などの一定のルールを学ぶ科目です。試験問題は計算が100%出題され、なによりも「早く正しく計算できますか」ということを問われる問題となっています。
制限時間内で解ききることは難しく、難問でつまずいてしまい解答できそうな箇所に手を付けることができないなど、時間配分でミスしやすい科目となっています。
一方、財務諸表論は、財務諸表の作成方法やその考え方、ルールを学ぶ科目です。
財務諸表とは会社の利害関係者(株主や銀行など)に経営成績や財政状態を開示するために作成する資料のことです。試験問題は計算50%、理論50%の割合となっており、計算問題では「会社法の規定に従って財務諸表を正しく作成(表示科目や表示区分)できるかどうか」を問うことが目的です。
理論問題の解答方式は記述、穴埋め、選択式など様々ですが、長い時には解答欄が6行ほど用意されていることもあります。そのため、最低限の知識の暗記と理解は必須となります。
簿記論に比べると計算問題は簡単だとよく説明されていますが、これは試験の重点が計算の難易度ではなく財務諸表を作成することに置いているからだと考えられます。
また後ほど述べますが、わたしが在籍している専門学校でも、日商簿記1級の合格後には簿記論・財務諸表論の同時受験を行ってもらいます。たまに簿記論で不合格になる生徒もいますが、難問に引っかかり時間配分のミスが原因のようです。それでも翌年にはほぼ合格しています。
日商簿記2級を取得していると仮定しても、簿記論・財務諸表論ともに勉強時間は最低でも各500時間は必要だと思います。
専門学校の場合ですが、「講義は1回3時間+練習問題2時間+練習問題のやり直し2時間」で、60コマ程度あります。これだけでも7時間×60で420時間です。加えて答案練習と、そのやり直しなどもあることを考えると、500時間は最低ラインではないでしょうか。
もちろん各個人の理解度によっては、さらに勉強は必要になる場合もあります。
受験をする順として、巷では財務諸表論を受験してから、簿記論を勉強しようというのが一般的のようです。理論の部分は暗記ですし、計算問題の難易度も簿記論よりは易しめだからです。一方で、日商簿記1級の学習済みの方などは、簿記論から挑戦する傾向があるように思います。
しかし、わたしは最も効率のよい方法として、同時受験をおすすめいたします。
理由は簿記論と財務諸表論の計算問題の部分は、内容が重複しているからです。
同時受験の最大のメリットは、勉強時間の短縮です。
簿記論と財務諸表論、それぞれの勉強時間は500時間で合計1,000時間と説明しました。しかし同時に勉強した場合、計算の部分は一緒に学べるため、両方合わせて750時間程度まで短縮できるのではないでしょうか。
これは特に時間のない社会人の受験者にとっては、大きなメリットです。また同時学習の場合、簿記論で学習した会計処理に加えて、その会計処理の考え方や背景を財務諸表論で学ぶことになるため、知識の定着率も上がります。
750時間であれば、1日3時間勉強したとして、250日で合格を目指すことが可能です。
ではどのように勉強すればいいのでしょうか。
独学では絶対に合格できないとはいいませんが、より効率よく合格するためにはうまく専門学校を利用して勉強する方が良いと思います。
専門学校では、合格までの最適なカリキュラムが組まれているからです。もちろん決まった曜日に学校に通うことでモチベーションの維持にもつながりますし、わからない部分なども講師に質問しながら勉強を進めることができます。
そうはいっても、同時受験は大変なのではないかと思いますよね。
実例として、わたしが在籍している専門学校でのスケジュールをお伝えいたします。基本的に社会人の方はいませんので、学生として勉強に専念している場合とお考えください。
4月に入学した生徒は、11月に日商簿記1級に合格することを通過点として勉強します。ここで合格した生徒は翌年8月の税理士試験を目指して、簿記論・財務諸表論の勉強を開始。勉強に専念できる学生の場合、日商簿記1級に合格している生徒は、次の年の同時受験でほぼ両方に合格しています。
これはあくまで講師としての体感になります。勉強を諦めず続けることができれば、簿記論・財務諸表論には合格する生徒がほとんどです。
しかし、その先の税法になると話は変わります。やはり税理士試験の中でも税法はさらに難易度があがるため、適性のある方しか合格できない難関であることは間違いありません。
このように勉強に専念できる学生でも、結果を出すのは決して楽な道ではありません。しかし、簿記論・財務諸表論を取得することで会計事務所や税理士法人への就職や転職の場面で評価を得ることができます。
この記事を読んでいらっしゃる方が社会人の場合、可能であれば半年だけでも勉強に専念することができれば合格の確率はぐっと上がると思います。もし専念できない場合でも、専門学校などを上手く活用し、ぜひ1年での同時合格を目指してみてください。心から応援しています。
簿記専門学校卒業後、専門学校の簿記会計講師を担当。
これまで簿記会計の授業だけではなく、テキストや問題集等の教材開発、学生の就職相談や卒業生の転職相談など幅広く業務に携わっている。
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