どの業界・職種でも公認会計士が売り手市場であることは共通していますが、各フィールドにおいて、それぞれの背景と転職動向があります。そして、そこで求められる公認会計士の人物像も異なってきます。まずは、職種別の転職動向を見ていきましょう。
公認会計士の活躍するフィールドと職種別転職動向
4,000社を超える取引実績から分析!公認会計士を募集する求人動向
目次
職種別の転職動向
働く場所別の転職動向
職種別の転職動向
1.経理・財務の転職動向
事業会社における公認会計士の求人は、上場企業の経理部門が圧倒的多数を占めています。
M&Aなどを含めて海外にも事業展開を加速する企業が増えていることが、会計の専門家を必要とする企業が増えている一因になっています。監査法人と意見調整を行い、企業の方針などをしっかりと会計処理に落とした形で主張をするためにも、知識の裏付けがある公認会計士が求められる場面が増えています。
M&Aなど事業投資という観点から、財務部門でも公認会計士が求められるケースがありますが、業界知識や商慣習、現業とのシナジーなども考慮をすると、監査クライアントの中で、応募する企業と親和性の高い業界を担当していた方は、特に評価が高くなります。
また、ここ最近IPOを取り巻く環境が活況となっていますが、上場に耐えうる経理部門を構築する上で、公認会計士の求人は増えています。
IPOを前提とした求人については、会計の知識や経験以上に仕事に対する姿勢を問われる企業が多く、評論家的に会計処理の是非を論じる方ではなく、ベンチャーマインドを持って主体的に業務を推進できる方は、引く手あまたとなる状況です。
全体感としては、日系・外資を問わず英語力を求められる求人が多くあります。とは言え、ハードな交渉ができるような高いレベルというよりは、ローカルスタッフとある程度のコミュニケーションが取れるレベルを求められるケースが多いため、短期的にTOEICスコアを700~800点程度にすることで選択肢は広げられると思います。
2.会計監査の転職動向
公認会計士の合格者数増加といった事情や、J-SOX、IFRSなど制度面の変化によって、ここ数年の間でも監査法人の採用環境は大きく変化しましたが、2016年も依然として監査法人の採用意欲は高い状態を維持していました。
当然、他の監査法人で会計監査の実務経験を積んでいる方は、即戦力として評価は高いのですが、待機合格者が問題となった時期に一般事業会社に就職された方や、税務の道に進んだ方など、監査以外の分野の経験についてもしっかりと評価をされる法人が多く、会計監査の実務経験の有無は中途採用であっても採否に大きな影響はないのが現状です。
概ね各部門において人員不足を背景に採用意欲は堅調となっております。特にアドバイザリー部門や金融、公会計などの部門については、金融、IT、会計領域以外のファームなど、公認会計士資格を有しない異業種経験者を幅広く受け入れを行っている印象があります。
M&AやIPOの件数についてもリーマンショック前の水準に戻ってきており、監査法人が提供する財務デューデリジェンスやIPO支援などの部門も市場を反映して求人が増加傾向にあります。これは、監査法人内でこの業務に対する人員が不足していることが要因の一つとなっているのではないでしょうか。
会計監査以外にも公認会計士が活躍をするフィールドが増えていることで、一定期間監査法人で経験を積んだ方が、別の道を選択しやすくなっており、この転職市場の流れが、経験を積んだ中堅のシニアスタッフクラスの外部流出を後押しする結果になっています。
現場のインチャージを任せられるような中堅層は、常に引く手あまたといった状況が続いています。
3.M&A・企業再生の転職動向
リーマンショックで冷え込んだM&Aの市場も2012年以降、2016年まで順調に回復基調にあり、投資銀行を中心にM&Aのアドバイザリーファームや、財務デューデリジェンス・バリュエーションをサービスとして提供するような会計系アドバイザリーファームなど、採用意欲にも繋がっています。
こういった大型のM&Aを手掛けるファームではクロスボーダー案件も多く、英語力の有無が採否を分ける場合が多く見受けられます。
監査法人で純粋な会計監査だけを経験している方に広く門戸が開かれている訳ではなく、スポットでの財務デューデリジェンスにアサインされた経験など、何らかの形でM&Aに関与していることが求められる場合も少なくありません。可能であれば監査法人にいる間に、こういった案件へのアサインを希望してみるとよいでしょう。
一方で、経営者の高齢化により後継者問題を抱える中小企業も多く、こういった企業の経営者が先ず相談先とする税理士法人や会計事務系のファームでも、内内のM&Aを手掛けるケースが増えております。この様なケースにおいてはテクニカルなスキルだけでなく、経営者の事業にかける想いに応えていくようなウェットな人間関係の構築もコンサルタントには求められます。
英語力を求められるケースも限られることや、ビッグファームに比べてM&Aの実務経験を求められるケースも比較的少ないため、公認会計士の転職先としては視野に入れやすいかもしれません。
4.税務・会計コンサルタントの転職動向
税理士法人や会計事務所、税理士事務所でも公認会計士を求めるケースは増えています。上場企業やそのグループ企業、また、上場を目指す企業など会計監査を受ける企業は、税務だけでなく会計についてもコンサルティングを希望しており、会計のわかる税理士とともに税務の得意な公認会計士を求める声は非常に増えています。
海外展開を加速する企業が増える中、国際会計事務所のメンバーファームを中心に、移転価格税制など国際税務の案件も増えています。
税務の経験は無くても、一定の英語力を持った公認会計士がこういった国際税務の分野で求められることもあるので、国際税務分野に進む場合は英語力の研鑽が必要です。
平成27年の相続税改正を受けて資産税の求人も増えています。経営者の高齢化による事業承継対策や、個人の相続対策など、資産税に特化したファームも増えています。税務未経験の公認会計士を求めるファームもありますが、税理士試験の相続税法を学んでおくことで、他の方との差別化にもなるでしょう。他の税法と違い、個人のかなりプライベートなことに深く関わるようになりますので、クライアントから信頼を得られるようなコミュニケーションスキルも重視されます。他にもSPCやM&Aの税務分野では底堅く求人が出ています。監査法人でもファンドの監査やデューデリジェンスに関わっていた方が税務分野に進むことを考える場合には、経験を活かした転職となりますので、比較的転職がしやすいと言えるでしょう。
5.財務・会計コンサルタントの転職動向
近年財務・会計コンサルティングで最も求人が多いのは、IFRS関連の業務になります。当初はインパクト調査などがメインでしたが、年々IFRSの導入企業も増え、平成29年4月時点では111社がIFRSを適用しており、適用を決定している企業も31社あります。
新規上場をする際にIFRSを適用して上場する企業も現れており、IFRS適用のすそ野は確実に広がっています。この際にコンサルティングを行うのは圧倒的に公認会計士が多く、監査法人系のファームをはじめとして、中小規模のファームでもIFRSに特化をした形でコンサルティングを行うことも珍しくありません。当然監査を行う中でIFRSに携わった経験がある方は、かなり転職にも有利にはたらきますが、現時点では未経験でも受け入れるファームは多くあります。
IPOについても市場が活況になってきていることを受け、コンサルティングニーズも高まっています。上場に耐えうる内部体制を構築する上では、公認会計士の見識が活かしやすい分野であり、未経験でも転職可能性は高いと言えます。そのままクライアントからCFOとしてオファーを受けるようなケースも見受けられますので、ゆくゆくは事業会社に転身したいと思っている方にとっても一つのキャリアパスになるのではないでしょうか。
監査経験だけでなく、実際に事業会社で経理実務を経験した公認会計士にとっても選考で一定の評価を得られる分野です。
働く場所別の転職動向
1.監査法人の転職動向
監査法人では、試験合格者を対象とした定期採用だけでは採用需要を満たせておらず、多くの法人では監査経験の有無を問わず、過年度合格者の中途採用を行っています。
公認会計士が監査法人で活躍しているフィールドとしては、以下のようなものが挙げられます。それぞれの詳しい業務内容はリンク先の記事をご参照ください。
2.税理士法人・会計事務所の転職動向
税理士試験についても出願者数が減少傾向にあり、20~30代の税理士登録者が減少していることから、税理士法人や税務・会計事務所でも採用需要が高まっています。
一般的な記帳代行や会計・税務コンサルティング以外にも、以下のような業務を担う事務所も増えてきています。
3.会計コンサルティングファームの転職動向
上場企業を中心に、海外展開やM&Aなどを活用した経営を行う企業も珍しくない昨今、税務上の論点も複雑になっており、税務と会計の両方に強みを持つ公認会計士を必要とするファームは非常に増えています。
4.事業会社の転職動向
公認会計士の待機合格者が問題になったころから、監査法人の定員の関係上、事業会社を就職先に選ぶ公認会計士も増えました。実際に採用した企業の評価が高かったこともあり、上場企業を中心に公認会計士を雇用する動きもここ数年でかなり加速しています。
また、近年冷え込んでいたIPO市場も活況になっており、上場に耐えうる体制構築を期待されるポジションでの募集も増えています。
企業の規模によっても求められる業務内容に違いがあるということも注目したいポイントです。
職種別や働く場所別の動向をご紹介して参りましたが、今後キャリアを積んでいきたい場所は見つかりそうでしょうか。
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