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【コーポレート・ガバナンス 頻出用語解説 ⑦】内部監査とは?その導入と運用、手順まで

コーポレートガバナンスの強化のためには、社内に内部監査機能を構築しなければならないということがよく言われています。

唐突ですが、不祥事を起こした企業やネガティブな報道がされた企業の告知を見たことがあるでしょうか。

報道につきまして

この度、弊社に関する昨今の報道により、皆さまに多大なるご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。

一部報道機関による弊社事業に関する報道につきまして、弊社の見解をご報告申し上げます。弊社における事業はご利用者様に必要な範囲で提供しております。

弊社では、発覚した不適切事案がある場合は、内部監査により調査し、随時監督官庁にご報告した上で適切に対処していくとともに、再発防止に向けた改善を図ってまいります。

ここであげた告知の事例では、「内部監査」と言う言葉が使用されます。企業が社会の信用を損ねるような事件を起こしてしまった場合、社会の信頼を回復する手段として、「内部監査」という言葉が引用されることがしばしばあります。

目次

■ はじめに

■ 内部監査に対するアプローチの仕方

■ 内部監査制度の導入と運用

■ はじめに

(1)内部監査部門は会社が自主的に設置する組織

以前、コーポレートガバナンスについて説明した際に、内部監査は、会社内部に自主的に設置される組織として、下記のことを目的として監査業務を行うということを説明していました。

(1)経営目標の効率的な達成に役立つことを目的として、
(2)合法性と合理性の観点から、
(3)公正かつ独立の立場で、
(4)業務の遂行状況を検討・評価し、
(5)助言・勧告を行う

内部監査は、会社の状況に応じて調査対象や範囲が決定され、組織の発展にとって有効な改善・改革案を助言・勧告するという重要な機能を有することになります。また企業に何らかの問題が生じ、窮地に陥った場合には、内部監査がその原因を追究し、会社の信頼を回復させるために働くということも期待されています。

こうした内部監査について、特に大事で、まず認識しておいてほしいことは、内部監査は、他の監査組織と異なり、会社が自主的に設置する組織であるということです。

つまり、内部監査は、監査役監査や公認会計士監査のように、法的に設置や行うことが義務付けられるものではなく、本来は経営者自らが自主的に設置するという点で監査役監査や公認会計士監査とは異なります。

(2)任意監査とは?

自主的な監査という観点でいうと、近いものとしては公認会計士による任意監査というものがあるかと思います。この任意監査は会社の会計的な問題点を外部の専門家である公認会計士に会計上の課題発見を委ねるものです。

これに対して内部監査は、会計を含む会社の経営全般に対して、社内の者が自社の事業活動を自主的に監査するものといえます。

(3)業種ごとに違う内部監査の位置づけと重み

また業種別にみても、小売事業者と薬品メーカー、自動車部品を扱うメーカーの内部監査の目的は同じでしょうか。

以前、内部監査室の異業種交流の場に参加したことがありましたが、業種によって内部監査の位置づけや重みがそれぞれ異なっていて、同じ内部監査で括られるものでもこんなにも違うものだと驚いたことがあります。

このため、内部監査という組織や業務は、経営者の考え方、会社としての現在の立ち位置、事業戦略上の位置づけ、業種などにより左右される特殊な部署、業務ということができます。

このような内部監査は、上場のために外部から言われてただ設置しているような単なるお荷物部署として置かれる会社から、自らの後継の者を選定するプロセスとして内部監査を活用する会社まで、内部監査という組織・業務は、企業ごとに様々な役割を見ることができるのが特徴です。

■ 内部監査に対するアプローチの仕方

企業の状況によって異なる内部監査ではありますが、会社に内部監査を導入するにはどのようにすればよいのか、そのアプローチの一例を説明したいと思います。

(1)定義

内部監査の定義は、以下のようになります。

内部監査:経営者みずからが会社並びに関係会社を含む会社グループの経営活動の遂行状況を経営方針や諸規程に準拠し、効率的に運用されているかどうかを点検する社内の制度。

会社が成長し、ある程度の規模になると経営者みずからが日常業務における不正、不効率等のチェックを行うことが困難になるため、自らの目・耳の役割を社内の人間に求めることになります。

つまり事業が拡大すると業務の分掌が生じ、経営者は自らの役割・業務を部下に委ねることになるのですが、分掌した組織・業務が適切に行われているかということは、組織が大きくなればなるほど自らの目で行うのは不可能になります。

こうした会社の成長の過程で内部監査というものが必要になるのです。

(2)内部監査の活動内容

本来、内部監査はこうした事業拡大のプロセスで自主的に生じてくるものであると考えると、内部監査には企業のガバナンス・プロセス、リスク管理及び内部統制の有効性を評価・改善するために、以下の活動を行うことになります。

  • 内部監査の保証活動=アシュアランス業務
    組織体のガバナンス、リスク・マネジメントおよびコントロールの各プロセスについて独立的評価を提供する目的で、証拠を客観的に検証することになります。

    例として、財務、業務遂行、コンプライアンス、システム・セキュリティおよびデュー・ディリジェンスなどに関する個々のアシュアランス業務が挙げられます。

  • 内部監査の助言活動=コンサルティング業務
    助言およびそれに関連した依頼者向けの業務活動となります。

    その活動の内容と範囲は、依頼者との合意によるものであり、内部監査人が経営管理者としての職責を負うことなく、価値を付加し、組織体のガバナンス、リスク・マネジメントおよびコントロールの各プロセスを改善することを意図したものになります。

    例として、診断、助言、ファシリテーションおよび教育訓練などが挙げられ、社内コンサルティング的な業務を行うことになります。

一般的に組織が内部に内部監査を導入するに至る経緯は以下のようになるかと思います。

会社がある程度の規模になると経営者みずからが日常業務における不正、不効率等のチェックを行うことが困難になってくる

内部牽制組織を完全に整備することが望ましいが、人員不足や費用面で完全な整備は困難

経営者にかわる自己点検機能として内部監査制度を導入

(3)内部監査機能を企業に導入する際に認識すべきこと

内部監査の業務は、経営者に変わる自己点検機能を有することになるため、内部監査では、アシュアランス業務とコンサルティング業務を行うことになります。

このような業務の実施が期待される内部監査の業務ですが、社内においてそもそも遵守すべき法律、置くべきルールや統一化すべき作業があるのに存在しない場合は、コンサルティング業務が主となり、既に制定されているルールがあり、その内容に沿って組織が運営されているような場合は、アシュアランス業務が主となります(下記イメージ図参照)。

被監査対象組織の組織体制_イメージ

こうした内部監査業務の二面性は、同じ企業グループ内においてもそもそも業務が標準化されていない会社・部署ときちんとルールが整備されている会社・部署が混在しているように各企業や企業内の各組織が置かれた局面によって異なります。

また会社の規模が小さく、その会社にとっては現場がきちんとしており、管理部が現場を監視することが十分に機能されていれば会社に対して十分目が届くということもあるので、一概に内部監査といっても、会社の規模、業態、事業拡大の中で置かれているフェーズによって包括的な説明をするのが難しいというのが内部監査というものの特徴であるかと思います。

このため内部監査組織を企業内に導入する際には、現在の企業が置かれている規模・フェーズがどこにあり、何を目的に設置するかを十分に認識した上で導入するが必要となります。

■ 内部監査制度の導入と運用

これまでに説明したように一言に内部監査といっても会社の置かれた状況によって、役割や行うべき業務が異なりますが、これから会社に内部監査組織を置く場合は以下のことが必要になります。

(1)内部監査担当者の選定

まず会社に内部監査機能を置くとなった場合、人選が最も大事な要素になります。会社が置かれているステージなどを考慮して、内部監査を置く意義を考慮した上での人選になるかと思います。

この場合、必ずしも専門の部署を設置する必要はなく、社長室、経営企画室など、経営をサポートする目的の部署が設置されている場合、これらの部署の方が内部監査担当者となる事例が多く見られます。これらの部署が設置されていない場合、管理部門の方が現業部門を監査し、内部監査担当者が所属する部署に限り、他部署の方が監査する「たすき掛け」の内部監査体制としています。

(2)内部監査の手順

内部監査担当者が選任されると監査計画の立案及び監査計画に基づいた監査手続が実施され、監査報告が行われます。こうした一連の流れは下記のようになります。

1.年間監査計画の作成
(監査実施項目・監査実施時期・監査実施部門・監査担当者)
2.社長の承認
3.年間監査計画に基づく個別監査実施計画を作成
(項目ごとに、計画時期、方針、実施部署、実施時期、実施対象を決める)
4.被監査部門に日程及び準備資料を通知
(内部監査実施通知書)
5.内部監査の実施・監査調書作成
(具体的な監査手続き、監査実施結果を記載)
6.監査実施結果につき被監査部門と意見交換
7.監査報告書を作成し社長へ報告
8.被監査部門への監査結果指示書提出
9.被監査部門から改善報告書を社長及び内部監査担当者に提出
10.内部監査室が改善状況を確認

なお、内部監査では、単なるミスの発見や問題点の指摘にとどまらず、発見した結果を以後の業務改善に結び付けるフォローアップ体制の構築が重要になります。

(3)監査方針(目的)の概要

内部監査は特に法的規制によるものではないため、その項目やテーマについては任意となりますが、会社の業態や規模、事業所ごとの特殊性、税務調査、外部監査人(公認会計士)の指摘事項等を考慮して、効果的なテーマに絞り込んで実施することが必要です。

なお、上場を目指す企業になると、上場までには全拠点を回って確認するように等言われることもありますので、この辺りは会社の規模や上場時期を踏まえて主幹事証券会社と相談することも必要です。

(4)作成書類の様式

内部監査担当者は、内部監査規程(内部監査の手順)に従って効率的に監査を実施できるよう事前に、使用する書類の様式を決めておくことと作業が効率的になります。
以下のような作業において発生する書面においてそれぞれ書式を定めておくとよいと思います。それぞれの書類の内容は以下のようになります。

  • 内部監査計画書
    →年間の内部監査の計画と各個別に監査を行う際に作成する個別計画書があります。それぞれ行うべき段階・レベルが異なりますが、監査実施を行うにあたっての概要を整理したものとなります。

  • 内部監査実施通知書
    →監査対象となる部門に通知するための通知書になります。この書面を受けて監査対象部署は、被監査部署は監査を受ける準備を開始いたします。

  • 内部監査調書
    →内部監査の人員が聞きとった内容、入手した資料・情報を基に被監査部署、日付、実施した手続の内容、結果、結論を取り纏めたものを調書として保管します。

  • 内部監査報告書
    →内部監査で調書として取りまとめた結論として報告書を作成します。報告書の結論に対しての事実の概要、結論の根拠などを取り纏め、経営者に対して報告する書面になります。

  • 改善指示書
    →内部監査の結論・結果を経営者に報告した後、経営者と協議した対処策を被監査部門と協議して改善策を探ります。こうした改善策を取り纏めたものを被監査部署に提示し、対処すべき内容、期限、次回の確認時期を改善指示書として取り纏め、被監査部署に提出します。

  • 改善報告書
    →被監査部署が課題に対処して運用した結果を取り纏め、経営者に報告します。

(5)監査法人、監査役との連携

会社の監査には、この内部監査の他に監査法人による監査、監査役監査があります。こうした監査の対象となる範囲には重複が生じることもあるため、三者の連携が非常に重要です。このため内部監査を効率的に実施できるよう監査法人(監査)、監査役(監査)と定期的に情報交換を行う機会を設けて協調して作業を行う体制づくりを行うことになります。

この三者が連携することでそれぞれの監査の効率と有用性が向上し、会社にとって有益な監査が実現しますが、こうした体制のことを三様監査と言われることがあります。

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