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「外資系企業ファイナンス&アカウンティング部門」での業務内容、仕事の魅力は?

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2021年12月15日 梅澤 真由美

目次

■そもそもなぜ会計士に「外資系企業ファイナンス&アカウンティング部門」はオススメなのか

わたしが、会計士の方に外資系企業をおすすめする最大の理由は、 裁量が大きく、自分のペースで仕事ができること です。

外資系企業は日系企業に比べて年功序列の色合いが薄いため、 若いうちから責任の大きい仕事を任せてもらえる風土 があります。そのため、自分の実力を早く試したい方には最適な職場でしょう。また、自分の仕事が終われば周りを待たずに帰宅するなど、 個人主義の働き方ができるのも利点 です。

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

意外に思われるかもしれませんが、 監査法人での働き方が気にいっている方には、外資系企業は相性がいい と思います。監査法人での監査業務は、チームで仕事をしながらも、それぞれの「割当」(業務範囲のこと)が明確です。その中で、他のメンバーと上手に連携しながら、期限内に責任をもって自身の専門性を最大限発揮することが求められます。

外資系企業で求められる働き方もまさに同じなのです。一言でいえば、「 一人でもすぐに成果が出せるチームプレーヤー 」が外資系では求められます。

また、 カルチャーとしても、ロジックや合理性が重視 されます。そのため、会計という大きな武器を持っている皆さんにとっては評価される場面が多いはずです。せっかくとった会計士資格を役立てたい方にもいいでしょう。

さらに、日系企業で良く聞く人間関係のしがらみや組織の事情といったウェットさが苦手という方や、業務に集中したいという方も、働きやすいと思います。

■「外資系企業ファイナンス、アカウンティング部門」の業務内容

【アカウンティング部門】
アカウンティング部門というのは、いわゆる「経理部門」のことです。ただし、外資系の場合には、日本の経理部門に比べると守備範囲が少し狭いことが多いです。 「過去の数字」を主な業務対象として、専門性が高い業務を提供 します。

1.月次・四半期・年次決算のとりまとめ
月次、四半期、年次といったタイミングで決算業務を行います。 四半期や年次決算は本国へのレポーティング目的で実施する会社がほとんどですが、月次決算は会社の規模や業種によっては行わないケースもある ようです。

あらかじめ決められているポリシーにもとづいて会計処理を行いますが、何か新しい取り組みや論点がある場合には、本国の担当者と協議します。

2.シェアドサービスの監督やコミュニケーション
定型取引など簡単な仕訳はグループ内のシェアドサービスや外部の企業に委託しているケースがしばしばです。その場合には、社内のアカウンティング部門は、判断が必要な仕訳の伝票を切るのに加え、委託先を監督し、コミュニケーションする必要があります。

決算が滞りなく進んでいるかを確認したり、イレギュラーな事象が発生した場合には、対処法を判断したりします。 管理職のような管理業務を委託先に対し行いますが、委託先は日本国外であることがほとんどですので、英語のコミュニケーションが必須 です。

3.税金・監査対応などの専門業務
簡単な仕訳が外部に委託される一方、 自分たちで起票するのは年度や四半期では高度な仕訳が求められます 。引当金といった見積もり要素があるものや、年度末には税務や日本の会社法書類の作成などがその代表例です。

顧問税理士など社外の専門家と契約していることが多いので、そのやりとりや、念のための確認ができれば問題ありません。監査法人での経験がもっとも直接的に生きる場面ともいえます。

【ファイナンス部門】
ファイナンス部門というのは、大まかにいうと、日本企業の「経営企画部門」+「予算管理部門」の折衷型です。 「将来計画」+「将来の数値」を主な業務対象 とします。日本企業と異なり、将来について定量・定性の両面から一括して扱いますので、外資系企業に特徴的な部門といえます。

1.中期経営計画・予算関連
経営陣とともに、中期経営計画や予算を作成します。日本企業では形骸化していることが多いですが、 外資系では経営の羅針盤として重視 されており、経営者もかなり時間を割いて作成します。経営戦略に加えて、具体的な戦術やリソースに至るまで、定性・定量の両面から念入りに議論します。

策定後は、その進捗管理として予算と実績の比較分析を行い、必要に応じて対策の実行を促します。これらも含む 管理会計業務は、アカウンティングではなくファイナンスが担当 します。

2.本国への報告・コミュニケーション
日本法人である外資系企業では、本国の親会社に対して頻繁に各種数値をレポートにして提出します。決算に合わせて月次の頻度が主流ですが、小売業などの場合には毎日レポートを送るケースもあります。レポートに対しては、質問が来ることも多く、メール・電話・チャットなどを通じて対応します。

また、決算報告の場合には、オンライン会議で簡単な説明をしますが、業績が好ましくない場合には、今後の改善策を求められたりすることもよくあります。そのため、 管理職以上は英語で説明できることはもちろん、交渉力が望まれる でしょう。

つまり、ファイナンスは、本国の経営陣に対して日本法人を代表したスポークスマンの位置づけなのです。

3.各種プロジェクトマネジメントやプロジェクトへの参加
ファイナンスは、経営企画業務も担います。「ビジネスパートナー」という表現を良くされますが、 経営者の右腕・代行として会社にとって重要なプロジェクトに関わることもよくあります

プロジェクトマネジメントを担うこともあれば、経営者の代理で進捗を把握する程度の場合もあります。さらには、規模が大きいプロジェクトの場合には、予算や業績を担当する役割で参加することも多いです。

【わたしの場合】
日本マクドナルドではアカウンティングのスタッフを、ディズニーではファイナンス部門のマネージャーを務めました。
決算や中期経営計画・予算作成といった定期的なイベントに加え、前述のプロジェクトへの参加もあり、忙しい日々を過ごしていました。

しかし、 外資系の場合には、比較的休暇を大事にする文化がある ので、年度が始まると、上司と年間の休暇のスケジュールのすり合わせをしていました。そのため、海外旅行に年2回程度は行くこともでき、休暇中にMBAを取得することもできました。

このように、一般に言われるとおり外資系は成果主義が基本ですので、やることをやっていれば、休暇を取ることに遠慮をする必要がなく、私の考え方や働き方に合っていたと思います。

■「外資系企業ファイナンス、アカウンティング部門」での業務のやりがいやメリットは?

外資系では、 一定の成果を出すと、「サクセッションプラン(後継者育成計画)」をつくるようにと言われます 。これは、次のポジションへの打診であり、きちんとこの準備をおこなえば、さらに魅力的な業務につくことができます。

外資系は評価の透明性が高く、報われやすい印象があります。さらに、合理性を重視するので、手作業で時間がかかる作業があれば、外部委託するなど前向きに検討できる点も、徒労感を感じることが少なく、その分の時間を戦略業務に充てられて、やりがいにつながっていました。

事業の観点では、マクドナルドやディズニーは世界で事業を展開していることもあり、世界規模のビジネスに関われることは、とても興味深いものでした。実際に、ディズニーでは、日中米の3か国プロジェクトに関わりましたが、 それぞれの国の特性を理解することができ、自分のビジネス経験の幅が広がりました

企業内会計士になったのは、外部者ではない関わり方を望んだことがきっかけでした。世界的な規模は大きくても、日本企業よりも 会社としての規模が小さいことが多い外資系企業の日本法人では、会社や事業の全体像を把握しやすい と思います。そのため、監査法人のように 外から見た場合に比べると、情報量も関わり方も断片的にならず、とことん取り組めた のは、本当に良かったと思います。

■「外資系企業ファイナンス、アカウンティング部門」の採用ニーズ

(1)求められるスキル、人材

まず、 日本および米国の公認会計士資格は高く評価されます 。加えて、 大手監査法人での監査経験やMBAを求人票で歓迎要件に挙げている会社も非常に多くあります 。そのため、監査の経験がある会計士というのは、他の候補者に比べて有利です。日本企業は監査経験を評価しないことも多いため、外資系の特徴ともいえるでしょう。

英語力は、ポジションによって必要度合いには強弱ありますが、基本的に必須 と考えてください。とくに、会計士の場合にはある程度高いポジションで入ることも多く(シニアアナリスト・シニアアカウンタント以上)、一定程度の英語力が求められる可能性は高いです。
逆に、スタッフレベルのポジションの場合は、フットワークや吸収力といったソフトスキルで代替されることもあります。

具体的には、 外資系企業での実務経験(監査でも)があればベストです。それがなければ海外留学経験 、または TOEICスコア(700-800以上)+多少の英語での職務経験 があれば、入社しても仕事はできると思います。

ちなみに、 ディレクター以上の場合は、MBAはほぼ必須 といえるかもしれません。 海外では、MBAを持つ経営者が非常に多いため 、経営者が出席する会議では前提とされるためです。

(2)採用されるポイント

前述のとおり、会計士資格や監査経験は、まず1次選考(書類選考)を抜けるのにはかなり有利です。とくに、外資系では採用に客観性を持たせるために、これらの形式要件を書類審査の段階で設定している場合があります。

次に勝負を分けるのは、英語力です。
逆にいうと、この2つが揃っていたら、あとは直属の上司になる方の判断次第で採用は決まるケースが多いです。 外資系では、人事部門よりも、配属される各部門が最終的な採用決定権を持つことが大半 です。

具体的には、上司候補とそりがあうか、その時点で部内に不足している知識や経験を持っているかという、社外からは読み切れない、一時的な要素が影響する部分も多いのが実状です。外資系は即戦力を求めており、丁寧に育てることを予定していないため、このような即戦力採用が基本なのです。

(3)転職で気を付けるポイントや難易度

面接の際のレスポンスの速さと簡潔さは、外資系では重視されることが多い です。本国にレポートするのが役割ですから、わかりやすくタイムリーな報告ができる人材かを見極めようとしています。どちらかというと、会計士は熟考するタイプが多い印象がありますが、面接の場面では正確性よりもスピードが重視されると思ってください。

会計知識など ハードスキルは、積極的な説明は不要 だと思います。黙っていても資格があることから信用されます。だからこそ、面談の場では姿勢やマインドといったソフトスキルが会社と合うかに重点を置いて確認するはずですから、受け答えの仕方を練習しておきましょう。

例えば、 ネガティブな物言いや過度な謙遜は国際的にはあまり評価されません 。ネガティブな話もポジティブに転換して話すことが大事ですので、挫折からの学びの具体例などを用意しておくことをおすすめします。

■「外資系企業ファイナンス、アカウンティング部門」の年収はどのくらい?

全体的に、 日系企業に比べて給料水準は高いことが多い と思います。近年、海外に比べて、日本の給料水準が相対的に低くなっているためです。例えば、 管理職では1千万円を上回ることが多い と思います。なお、業種による違いも多少あります。同じ外資系でも、製薬や金融は高め、小売りは安めです。これは事業の利益率の違いを反映しています。

会計士の場合には、通常、資格を持たない同レベルの方よりも1段階上の職位で採用される可能性が高いはずですので、職位内のランクによっては、給料は年間1百万程度追加されるかもしれません。ただし、解雇が比較的多い海外の労働慣習ゆえに、雇い止めや減給のリスクも高いという事実もあります。

■「外資系企業ファイナンス、アカウンティング部門」の経験を活かしたその後のキャリアパスは?

一般的に、外資系企業に一度勤めると、ずっと外資系でキャリアを続ける人も多いものです。例えば、外資系ファイナンス・アカウンティングの世界では3-5年程度在職すると次に動くケースもとても多く、転職先でも前職の人とまた一緒になることもしばしばです。

外資系の個人主義で風通しの良い働き方が、理由のひとつでしょう。加えて、 どの会社でもファイナンスやアカウンティングの業務内容はかなり似ていることが多いので、転職しても成果が出しやすい ことも大きいと思います。また、日本企業に移ろうとすると、前述のとおり給料水準が下がることが多いので、そのまま外資系に残らざるを得ないという側面もあります。

最近は、国内一般企業でも、FP&Aなどの外資系のノウハウを得たい会社も増えてきました。このような会社への転職がこれから増えていくのではないかと予想します。

また、会計士の働き方としては、まだまだ数が少ないものの、独立もあります。実力主義で自律的な働き方が共通しているので、違和感が少なく、親和性は高いと私自身は感じています。

さらに、最近増えている 公認会計士としての社外役員業務も選択肢 として考えられます。スキルマトリックスや取締役会の多様性という動きから、会計士という資格だけでなく、実際の知識や経験が見られます。この点、 事業会社での勤務経験に加え、国際的なビジネスの理解と、2つの点で高く評価が得られるのは、外資系勤務を経た会計士の利点 だと考えます。

つまり、外資系企業で経験を積むことで、会計士としてのキャリアが広がる可能性は高いといえます。

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執筆者プロフィール

梅澤 真由美(うめざわ まゆみ)
管理会計ラボ株式会社 代表取締役 公認会計士

静岡県出身、京都大学農学部卒業、オーストラリアボンド大学ビジネススクール修了(MBA)。監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて監査業務を担当。事業会社に転じ、日本マクドナルド㈱にて経理と予算管理の統合、ウォルト・ディズニー・ジャパン㈱にて日本および中国のファイナンス(予算管理および経営企画)業務の立上げを統括。経営財務分野の幅広い業務に通算10年間従事。その後、管理会計ラボ㈱を設立し、実務家会計士の立場から主に管理会計分野のコンサルティング、セミナー講師、雑誌連載や書籍の執筆に活躍中。
「現場感ある生きた会計」をモットーに、制度会計を活かした管理会計の仕組みの構築、経営者や社内各部門に対する会計を活用したコミュニケーションなど、管理会計実務の普及に取り組んでいる。

【主著】
「今から始める・見直す 管理会計の仕組みと実務がわかる本」(中央経済社)
「元企業内会計士が教える 経理のためのエクセル基本作法と活用戦略がわかる本」(税務研究会出版局)
「経理の勉強法!」(中央経済社)

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