転職しようかな・・・と思ったら。監査法人を辞める前に知っておきたい「5つ」のこと(前編/キャリアの振り返り)

監査法人で色々な経験を積んできたけど、そろそろ次のステップに進んでもいいかな・・・
そんな風に考えている方も多いと思います。監査法人で経験したからこそ見えてきた自分の進みたい道が見え始めたのではないでしょうか?この記事では、そんな皆さんに向けて、監査法人からの転職前に知っていただきたいことを厳選してお伝えします!
1.監査法人を辞める前に、「自分のなりたい姿」を振り返ってみよう
(1)なぜ転職したいのか
なぜあなたは監査法人から転職をしたいと考えているのでしょうか。周りが転職をしているから?今の仕事内容や人間関係に不満があるから?今の待遇に不満があるから?
現在、公認会計士は転職市場で大人気です。あなたが転職活動をすればきっと多くの企業から採用オファーをいただけることでしょう。
でも転職はあなたの長い人生において、非常に大きな区切り目になります。わたしは以前、中堅監査法人で採用を担当しており、何百人分もの履歴書を見ました。その中で短期間で転職を繰り返す履歴書を多く見ましたし面接においても、何がしたいのかわからない方に多く会いました。
そもそもわたし自身が最初に勤めた監査法人を勢いに任せて数年で辞めてしまった苦い思い出があるので、皆さんには転職を慎重に考えていただきたいと思います。
(2)自分のなりたい姿とは
まずは転職の前準備として、自分が何をしたいのか、将来どのような姿になりたいのかをしっかりと考えてみましょう。
中には「それがわからないからとりあえず転職します」「天職を探すために転職します」という方もいるのですが、そのような考えでは次の職場でもすぐに同じ悩みにぶつかるのではないでしょうか。
自分のなりたい姿がわからない時は、「自分の得意なこと」、「好きなこと」、「苦手なこと」、「やりたくないこと」、を紙に書き出してみるとよいと思います。また信頼できる先輩や仲間に相談することもよいでしょう。
自分で自分のことは分析しづらいもの。紙に書きだしたり、人に聞いてみたりすることで自分では気づいていない自分のことを発見し、それがキャリア形成に活かせることもあるでしょう。
深く考えずに転職をしてしまう前に、自分自身を振り返り転職への準備ができているのか問いかけてみましょう。
2.自分の「これまで」を棚卸してみよう
(1)棚卸しのやり方
転職を決意したら、次は天職に出会えるよう自分の「これまで」を棚卸してみましょう。
転職にあたっては必ずといっていいほど、「では、あなたのこれまでのキャリアについてお話ください」という質問を投げかけられるでしょう。そこであなたは何と答えるのでしょうか。おどおど話すようですと、転職活動もうまくいかないことでしょう。
まずは「これまで」のあなたのキャリアとして、「現在の監査法人で学んだこと」、「得られた経験」を棚卸してみましょう。
その際にお勧めなのは、やはり紙に自分のこれまでの仕事内容や得た経験を書いてみることです(文末の「監査業務棚卸シート」参照)。
紙に書き出す、という行為は自分自身を客観的に見ることができますし、自分の経験や考えを整理することができます。書き出すことで、改めて「自分の強みや得意なこと」、「自分が成し遂げたいこと」も見えてくると思います。
「監査業務棚卸シート」は以下のリンクからダウンロードできます。
No. | キャリア | 項目 |
---|---|---|
1 | 社会人として身に付けたことの確認 | ビジネスマナー |
PCスキル | ||
コミュニケーションン力 | ||
プレゼン力 | ||
問題解決力 | ||
資格 | ||
語学力 | ||
2 | スタッフとしての監査経験、どのようなクライアントを担当したのか | どのような業種のクライアントを担当したか? |
若い会社、社歴の長い会社? | ||
上場、上場準備、会社法監査? | ||
株式会社以外の監査の経験は? | ||
外国語を使う監査チームだったのか? | ||
子会社や工場、支店往査、海外出張等は経験したか? | ||
監査チームの規模は? | ||
監査チーム内での評価は? | ||
3 | 監査業務として | 担当科目は? |
実査や立会、確認、経営者ディスカッション等は担当したか? | ||
監査計画の立案や監査法人内の審査対応などは担当したか? | ||
インチャージは経験したか、した場合は下記へ | ||
4 | インチャージとして | どのようなクライアントのインチャージを担当したのか? |
どれくらいの監査チームをまとめたのか? | ||
トラブルの回避例や解決した事例 | ||
クライアントや監査チームからの評価 | ||
5 | 監査法人内で経験したこと、貢献したこと | リクルート活動での貢献 |
執筆活動での貢献 | ||
研修講師での貢献 | ||
外部向けセミナーやイベントでの貢献 | ||
クライアントの問題解決 | ||
クライアントの獲得 | ||
監査以外の財務DDやIFRS導入コンサルなどは経験したか? | ||
6 | その他の活動 | 自身で主催、参加しているコミュニティ活動はあるか? |
「これまで監査しかしていなかった」、「棚卸するほど経験なんてない」、という方もいますが監査業務の過程でどのような業界の、どのような規模の会社に行き、どのような業務担当し、どのように貢献してきたのか、それは立派なあなたの経験であり業績です。また監査業務以外でもリクルート活動や研修講師、執筆業務などもあなたの立派な実績であり、今後のキャリアを考える上で重要な要素になります。
安易に転職するまえに、監査法人で何を学んだのかをきちんと棚卸をして振り返ってみるとよいでしょう。そうすること、まだまだ今の監査法人でできること、学べること、経験できることが見えてくるかもしれません。
(2)職場環境としての「監査法人」
なお監査法人は本当に恵まれた職場であり簡単に辞めてしまうには勿体ない環境です。
新人の頃から多くの企業を訪問し、監査業務を通じてその会社のビジネスモデルや強み、弱みなど経営を学ぶことができます。企業がどんな管理体制や組織系統図を描けますし。内部統制をどのように構築しているのかを直にみることができ。また、若手の頃からクライアントの役員クラスと仕事をする機会も多いことでしょう。
そして、周りにはベテランの公認会計士の先輩が多数おり、聞けば何でも優しく教えてくれ、イントラネットやデータベースも充実しており、仕事で困ったことがあっても簡単に解決できるインフラが整っています。さらに若手スタッフであれば多少の失敗をしても周りがフォローをしてくれます。勉強や経験を積みながらお給料をもらえる職場といっても過言ではないでしょう。
これが転職してみると、状況が一変します。ベンチャー企業であれば多くのことを一人でしなければなりませんし、頼れる先輩や相談できる仲間がいない場合も多いでしょう。特に小さな会社では経営陣と合う合わないも、大きな問題となり、時にストレスにもなります。
華やかなイメージの戦略系コンサルティング会社や外資系金融の会社へ転職すれば、監査法人での仕事のキャリアはほとんど通用しません。忙しい現場で新人として扱われ、監査法人以上に厳しいハードな職場環境になることも多いようです。
転職後「監査法人はよかった」「やはり自分の強みは監査業務でこそ活かせる」と思う方も意外と多いのです。ですから、安易に監査法人を辞めるのではなく、しっかり自分の成りたい姿やこれまでを棚卸して、まだまだ監査法人で学べることがないか考えてみましょう。
次の後編では、今後の具体的なキャリアの描き方についてご紹介いたします。


新着記事一覧
-
コロナ禍における会計士のテレワーク事情
公認会計士 江黒 崇史
-
会計士のための「WEB会議できちんと見える」コーディネート
公認会計士 Rody
-
【会計士が一番最初に読む IPO入門講座】第3回 IPO準備の基本(3):昨今IPOした企業の分析と傾向
公認会計士 重見 亘彦
-
【会計士が一番最初に読む IPO入門講座】第2回 IPO準備の基本(2):IPOできる会社・できない会社の違い
公認会計士 重見 亘彦
-
【会計士が一番最初に読む IPO入門講座】第1回 IPO準備の基本(1):IPOをする目的の整理
公認会計士 重見 亘彦
-
監査法人でパートナーになるには ~会計士が出世するためのポイント3選
公認会計士 江黒 崇史
-
【連載】独立会計士のための はじめての税務実務 第3回 申告調整
公認会計士 小林 正和
-
横領や粉飾決算は、なぜ起こる? 会計士が果たす役割は?
公認会計士 福留 聡
-
【連載】独立会計士のための はじめての税務実務 第2回 役員報酬
公認会計士 小林 正和
-
上場企業以外でIFRSの適用をしているケースと中小企業版IFRS
公認会計士 福留 聡
-
女性会計士が産休をとって復帰するまで(税理士事務所・独立編)
公認会計士 西濱 絢
-
女性会計士が産休をとって復帰するまで(監査法人編)
公認会計士 西濱 絢
-
【連載】独立会計士のための はじめての税務実務 第1回 源泉徴収税額(源泉税)
公認会計士 小林 正和
-
IPOの株価決定「入札方式」「ブックビルディング方式」とは?
公認会計士 福留 聡
-
会計士・税理士が注目する国際資格 公認内部監査人(CIA)とは?
公認会計士 福留 聡
-
監査法人のリファード業務とは?
公認会計士 福留 聡
-
【会計士業界動向2019】会計士の総人数は増えてる?減ってる?
-
社会人が会計士試験に独学で合格するために知っておくべきこと
公認会計士 石動 龍
-
監査法人5年目までの公認会計士がぜったい読んでおきたい7冊の本
公認会計士 江黒 崇史
-
会計士業界年収動向 2018【監査法人編】
-
公認会計士に中国語は必要?中国語を活かせる仕事は?
公認会計士 山本 真美子
-
AIが会計士と税理士の仕事を奪う?!~IT先進国エストニアに行ってみて考えた会計業界の未来~
税理士 小島 孝子
-
監査法人とは?もう迷わない監査法人の選び方(後編)大手と中小を徹底比較!
公認会計士 江黒 崇史
-
監査法人とは?もう迷わない監査法人の選び方(前編)大手と中小を徹底比較!
公認会計士 江黒 崇史
-
女性会計士は、ママになっても働ける?子育てとの両立とキャリアアップについて
公認会計士 市川 恭子
-
会計士のワークライフバランス・年収について知っておくべき人生戦略
公認会計士 松本 佑哉
-
転職しようかな…と思ったら。監査法人を辞める前に知っておきたい「5つ」のこと(後編/これからのキャリアを描く)
公認会計士 江黒 崇史
-
転職しようかな…と思ったら。監査法人を辞める前に知っておきたい「5つ」のこと(前編/これからのキャリアを描く)
公認会計士 江黒 崇史
-
公認会計士の独立開業って儲かるの?収入源と年収のホントのトコ
公認会計士 伊藤 英佑
-
公認会計士と税理士の違いとは?業務・年収を徹底比較
公認会計士 福留 聡
-
実はグローバル?監査法人での英語の活用法
公認会計士 岩波 竜太郎
-
公認会計士が独立・開業前に知っておくべきポイント解説
公認会計士 冨田 建
-
一般企業で公認会計士に任される仕事って何?
公認会計士 都外川 雅門
-
組織内会計士の働き方とは?監査法人を選ばない道
公認会計士 横山 敬子
-
監査法人の離職率は高い?監査法人や辞めたあとに広がる進路・転職先
公認会計士 福留 聡
-
監査業務は激務?4大監査法人と中小監査法人のワークスタイル分析
公認会計士 安田 憲生
-
監査法人就職の売手市場はいつまで続くか
会計士GTR
-
監査とは?監査法人・会計士の役割と業務内容について
公認会計士 江黒 崇史
-
公認会計士試験を諦めた後の具体的な進路について
-
公認会計士試験に受からない。撤退するタイミングの判断
-
公認会計士が取るべきダブルライセンスは?弁護士・不動産鑑定士など同時に持つメリット
公認会計士 福留 聡
-
CPEとは?継続的専門研修制度について
公認会計士 中島 英明
-
公認会計士の修了考査|合格後の会計士登録までに必要なこと3選
公認会計士 R.H
-
遅すぎる? 社会人で公認会計士を目指しても大丈夫?
公認会計士 高橋 善也
-
公認会計士試験に受かりやすい大学とは?
公認会計士 白土 英成
-
公認会計士になるには?資格学校(専門学校)の選び方
-
【令和2年最新】公認会計士試験について知っておくべきこと6選~受験前から合格後の流れ
-
公認会計士に向いている性格、向いていない性格
公認会計士 国見 健介
-
公認会計士の仕事はつまらない?やりがいはあるの?
公認会計士 国見 健介
-
公認会計士とは?仕事内容・役割について
公認会計士 国見 健介
-
公認会計士が独立して事務所経営に失敗しないための開業準備ノウハウ
公認会計士 福留 聡
特集記事
公認会計士の資格に関するカテゴリーごとにまとめたページです。
会計人の人生観・仕事観を紹介「Accountant's Magazine」最新号
「Accountant's Magazine」は、著名な会計プロフェッションにスポットをあて、その人生観・仕事観を紹介。会計・経理分野に従事する人と仕事の将来像を提示する、読者と共に考えるヒューマンドキュメント誌です。今なら新規登録していただくと、「Accountant's Magazine」(WEB版)の全記事を無料で閲覧することができます。
公認会計士に会える
現場で働く会計士の声
-
中小の監査法人だからこそ、できることがある。データ監査と国際業務を強みに、お客さまと向き合う
HLB Meisei有限責任監査法人 関 和輝
-
監査、ファンド会計、FASなどの業務を経験して入所。グローバルな環境でこそ発揮できるスキル、知見がある
Mazars有限責任監査法人 田中 雅勝
-
会計を活かしたプロセス設計で組織の架け橋に。突破力を強みに、「ベストプラクティス」を提示していく。
株式会社ベイカレント・コンサルティング 川村 周平
-
経営者マインドを尊重した「全員経営」の環境で、経営計画のチームリーダーにステップアップ。
株式会社ファーストリテイリング 谷 政治
公認会計士、会計士補・試験合格者向け求人
新着求人
- 営業事務・一般事務(スタッフ)【大手上場子会社のビジネスローン事業部/業務グループ募集!】 インターネット金融サービスを初めて手掛けたリーディングカンパニー 金融機関(信用金庫や地銀など)での融資経験活かしたい方は是非お問い合わせください。年収550万円〜820万円
- 税務・会計コンサルタント(スペシャリスト)独立志向の方歓迎/税務に縛られない広い視野でクライアントに関わっていきませんか?年収500万円〜900万円
- 経営企画(主任)有名グローバル企業で企画系業務に携われるチャンス! ハイレベルな経験を積みたい方におすすめ★年収650万円〜800万円
- 経営企画(主任)上場ITベンチャー企業での経営企画の募集です!年収600万円〜800万円
資格・職種別求人一覧
会計士補・試験合格の求人
公認会計士の転職成功事例
希望の職種へ転職!倍近くの年収アップに成功!
S.Tさん 30代 男性
ワークライフバランスを求め、ダイバーシティを推進する企業へ
M.Sさん 30代 女性
グローバルなキャリアを積める会社を紹介
R・Sさん 20代 男性
US-GAAP、IFRS…公認会計士の経験で企業の発展に貢献したい
Y.Tさん 30代 男性
公認会計士 転職Q&A
四大監査法人に勤務している38歳になる公認会計士です。監査業務の経験しかありませんが、大手企業の経理部…
33歳の公認会計士です。監査の仕事はある程度やりつくしたという実感があり、一般事業会社(大手メーカー)の経理…
30歳の男性、公認会計士です。大手監査法人に勤務していましたが、今回、事業会社への転職が決まりました。…
28歳の女性です。就職せずに勉強に専念して、公認会計士の資格を取るのに、大学卒業後5年かかりました。…