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監査とは?監査法人・会計士の役割と業務内容について

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公認会計士 江黒 崇史

医師・弁護士と並ぶ国家資格の一つとして人気のある公認会計士。その合格率は8~9%と言われ難関資格としても有名ですが、近年は公認会計士試験志願者が増加傾向にあり、公認会計士に興味を持っている方も多いと思います。

公認会計士の役割については他の記事で触れましたが、公認会計士が実際にはどのような仕事をするのかご存知のない方も多いかと思います。

公認会計士試験合格者のほとんどが最初に就職する監査法人です。今回は監査法人での「監査」という仕事について、ご紹介いたします。

目次

■監査とは

■公認会計士の監査業務の流れ

■「監査業務」を通して身につくスキル、一社会人としてのメリットについて

■「監査業務」の仕事としての厳しさについて

■まとめ

■監査とは

1 公認会計士が行う監査の概要

(1)監査って何?

皆さんは「監査」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。

監査とは簡単にいうと、ある事象に対して、それが法律や基準等に照らして問題が無いか確認することをいいます。

品質監査、内部監査、業務監査、環境監査等様々な監査がありますが、その中でも公認会計士が行う監査を「会計監査」といいます(本章では監査=会計監査でお話をさせていただきます)。

会計のプロが行う監査なので「会計監査」ですしメディア等によっては「公認会計士監査」「監査法人監査」とも呼ばれることがあります。

この会計監査は公認会計士の独占業務と言われ、非常に社会的に意義の高い仕事です。

(2)会計監査の目的は?

では会計のプロである公認会計士が行う会計監査の目的は何か。

それは決算書が会計基準に基づき適正に作成されているか否かについて監査意見を表明することです。

2 なぜ監査は必要なの?(監査の重要性について)

(1)決算書には誤りがある場合がある

会社の決算書について、なぜ監査が必要なのでしょうか。

決算書には会社の売上高や利益、資産や負債、資本金等が載っています。会社の成績表でもあり、会社の状況が分かる大事なものです。

この大事な決算書ですが、会社が作成した時点では間違っていることがあるかもしれません。間違えて作成する意図はないとしても会計基準の適用誤りなどがあるかもしれません。

あってはいけないことですが、時には悪意をもって自分達の売上をよく見せようとして、意図的に不適切な会計処理をすることがあるかもしれません。

(2)公認会計士が決算書を監査する

監査を受けていない決算書では内容が誤っているリスクもありますし、信頼性があるとはいい難い面があります。

そのような決算書で取引を開始したり、その会社の株式に投資したりした場合、取引先や株主にとって不測の損害が発生することもあるでしょう。

そこで、独立した外部の公認会計士・監査法人が決算書を監査して、適正な会計基準に基づき作成されているか意見表明をする必要があるのです。

公認会計士監査による適正意見が付いている決算書であればこそ、その決算書の内容は公認会計士のお墨付きがあるということで決算書を信頼して取引を開始したり、株式投資をしたりできるのです。

3 監査法人の概要

(1)監査法人は何をするところか?

監査法人とは公認会計士法に基づき、会計監査を目的として設立される法人です。その設立にあたっては公認会計士が5人以上必要となります。

監査そのものは公認会計士一人でもできるのですが、大規模な株式会社の決算書を監査するには監査する公認会計士の人数も多人数となります。

そのような大規模監査に対して組織的に質の高い監査を行うために公認会計士が集まった監査法人という組織が必要となるのです。

その主たる業務は決算書に対する会計監査となり、コンサルティング業務も実施できます。なお、監査先に対しては独立性の観点から監査業務しか提供できません。

(2)監査法人におけるBig4とは?

監査法人は大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人というカテゴリーで見られることが多いです。

このカテゴリーは正式な区分という訳ではなく通称的な分け方なのですが、大手監査法人は、下記の4つの監査法人を差します。

  • 有限責任あずさ監査法人
  • EY新日本有限責任監査法人
  • 有限責任監査法人トーマツ
  • PwCあらた有限責任監査法人(*)

* 2023年12月1日付でPwCあらた(存続監査法人)とPwC京都は合併し、同日付でPwC Japan有限責任監査法人に名称変更予定。

大手が4つのため「四大監査法人」「Big4監査法人」等いわれますね。

この四大監査法人で日本の上場企業の監査業務に対してでは6割程度のシェアを、日経225採用企業では96%ものシェアを有するといわれています。

■公認会計士の監査業務の流れ

1 監査契約前の予備調査(ショートレビュー)とは

上場会社並びに上場準備会社では監査法人との監査契約が必須となります。

監査法人側としてはいきなり監査契約を締結するのではなく、まず予備調査(ショートレビューとも呼ばれます)を実施します。

(1)予備調査では何をする?

これは監査契約の前に監査法人としてクライアントのビジネスモデルや株主構成、組織体制、決算書、経営者の資質等を監査より簡素な手続きで確認し、監査契約を締結することが問題ないか確認する手続きです。

上場会社であれば、前任監査法人へのヒアリングや監査調書レビュー、決算書も公表されているので比較的簡易な手続きで済みます。

一方、上場準備会社ではこれまで公認会計士の監査を受けていないことから、予備調査手続きも会社の規模に応じて時間を要し、質問項目も膨大になることがあります。

(2)予備調査の結果、受嘱しないことも

また予備調査の結果次第では「申し訳ありません、予備調査業務の結果を踏まえますと当監査法人では監査の受嘱をお見送りさせていただきます」ということもあります。

2 監査契約後の流れ

予備調査を無事終え監査契約に至りますと、いよいよ監査業務の始まりです。

監査チーム側としては監査計画を立案します。

これは監査チームの構成や重要な検討項目、往査範囲、往査時期等を計画するものです。そして計画立案後の実際の業務としては以下のようなイメージとなります。

【3月決算企業を例に】

図1

各四半期のレビュー業務や年度決算の監査業務においては、下記のことを行います。

  • 決算書を監査するために各種契約書を確認
  • 請求書や領収書、通帳のチェック
  • 売上や利益の分析
  • 経営者や監査役とディスカッション

四半期レビューや年度末の監査期間は会社の規模に応じて、数日から数週間と様々です。

また四半期決算や年度末決算の監査業務以外でも、期中に支店や子会社を訪問したり、内部統制と呼ばれる会社の業務フローを確認したりします。

決算書の監査といっても。実は年間で相当な期間クライアントを訪問して会社を監査するのです。

■「監査業務」を通して身につくスキル、一社会人としてのメリットについて

1 公認会計士になることで得られるもの

監査業務を行う前提として公認会計士試験に合格する必要があります。

試験科目には会計学や会社法が必須であるため、会社のビジネスを理解する上での基礎力や決算書読解スキルを身につけることができます。

2 監査業務を通じて得られるもの

そして、実際の監査業務では様々な業種の会社を訪問することで、多様なビジネスモデルを学んだり、時には話題の会社の収益力や成長性を目の当たりにしたり、監査を通じて経済社会や業界の流れを学ぶことができます

さらに監査は若手でも、上場企業の経営陣と接する機会が多い仕事です。

若手であっても会社からは専門家として頼りにされる立場で仕事をすることで、プロ専門家としての高い倫理観と責任感を持って仕事に臨むこととなり、一社会人として成長と充実を感じられることでしょう。

■「監査業務」の仕事としての厳しさについて

1 監査に誤りがあったら?

監査業務は企業の決算書の信頼性を保証する仕事です。

仮に監査法人が適正な監査意見を表明した決算書で不適切な会計処理がなされていたり、粉飾決算が生じていたりした場合、その決算書を信頼して取引をした企業や株式投資をした株主に多大な迷惑をかけることになります

場合によっては、監査法人が株主代表訴訟の対象ともなる非常に社会的責任が重い業務です。

2 クライアントとの関係性は?

また、監査業務の過程ではクライアントに対して、厳しい指導をする場面もあります。

「その売上高はまだ実現していないため認められません」や「この在庫は収益性が低下しており評価減が必要ではないでしょうか」「この工場の固定資産は減損の検討が必要では」などなどです。

そのため、時にはクライアントから嫌な表情をされることもあります。

3 監査はハードワーク?

近年は残念ながら不正会計事例が多く、より深度ある監査のため監査業務の工程が増え、業務自体がハードワークとなっています(監査法人側では働き方改革に努めており一時ほどの激務ではありません)。

監査業務では様々な会社を訪問する機会があり、多くの経営者と仕事をする機会や監査チーム内での自身の成長、会計の専門家としてのスキルアップのチャンスがあります。監査業務は面白く、やりがいを感じる仕事であることは大前提です。

ただ、若手にとっては膨大な作業量に忙殺され「監査は想像していたよりもつまらない」とこぼす方も多いと聞きます。

■まとめ

監査業務は非常に意義のある仕事です。仮に監査が無ければ決算書の信頼性が確保されないことから企業の経済活動も証券市場も停滞してしまうでしょう。

近年、上場企業の業績は好調で、上場を目指すベンチャー企業も増えています。

企業活動の活性化に伴い監査業務の重要性はますます高まり、公認会計士・監査法人への期待も高いものとなっています。

専門家としての知識・スキルが身につき、若いうちから多様な経験が積むことができ、プロフェッショナルとして活躍できる公認会計士の世界へ関心を持っていただければ大変うれしく思います。

執筆者プロフィール

江黒 崇史(えぐろ たかふみ)
公認会計士 江黒公認会計事務所代表/株式会社E-FAS 代表取締役

1999年3月早稲田大学商学部卒業。
2001年公認会計士二次試験合格。
2001年10月から2004年まで監査法人トーマツにおいて製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にITベンチャー企業の取締役CFOとして、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より株式会社アーケイディア・グループに入社。会計コンサル業務を中心にグループである税理士法人アーケイディア、清和監査法人の業務も担当。
2014年7月に江黒公認会計士事務所を設立し会計コンサルティング、IPOコンサルティング、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
2015年2月に株式会社E-FASを設立、代表取締役に就任しIPOコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事している。
またテラ株式会社、株式会社タウ、他複数社の社外役員を務める。

関連サイト

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