初めての株式鑑定評価~公認会計士として、意識しなければならない点とは?【第1回】
■株式の鑑定評価の本質を見直そう
公認会計士としてご自分の事務所を構えると、監査法人で監査をしていた頃とは異なる業務が色々と増えると思います。
その中の一つに、株式の鑑定評価があるのではないでしょうか。
ここでは、株式の鑑定評価というものについて、基本的な思考からお客様対応に際してのポイント等について、何度かに分けて説明していきたいと思います。
■そもそも、鑑定評価ってなに?
何らかの理由でクライアントから「○○先生、株式の鑑定評価をお願いできますか?」と声をかけてくださることがあるでしょう。
どんな仕事でも「初めてその業務にあたる」最初の一歩があります。
「実は、株式の鑑定評価なんてやってことがない」けれど、「そんなことはお客さんに言うわけにはいかない」という局面に至った時、思い出していただきたいことがあります。
それは、「鑑定評価の本質」です。
つまり、株式でも不動産でも日用品でも、「売り手と買い手が合意すれば、どのような金額で売買しても自由」ということです。
極端な話、借方に現金50万円と土地の時価1億円が計上されていて、負債の額が0円かつ偶発債務もなさそうな非上場企業である会社の全株式を100万円で「売る」ことも法令上は禁止されていません。
ただ、それが世間一般から見て妥当な水準と言えるかは別問題。
仮にその株式を他の投資家等に提示した場合、例えば1億円+50万円で1億50万円と値付けしてもらえる場合が考えられます。なぜなら、世間一般から見た目線であれば、適切な純資産の時価相当額で判断した方が100万円で評価するより合理的だからです。
このように、鑑定評価とは「その財産の世間一般から見て妥当と判断される価格」を決定する行為との点を、ぜひご記憶いただければと思います。
■鑑定評価で求める価格は一定なのか?
公認会計士が初めて株式の鑑定評価を手掛ける時、まず思い出すのは受験生時代に専門学校で学んだ知識でしょう。
ただし、筆者の経験の限りですが、専門学校で教えられたことがない一つの事実があります。
それは「正解が一つだけだった試験の問題とは異なり、鑑定評価額は評価担当者によって結論が異なる」点です。
例えば、不動産でも投資有価証券でもよいですが、いろいろな資産の評価額の中には、その資産それ自体の時価評価額に裁量の余地がある場合も。資産そのもので見解が分かれるので、当然、純資産の評価額も変わるため、株式の鑑定評価にも影響します。
あるいは、株式の鑑定評価の手法にはいくつかのアプローチがあります。当然、アブローチの試算結果として得られる試算価格は異なります。その試算価格のうち、どれを重視するかで結果は異なりますから、株式の鑑定評価の結論も異なるわけです。
ですので、公認会計士が株式の鑑定評価をするときは、「鑑定評価の担当者で結論が異なる」点も意識して業務に対峙することが必要と考えられます。
次回以降は、具体的な手法について説明したいと思います。
- 執筆者プロフィール
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冨田 建(とみた けん)
不動産鑑定士・公認会計士・税理士慶應義塾中等部・高校・大学卒業。大学在学中に当時の不動産鑑定士2次試験合格、卒業後に当時の公認会計士2次試験合格。大手監査法人・ 不動産鑑定業者を経て、独立。
全国43都道府県で不動産鑑定業務を経験する傍ら、相続税関連や固定資産税還付請求等の不動産関連の税務業務、雑誌やネット記事の寄稿や講演等を行う。特技は12 年学んだエレクトーンで、平成29年の公認会計士東京会音楽祭では優勝を収めた。
令和3年8月には自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓。
令和3年10月よりyahoo!様の個人オーサーとしても、不動産にまつわる税金の記事の執筆も手掛けている。
令和3年度国土交通省地価公示鑑定評価員、同年の東京国税局の相続税路線価の鑑定評価員・土地価格精通者、公認会計士世田谷会幹事、その他公職にあり - 著書
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弁護士・公認会計士・税理士のための 不動産の法令・評価の実務Q&A(税務経理協会、2014)
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冨田会計・不動産鑑定株式会社
(※外部サイトに遷移します)
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