■ 非常勤公認会計士の仕事環境と市場動向
(1)非常勤公認会計士の役割とは?
非常勤公認会計士は、フルタイムの正社員とは異なり、スポット的な業務やプロジェクト単位での契約で働くケースが多いのが特徴です。
主な業務内容としては、以下のようなものがあります。
- 監査法人での監査業務(繁忙期のみの契約を含む)
- 企業の内部監査や会計アドバイザリー業務
- IPO準備企業の支援
- 税務・会計事務所での業務
- M&Aや財務デューデリジェンスのサポート
特に、監査業務の非常勤の仕事は、独立した公認会計士にとっては身近な職務でしょう。自身の仕事量の調整弁としての役割を持っているとみることができます。非常勤の仕事は、フルタイムでの拘束を避けつつ、ライフスタイルに合わせた働き方ができるのが魅力ですが、監査業務の非常勤は常に仕事を確保し続けるための工夫の一つとして重要な手段であり続けてきました。
(2) 非常勤求人の今後の見通し
「Career Navi」の閉鎖により、求人情報の分散化が進み、求職活動がより自発的なものになることが予想されます。
監査法人や会計事務所の人材ニーズは引き続き高いため、適切なアプローチを取れば安定して仕事を確保できると思います。
■ キャリアナビ閉鎖後の非常勤求人の探し方
(1) 求人サイトを活用する
以下のような代替サイトを活用し、求人情報を収集しましょう。
(2) 監査法人・会計事務所の公式サイトを直接チェック
監査法人や会計事務所の採用ページには、一般の求人サイトに掲載されていない非常勤募集情報があることがあります。特に中小監査法人においては、WEBページに「採用募集」や「お問い合わせ欄」がありましたら積極的に連絡を取ってみることがオススメです。
確実に採用担当のパートナーと連絡がつきますので、非常勤勤務を希望する場合は問い合わせを行うべきでしょう。
(3)SNS・オンラインコミュニティを活用する
LinkedInやX(旧Twitter)などを活用し、最新の求人情報をチェックしましょう。
(4) 人材紹介会社を利用する
専門のエージェントを活用することで、非公開求人や企業ニーズに合った案件を紹介してもらえます。
■ ずっと非常勤で働き続けるための3つのコツ
非常勤として長く安定して働くためには、単に求人に応募するだけでなく、仕事を継続的に確保できるような仕組みを作ることが重要です。
(1)人脈を広げて仕事を獲得する
非常勤公認会計士として仕事を安定して得るためには、人脈の構築と維持が不可欠です。常に一方向で仕事が存在しているわけではないので、複数方面にアンテナを張っておき、機会があれば参加するようにしておくことが必要です。
① 監査法人・会計事務所の関係者とつながる
非常勤として過去に勤務した監査法人や会計事務所の上司・同僚との関係を維持することで、新たな案件を紹介してもらえることがあります。
また、過去に勤務したことがなくても、非常勤の仕事を行うことで次の仕事につながっていくこともあります。
② 業界イベントや勉強会に参加する
会計士協会のセミナー、業界のネットワーキングイベントに積極的に参加し、新しい人脈を築くことも有効です。
業界イベントや勉強会の参加に当たってはSNSや公認会計士協会の参加型研修への参加などの機会を探っていくとよいと思われます。
③ SNSやオンラインコミュニティを活用する
- LinkedInで「会計士」「監査」「非常勤」などのキーワードで検索し、つながりを増やす
- X(旧Twitter)で会計士関連の情報を発信し、業界内での認知度を上げる
(2)専門性を磨き、選ばれる会計士になる
非常勤の仕事を継続的に得るには、「この分野ならこの人」と認識される独自の強みを持つことはポイントとなります。
① 市場ニーズの高い分野に注力する
- IPO準備企業向けの会計支援(IPO企業の需要は年々増加)
- M&Aや財務デューデリジェンスの経験(PEファンド・投資銀行向けの案件が増加)
- 最新の会計基準(IFRS、US GAAP)に精通(グローバル企業との契約が可能に)
② 資格やスキルをアップデートする
- CISA(公認情報システム監査人)
- USCPA(米国公認会計士)
- ファイナンス関連の資格(CFA、簿記1級など)
「非常勤だから勉強しなくていい」という考えはNGです。競合の相手は皆、自分と同じ「公認会計士」であることを念頭に、スキルを磨くことで、より良い条件の仕事、付加価値のある仕事を継続的に獲得できます。
(3) スケジュール管理と契約の工夫をする
非常勤で安定した収入を確保するには、契約の重複やギャップ期間を管理することが必要です。
① 複数のクライアントと契約する
1社だけに依存すると、契約終了時に収入が途絶えるリスクがあるため、複数のクライアントと契約を並行して進めるようにしなければなりません。
非常勤での契約は、業務委託契約になるのが基本かと思います。でありながら、一部には拘束が厳しい監査法人などがありますが、お互いにリスクとリターンのバランスを欠くこととなりますので、一定の距離感を保ちつつ、話し合いができる委託先を増やしていくことが必要です。
② 繁忙期・閑散期のバランスを取る
監査法人の繁忙期(1月~5月)にフル稼働し、閑散期(6月~12月)はコンサルティング業務や企業研修の仕事を増やすなどを行うことで年間を通じた収入の安定化を図ります。
③ 長期契約を意識する
1回限りの単発案件ではなく、半年~1年の長期契約案件を増やすことで、仕事の安定性を高めることができます。
■ まとめ|非常勤会計士として長く働き続けるために
「Career Navi」閉鎖後は、非常勤会計士として独立する、すでに独立している公認会計士は安定して仕事を確保し続けるために、積極的な求職活動と長期的なキャリア戦略が不可欠です。
- 仕事につながる有効な人脈を広げ、紹介案件を増やす
- 案件獲得のために専門性を高め、選ばれる会計士になる
- 契約の工夫とスケジュール管理で収入を安定させる
以上のポイントを意識して、非常勤会計士としてのキャリアを築いていきましょう!