公認会計士の女性にとって出産や育児などでライフスタイルが変わった際に、一番働きやすい環境は大手監査法人や税理士法人なのでしょうか、それとも一般企業なのでしょうか、はたまた独立開業という道なのでしょうか。
この記事では大手監査法人に勤務ののち、現在は独立開業して働く公認会計士の女性に、子育てをしながらキャリアアップをするための秘訣をご紹介いただきました。
女性会計士は、ママになっても働ける?子育てとの両立とキャリアアップについて
公認会計士の女性にとって出産や育児などでライフスタイルが変わった際に、一番働きやすい環境は大手監査法人や税理士法人なのでしょうか、それとも一般企業なのでしょうか、はたまた独立開業という道なのでしょうか。
この記事では大手監査法人に勤務ののち、現在は独立開業して働く公認会計士の女性に、子育てをしながらキャリアアップをするための秘訣をご紹介いただきました。
わたしが監査法人に入所した20数年前、子育てをしながら活躍する先輩の女性公認会計士はほぼ皆無で、出産した女性公認会計士は退職するのが一般的でした。
その後、公認会計士協会や監査法人は女性会計士に対する施策を充実させています。日本公認会計士協会の資料によれば、2023年末時点の女性公認会計士は全体の16.3%を占める6868人にまで増えました(1990年は3%の227人)。
現在、公認会計士協会は女性会計士活躍促進協議会という協議会を通じて積極的に女性公認会計士の就業・復職支援等を行っています。
現在、大手の監査法人はどこも育休・時短勤務の制度を充実させています。また一度離職した女性公認会計士の再雇用にも積極的です。準大手監査法人もライフスタイルに合わせて非常勤での勤務を受け入れる等、柔軟な対応をするところが多いようです。
現在は離職からの復職が容易で、かつ大きなキャリアダウンにつながらないところが監査法人と一般企業の大きな違いといえるでしょう。
公認会計士は永年雇用が前提の業界とは異なり、男性であってもキャリアアップ、キャリアチェンジのための離職・転職が多い業界です。
そのためいったん出産等のために離職した後、復職・転職したいという女性であっても男性と変わらないキャリアを望むことが可能です。実際に現場で働いていても男女差を感じる機会はほぼありません。
ただし、「出産後育児と監査法人勤務を両立できるのか」という問題になると、いくら監査法人では時短勤務の制度や非常勤勤務の制度が充実しているからといっても、締め切りに追われる業務をチームでこなすことが監査法人の仕事である以上、周りの理解を得る努力、限られた時間で結果を残す努力が必要です。
出張を免除してもらう。遠い現場から外してもらう。これらを希望するということは、チームの他の仲間がその仕事を負担するということであり、子育てと両立するには、職場の周りへの感謝の気持ちを常に持つことが大切です。
しかもプロフェッショナルである以上、クライアントにとっては育児中かどうかなど全く関係のない話であり、高いパフォーマンスが求められることは言うまでもありません。
一般事業会社、コンサルティングファームで企業内会計士として雇用される場合、一般の会社員の方々と同じ立場になります。仕事との両立の大変さは監査法人とあまり違いはないでしょう。
ですが、企業内会計士を採用するような企業は福利厚生が監査法人以上に充実していることも多いので、福利厚生を活用して両立を図れるというのは他にはないメリットです。
税理士法人の場合、顧問先が監査法人の顧問先とは異なり比較的小規模なケースが多いです。法人にもよりますが、担当クライアント数を絞るなどができれば、時短勤務をしながら両立させることは比較的容易です。
ただし、税務実務未経験の子育て中の公認会計士のポジションは簿財の知識があるだけのスタッフの方と同じである、という気持ちで仕事に取り組む必要があります。
独立開業すれば、完全に時間をコントロールできますから、両立は容易です。
しかしながら監査法人のみの経験で独立開業するというのは非常に厳しい選択です。独立開業後は公認会計士としての知識を活かしつつ税務業務をすることになりますが、監査の知識を活かす機会はほぼありません。
税理士の方々との違いはIPOの知識、原価計算の知識、内部統制の知識があることなどです。しかしそれらの知識は税務業務に直接役立つものではありません。その上、顧客は自らの営業努力で獲得する必要があります。
独立開業して子どもとの時間を確保しながら仕事もすることを考えるならば、独立開業までのキャリアパスを計画的に組み立てて十分な知見・人脈・経験を得ておくことが大切です。
どの道を進むにせよ、子育てをしながら仕事をこなすということは、当然のことながら大変です。
子育ては乳幼児期だけでは終わりません。保育園に入れるべきか幼稚園に入れるべきかで悩み、小学校に入ると子どもが給食を食べたら帰ってきてしまう「小1の壁」にぶち当たります。
その後も中学受験をさせるべきかどうかで悩み、反抗期の子どもとどう接するべきかで悩み…と、子どもの成長に応じて悩みは形を変えながら次々と襲ってきます。
ワーキングマザーにとっては、これらの悩みの全てが、家庭に割ける時間をどうやって生み出すか、という自分自身の働き方の問題と背中合わせです。
プロフェッショナルとして働く以上、子育て中であることは何一つ仕事を疎かにしてよい理由にはなりません。
ですが、公認会計士の場合、様々な職場と、様々な契約形態があるため、やり方ひとつで仕事の質は高く維持したままボリュームを調節することが可能だと思います。
さらに当然のことですが、最もコントロールできないのは、妊娠と出産です。
わたしには2人の子どもがいますが、出産までの道のりは平坦ではありませんでした。出張の多い監査法人の業務と妊娠を両立することができず、監査法人を退職しました。また、妊娠中に長期間入院しなければならなくなり、税理士法人も退職しました。
でも退職しても、その都度自分のキャリアを広げてくれる次の仕事の機会を得ることができました。単価の高い仕事もありましたが、なかには単価の低い仕事も。
途絶えることなく次の仕事の機会に恵まれたのは公認会計士資格と、わたしに仕事をくださる方々に恵まれたおかげだと思っています。また自分のキャリアが広がったのは、単価の低い仕事でも、勉強させていただくという気持ちで取り組んできたからだと思っています。
また職場を選ぶ際には、以下のような制度や支援が整っているところを選ぶことも重要だと思います
テレワークの推進やフレックスタイム制度など、子どもの予定などにも合わせやすい柔軟な働き方ができる職場がおすすめです。
産休や育休など法的な取得権の確保だけではなく、それらを取得しやすい職場文化があるところがよいでしょう。子育て中の社員をサポートするための企業内保育施設や、育児休業給付金などが充実している、男女平等に育児休暇が取得しやすいなどもポイントだと思います。
育児休業後のスムーズな復職をサポートするための研修やトレーニングプログラム、復職後のキャリア相談ができるようなメンター制度などがあれば、より安心して復職できます。
妊娠出産を経ても、次の仕事の機会を得てキャリアを積むことは可能です。また公認会計士の業界には子育てと両立できる仕事の選択肢が、考え方やアンテナの張り方次第で沢山あります。
本稿が読者の女性の皆様が様々なライフイベントを乗り越えて、公認会計士として生きていくためのお役に立つことを願っています。
大学卒業。公認会計士第二次試験合格。大手監査法人に8年勤務。
その後、資産税特化税理士法人入所し、税理士登録。
8年後に、会計事務所を開業し、現在に至る。
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公認会計士 齊藤 健太郎
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