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組織内会計士の働き方とは?監査法人を選ばない道

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組織内会計士とは、監査法人や税理士法人ではなく、一般事業会社や行政機関などに雇用されて働いている公認会計士のことを呼びます。

この記事では、ベンチャー企業の監査役としてご活躍の公認会計士が、組織内会計士が会社の中でどのように働いているのか、また監査法人から一般事業会社に転職する理由、仕事のやりがいなどをご紹介します。

1.組織内会計士とは

(1)組織内会計士はどのような組織で働いているのか

組織内会計士とは、専門ファームに所属して監査業務やアドバイザリー、コンサルタント業務を提供するのではなく、文字通り組織を構成するメンバーとして組織のために働く会計士をいいます。一般事業会社、金融機関、行政機関など広い範囲に及びます。

公認会計士協会では次のように定義しています。

公認会計士協会の会員又は準会員で、監査法人及びその関連会社、税理士法人、会計事務所以外に所属する次の方々が該当します。

  • (1) 一般企業、官公庁・地方公共団体、非営利団体、大学等教育機関等に雇用されている方(非常勤を含む。)
  • (2) 企業等の経営者の方
  • (3) 企業等の役員(社外取締役、社外監査役等)に就任されている方(非常勤を含む。)

(2)組織内会計士として働いている会計士の人数は?

日本公認会計士協会の組織内会計士ネットワークの正会員(正社員と考えられます)の人数は2013年12月末903人で2017年12月末が1618人ですので、4年間で1.8倍に増加していることになります。
組織内会計士ネットワークに所属していない人もいますので、実際にはもっと多いように思います。

公認会計士試験合格人数の増加とリーマンショックにより監査法人が採用を絞り込んだことから、一般事業会社に就職する公認会計士試験合格者が急増したことがきっかけになったと考えられます。
しかし、現在もなお、組織内会計士が増加しているのは、監査法人以外に活躍の場を求める若手会計士の増加と、高度な会計スキル、やる気を持った若手会計士を受け入れたいと考える企業の増加によるところが大きいと考えられます。

2.組織内会計士を選ぶ理由

(1)監査法人を辞める理由

監査法人を辞める理由として一番多いのは新しい経験、刺激、キャリアを求めたいということではないでしょうか。

監査法人では監査計画立案、監査手続の実施、監査意見の形成を繰り返すことになります。複数のクライアントに関与するため、業種、規模などの違いにより論点は様々あるものの同じ業務の繰り返しになります。勤務後何年か経過し、会計論点、監査業務が理解できるとどうしても新しい経験や刺激が欲しくなります。

公認会計士の魅力は何といってもキャリアの選択肢の多さだと思います。監査の知識とスキルをある程度身に着けたら、下記のように道が広がっています。

①法人内で監査業務以外のキャリアを積む
②他の専門ファームに移る
③会計税務業務で独立開業する
④組織内会計士として転職する

このように、監査法人で監査業務の知識と経験を深めパートナーを目指すこと以外にも様々な道でキャリアを積むことができ、また、年収も監査法人時代と遜色ないことから、監査法人を辞めると考えられます。今後は、AIの進化とともに公認会計士の選択するキャリアも変わるのかもしれません。

(2)組織内会計士の魅力とは?

①会社の数字に内側から関わる

組織内会計士の魅力は監査法人やコンサルタントでは経験できないキャリア形成が可能となることだと思います。

年度予算を例にとってみましょう。監査法人では重要な会計上の見積に使用するため、予算の精度等につき、批判的に検討します。コンサルタントは、予算が経営者の意図に沿うように策定できるようアドバイスします。どちらも予算を作らない、作れないということになります。予算作成の当事者にならないというのは、リスクを負わないため安全なようでいて、キャリア形成の面では非常にリスクだと考えられます
公認会計士が組織に入った場合、会社の規模にもよりますが、会計士としての知識や経験を活かして、予算の策定には深く関与することが求められます。

社内ではビジネスの深い理解、営業担当部署、経営陣との調整が不可欠です。対外的には金融機関との交渉、予算の上方、下方修正の公表など、様々な業務に関与し経験を積むことになります。「実際に予算を策定したという経験」は、次のキャリアを考えたときに大きな意味を持つことになります。
「監査」なのか、「アドバイス」なのか、「策定」したのかでは経験値が持つ「説得力」が大きく異なり、「策定」経験に勝るものはありません。これは予算策定だけでなく、全ての業務にいえることだと思います。これらを実際に経験できることが組織内会計士になることの最大の魅力だと思います。

②違う専門分野の人と関わることで広がる視野

また、組織に入ると会計・税務以外の様々な職種の人とネットワークを持つことになります。監査法人に勤務しているとどうしても会計分野にネットワークが偏ることになります。組織には営業、エンジニアなど監査法人時代に出会った先輩と勝るとも劣らない優秀な人が多く働いており、新たに形成されるネットワークは、組織内会計士だからこそ作ることができる宝といえるものです。

3.組織内会計士の年収は監査法人勤務より上がる?

(1)一般企業では?

どの企業にどのポジションで入るのかにより異なるため、一概にいうことは言えないですが、転職先では現在の年収をベースに決定することが多いため、大幅に上がる、下がるといったことはないように思いますが、下がる傾向にあるようです。ただし上場企業ですと、手厚い福利厚生、労働時間の短縮など年収以外の面では充実しているようです。

(2)ベンチャー企業では?

ベンチャー企業でも、下がる傾向にありますが、人手不足のため、業務内容によっては現状維持以上の場合もあるようです。通常はIPOを目指しており、ストックオプションを付与されることが多いようです。IPOできるかどうかは非常に不確実ではあるものの、成功した場合には多額の資産形成も可能であるところが魅力といえるでしょう。

4.わたしの場合

わたしは、監査法人でマネージャー業務を行う傍ら、監査法人以外のキャリア形成を模索していました。おりしも、自動車メーカーのリコール隠しや大手ゼネコンによるマンション手抜き工事が発覚。企業の健全な経営のためには適切な「コーポレートガバナンス」の構築が必要であり、直接関与していこうと決意しました。

監査業務を行うことから公認会計士のスキルも活かせること、また長時間勤務からの脱却を図れるポジションに魅力を感じ、現在のベンチャー企業の監査役というポジションを選択しました。

5.まとめ

以上、ご説明してきたように組織内で働くことは、予算の作成など、企業の経営に内側から関われることが大きな魅力となっています。

監査法人での経験が次のキャリア形成に活かせるため、次の職場では「監査法人の経験+組織内会計士」としてのキャリアを積むことができます。それをまた次のキャリア形成に活かすことができるため、同じ期間を監査法人に勤務していただけの会計士と比較した場合、会計士としての価値は同等以上といえるのではないでしょうか。

働き方の一つの選択肢として、組織内で会計士として働くことを検討してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

横山 敬子(よこやま けいこ)
公認会計士

大学卒業後、一般事業会社に3年間勤務した後退職し、公認会計士を目指す。2003年公認会計士二次試験合格。中小監査法人に就職するものの、2004年7月に監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)静岡事務所入所。3年勤務の後、東京事務所トータルサービス1部(現第7事業部)に異動。会計監査、IPO支援業務、アドバイザリー業務などに携わる。
2016年6月末に監査法人を退職。同年7月より、IPOを目指す設立2年目のベンチャー企業の常勤監査役に就任。ベンチャー企業では監査役といえども、業務は多岐にわたることから、日々楽しみながら奮闘している。

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