公認会計士を目指して勉強している人の中には、一生懸命勉強しているのになかなか合格できないのはどうして?と悩む人も多いです。
ここではそうなってしまう人の傾向について、長年、公認会計士として実務を担い、現在はジャスネットでエグゼクティブエージェントも務める齊藤健太郎が考察します。
少々厳しい部分もあるかもしれませんが、マインド面から試験対策まであなたの問題を解決できるヒントがあるかもしれません。ぜひ参考になさってください。
合格できないのには理由がある?!公認会計士試験に受からない人の特徴。その傾向と対策8選
ジャスネットコミュニケーションズ エグゼクティブエージェント
公認会計士 齊藤健太郎
公認会計士を目指して勉強している人の中には、一生懸命勉強しているのになかなか合格できないのはどうして?と悩む人も多いです。
ここではそうなってしまう人の傾向について、長年、公認会計士として実務を担い、現在はジャスネットでエグゼクティブエージェントも務める齊藤健太郎が考察します。
少々厳しい部分もあるかもしれませんが、マインド面から試験対策まであなたの問題を解決できるヒントがあるかもしれません。ぜひ参考になさってください。
公認会計士試験の2024年度の合格率は7.4%でした。
最難関国家資格と言われるだけあって、この数字だけでも非常に難しい試験であることがわかると思います。
大前提として、公認会計士試験はあくまで職業資格試験であるため、向き不向きは存在すると思います。公認 会計士は監査のために企業等の膨大な資料を読み取ることが必要なため、試験は文書処理能力が早い人が有利だと言えるでしょう。
わたしも長年に渡る公認会計士としての仕事に関わる中で多数の挑戦者たちを見てきましたが、そもそも試験に合格できない人には傾向があるのではないかと思うようになりました。
短答式、論文式それぞれに合格できない人について、解決策なども含めてアドバイスさせていただきます。
公認会計士の短答式試験の合格率は、直近3年間でみると通年で15%前後の合格率で推移しています。
年2回試験があり、短答式試験合格者は2年間試験免除が得られます。概算で言いますと公認会計士を目指す全受験者の3割程度が短答式試験に合格していることになります。
まず初めに厳しいことを言いますが、3年間勉強をしていても、この短答式試験に合格できないという方は全受験者の3割に入れないわけですから、撤退も視野に入れる必要があるとわたしは思います。
そのような方々には以下の傾向があり、対策を十分に取れていないと言えるからです。
最初にマインドの問題を指摘したのは、実際に合格できない方々を見て、やはりこの部分が大きいのではないかと感じているからです。
公認会計士試験が難関であることは間違いありませんが、あくまで職業資格試験であることを忘れてはいけません。大学受験のようなマインドではなく、人生を賭けて試験に臨む覚悟のある人のみが合格できる試験であるという心構えが重要になります。
大学生の場合は学生生活をすべて資格取得の勉強に捧げる、就職活動をせずに勉強する、社会人の場合は仕事を辞めるか、働きながら勉強するなど…みな何かを犠牲にしながら合格を目指しています。そういった覚悟のある人たちが母集団であるという自覚を持つべきです。
自分も「もちろん覚悟を持っている!」と思っていても、3年で結果が出なかった場合はその覚悟が足りないと言われても仕方ないのです。
職業として使う知識である以上、科目範囲の内容はすべて九九のように反射的に対応できるレベルまで持っていかなくてはなりません。そのためにはどんな勉強をすればいいのか、その視点で知識を積み重ねることが大切になります。
わたしの場合は 、最初はひたすら書いて理解にあて、その後はテキストを何周も読み込んでいました。
1年目はどれくらいボールペンすり減らしたか、2年目以降はテキスト何周できたかを自己の中でのサブ目標にしていたと思います。
きちんと専門学校の講座を受けることは当たり前ですが、復習にも十分な時間を取りましょう。復習では 答練を完璧にやりきるように心がけました。
特に簿記、原価計算の計算科目の答練問題は、基本的に時間内に完成の域に達するようになるまで何回も繰り返しました。
この繰り返しは時間がないとできず、後回しにされがちです。意識して時間を作るようにしなければならないのですが、受からない傾向にある人はこの時間を作るということが十分でないように思われます。
専門学校の答練や模試などを繰り返しやっていますか? 最初は全く点数が取れないかもしれませんが、何度も繰り返すことでコツのようなものが身につきます。
わたしの場合は(3)に記載のとおり、理論科目も含めて答練を完璧にやりきるように心がけました。
簿記、原価計算の計算科目については、(3)に記載した通りですが、理論科目については、答練の答案を自己でブリーフィングしていました。また法律科目については、必ず条文を引いて目を通すように心がけました。
正直なところ、わたしも論文式試験には苦労しました。全受験者のうちの3割の短答式試験合格者から、さらに上位3割を選定させる試験となります。
経験者として今ならばわかる「こうすればよかった」ということをお伝えいたします。
本試験を2回受けてみて、太刀打ちできないと思った場合は、今の勉強方法に課題があるかもしれません。テキストの内容は試験の方向性と合っているか、自分にとってわかりやすいものかどうかなどは検討しましょう。
わたしの場合ですと、経営学の本試験と専門学校のテキストの齟齬は大きかったという印象です。
本試験でどう答えるべきかわからないものがあった場合は、インプットした情報や講座内容を一度、疑ってみましょう。今はネットで様々な情報を集めることができるので、自分に合った講座はないか探すべきと思います。
専門学校などでは得意科目を作れという講師もいますが、わたしはむしろ満遍なく平均的に得点できる方が合格に近づくと思っています。
わたしは財務諸表論が苦手科目で、最初は「なぜこのような考え方になるのか論じよ」と言われてもどう論じたらいいのか…という状態でした。その場合、そもそも勉強方法が間違っている可能性があり、回答できるように変える必要があります。
わたしは専門学校を変えることで 、財務諸表論で有名な先生の講座を受講する機会に恵まれて、はじめて勉強の方法、アプローチが見えた思いがしました。
専門学校ごとに講座の内容も異なるので、論文式の本試験に沿った講座となっているのかは自分自身が体感しているので、自分の体感を信じて進むべき方向がしっくりするまで探ってみるべきかと思います。
なぜか「計算科目だけは満点にしよう」などと一部の得意科目に固執する方がいます。
論文式試験は、むしろ満遍なく全科目得点できる方が合格できるため、これはあまりおすすめできません。
むしろ全科目において「このような考え方で結論が出ている」というアプローチへの理解が必要です。それをせずに暗記だけでは太刀打ちできないようになっていますので、このアプローチにフォーカスして学習を進めるべきでしょう。
企業会計基準の適用指針などには、「結論の背景」という説明項目があるので、必ず自分で目を通しておくようにする必要があるかと思います。実務家は基本的に原文に目を通すものですので、このアプローチの意識付けは必須だと思います。
模試を受けることはもちろん大切なのですが、模試だとできるのになぜか合格できない、という場合は注意が必要です。
冒頭に述べた通り、あくまでも公認会計士は国家資格なので、実務上、論点として課題になるものが本試験に反映されます。専門学校で新基準の研究はされているかとは思うのですが、同じ専門校で何度も模試を受けても、新しい論点、実務に必要な論点などが必ずしも反映されているかはわかりません。
わたしは合格した後に、ある会計専門学校で公認会計士講座の簿記の答練問題を作る機会がありました。その時、合格後に通う実務補修所で企業会計基準委員会が公表した会計基準を基にした仕訳事例が実務補修所のテキストに載っていて実務的な処理の説明を受けたことがありました。何気なくその仕訳事例を簿記答練の問題に載せたところ、翌年の本試験で問題として出ていました。
こうした新基準の研究は各専門学校で行っていますが、前年から踏襲している論点の方が多数となります。必ずしもすべてテキストで必須論点が反映されるわけではないですし、条文などの原文にあたるという姿勢は習慣化すべきかと思います。
このため、模試の結果に一喜一憂せず、あくまで参考程度にするのがいいのではないでしょうか。
なお、わたしも合格した年の模試はあまり結果がよくなかったのですが、実際の試験では論点を出し切ったという実感があり合格することができました。
みなさん、もちろん試験に合格しようと思って努力していることと思います。
しかし合格できない方の話を聞くと、今までに述べたような認識に齟齬を感じることがありました。
公認会計士試験は、あくまで職業上の実務を行うための資格試験だということ。学問的ではなく、実際に使うことを見越して実力をつけていく必要があるのです。
そのことを忘れず、みなさんが公認会計士として活躍できる日がくることを願っています。
横浜国立大学経済学部卒業
横浜国立大学国際経済法学研究科修了:専攻は会社法
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齊藤 健太郎
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