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「国際税務コンサルティング」の業務内容、仕事の魅力は?

この記事では、BIG4系の税理士法人、コンサルティング会社、国際税務特化の税理士法人などでの勤務経験を経て、現在国際税務コンサルティングの事務所を主宰している公認会計士・税理士が、自身の経験をふまえて国際税務コンサルティングの業務内容や仕事のやりがいなどをお伝えします。

目次

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

■「国際税務コンサルティング」の業務内容

■「国際税務コンサルティング」の業務のやりがいやメリットは?

■「国際税務に特化した税理士法人」の採用ニーズ

■「国際税務に特化した税理士法人」の経験を活かしたその後とのキャリアパスは?

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

国際税務コンサルティングの仕事は、高い専門性への志向に加えて、高いコミュニケーション能力を備えている方が向いているといえます。

国際税務は日本の租税法に加えて、二国間や多国間の租税条約やOECDのガイドライン等、拠り所とすべき規定が多く、高度な専門知識と深い経験が求められます。そのため公認会計士の仕事の中でもとりわけ専門性の高い領域のひとつであるといえます。

また、国内税務と異なり、同じ取引であっても相手国がどこなのかによって取扱いが180度変わることもありますので、きめ細かさや注意深さも必要です。

他方で、クライアントは単に国際税務上の取扱いが分かればそれで終わりではなく、それを踏まえた上での経営意思決定を行わなければなりません。

国際税務はともすると難解になりがちですが、それを分かりやすい言葉で説明することはもちろん、クライアントのニーズを理解した上で、経営へのインパクトや取り得る選択肢のメリット・デメリットなどについても丁寧に示せる能力が、クライアントの意思決定に資する国際税務コンサルティングを提供するためには必要と言えます。

ですので、地道に専門性を磨き上げていく粘り強さと成長意欲、そしてクライアントとの丁寧なコミュニケーションを厭わない性格とを兼ね備えた人が、この業務に向いていると考えます。

■「国際税務コンサルティング」の業務内容

国際税務コンサルティングとひと口に言ってもその範囲はとても広いのですが、業務の形態によって分類してみました。

(1)国際税務に関する日常的な質問への対応

クライアントと顧問契約を締結し、クライアントの日々の業務で生ずる国際税務に関する質問・相談に、メールや電話、ミーティングなどで対応する業務です。

日常的な質問とは言っても、一見単純に見えて実は難易度の高い複雑な事案であることも多く、クライアントから「念のため先生に聞いて良かった。簡単だと高を括って危うく独断で処理するところでした」と感謝されることもしばしばです。

(2)まとまった国際税務プロジェクトの推進

移転価格税制のポリシーや文書化業務、多数の子会社の外国子会社合算税制に関する判定業務などは、日常的な対応だけで済むものではなく、数カ月間のまとまったプロジェクトとして推進することが通常です。

この業務においては、国際税務の専門家としての役割に加えて、プロジェクト・マネージャーとして、チームをまとめプロジェクトを推進していくスキルとリーダーシップが求められます。また、海外子会社・親会社などと共同で推進するプロジェクトの場合は、高い語学力が必要とされることが多いです。

(3)税務調査への対応支援

こちらは税務調査の立会から意見書の作成、調査官との議論といった、一般的に税理士が行う業務と何ら変わりのない業務ですが、国際税務に関する論点が争点になると、当局側も国際税務や移転価格税制を専門とする調査官が関与することが通常です。

また税務調査が長期化することもめずらしくなく、国際税務コンサルタントの力量が試される場となります。

(4)二国間相互協議の支援

二国間相互協議とは、同じ所得に対して日本と外国とで二重課税を受けた場合など、二国間の課税のコンフリクトを税務当局同士の協議によって解消してもらう手段をいいます。

主に移転価格税制に係る事前確認(APA)や移転価格課税後の二重課税排除においてこの手段が用いられますが、相互協議申立書の作成支援や、申請手続き支援、協議前の税務当局による審査対応などを行い、相手国側の税務専門家との連携も行います。

(5)海外との連携

国際税務といっても日本の専門家が行う業務はあくまで日本側の租税法に基づく税務上の取扱いになりますが、他方でクライアント側はその取引が相手国でどう取り扱われるのかという点も確認しなければいけません。

基本的にはクライアントが海外で契約している専門家や海外子会社の担当者などに問い合わせることになりますが、時にはクライアントから問い合わせの支援を依頼されることもあります。

その場合には、メールや電話、ウェブ会議などで海外専門家や海外子会社とやり取りをすることになり、現地語とまでは言わないまでも、少なくとも英語での円滑なコミュニケーション能力が求められます。

■「国際税務コンサルティング」の業務のやりがいやメリットは?

国際税務コンサルティングのやりがいは、何と言っても自分が高い専門性を身につければ身につけるほど、サービスクオリティが向上し、クライアントへの貢献につながるという点です。その意味で、日ごろの努力がダイレクトに報われやすい仕事であると言えます。

また、税務は企業のキャッシュフローに直接インパクトを与えることから、経営意思決定上重要な要素です。そのため、企業規模にもよりますが、経営層とより身近に仕事をする機会が多く、自分の仕事が企業の国際的な経営意思決定に大きく関わっていることを実感します。

さらに私の場合は、これまでのキャリアの過程で、海外各国の国際税務専門家との独自のネットワークを構築してきましたが、毎年世界各国で行われる国際税務の会合や私的な訪問を通じた彼らとの定期的な情報交換や、彼らとの協働による国際案件の推進は本当に刺激的で、この仕事の醍醐味を感じます。

■「国際税務に特化した税理士法人」の採用ニーズ

(1)監査法人勤務から国際税務への転身は可能か?

私は公認会計士二次試験合格発表と同時に、監査経験もなくいきなりBIG4税理士法人に入社したため、スタート時に税務知識は皆無でした。そのため1年目は本当に大変で、文字通り朝から夜中まで仕事に勉強に追われるという感じでした。

監査法人からの転職の場合は、監査実務や修了考査などで税務に触れる機会があると思いますので、そこまでではないと思いますが、最初のうちは税務実務と並行して専門知識の自己学習が必要になると思います。

ただ、監査実務で培った分析力やクライアントとのコミュニケーション能力、プロジェクト・マネジメント力は、国際税務コンサルタントの仕事に大いに役立つはずで、国際税務を粘り強く学んでいく意欲があれば、監査法人からの転身は十分可能です。

なお、「監査法人から、いったんは一般的な税理士法人に転職した方がよいのか?それとも、国際税務に特化した税理士法人にいきなり転職をしていいのか?」という質問を受けることがありますが、個人的な意見としては、一般的な税理士法人で必要とされる知識と国際税務コンサルティングで必要な知識とはだいぶ異なりますので、一般的な税理士法人でのキャリアを経る必要性は必ずしもないと思います。

(2)採用されるポイント

国際税務に特化した税理士法人では、国際税務経験者のニーズが高いことが通常ですが、国際税務未経験者の転職が難しいのかと言えばそうではありません

国際税務コンサルタントとしての仕事には、国際税務の専門的能力はもとより、高度なコミュニケーション能力やプロジェクト・マネジメント力も必要とされますので、後者の能力が高ければ、ポテンシャル採用の余地は十分にあると思います。

また、クライアントの海外関係会社や海外の税務専門家との連携が必要になる場面も多いため、英語や中国語をはじめとする語学力が高い人材のニーズは非常に大きいです。

(3)転職で気を付けるポイントや難易度

国際税務実務の経験のない候補者に対しては、面接官もあまり専門的な質問はしないと思いますが、「移転価格税制」「外国税額控除」といった基本的な専門用語ぐらいは分かるよう、面接前に国際税務の入門書程度は読んでおく方が望ましいでしょう。

また、コミュニケーション能力やプロジェクト・マネジメント力、語学力などをアピールポイントとしたい場合は、これまでのキャリアでその能力を発揮して成果を上げた体験談を具体的に説明し、今後国際税務コンサルティングの仕事でそれをどう生かせるのかを説明できるようにしておくのが良いでしょう。

■「国際税務に特化した税理士法人」の経験を活かしたその後とのキャリアパスは?

国際税務分野のニーズは高く、国際税務の経験を積んだ公認会計士のキャリアパスには、多様な選択肢が待っているといえます。

まず、国際税務に特化した税理士法人でそのままパートナーとして活躍する選択肢があります。勤務時代と異なり税理士法人の経営を担っていくのは相当なやりがいがあります。

他方、BIG4税理士法人に国際税務経験者として転職する道もあります。この場合、転職後はより大規模な多国籍企業等を相手に仕事をしていく機会が増えるでしょう。

また、組織内会計士として企業の税務部門で国際税務や移転価格のスペシャリストとして活躍する方も増えています。昨今は大企業のみならず中堅企業においても国際税務への対応の必要性が高まっており、社内に国際税務スペシャリストを配置したい企業も増えています。

国際税務で独立する方はまだ多くは見かけないものの、国際税務の経験を十分に積み、また語学力にも自信があれば、独立の道も選択肢として十分あり得ます。中には海外で事務所を構えて独立するバイタリティーあふれる公認会計士もいて、国際税務の可能性の大きさには驚くばかりです。

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