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横領や粉飾決算は、なぜ起こる? 会計士が果たす役割は?

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内部統制の重要な目的のひとつは、会計不正の防止。会計士には、企業内で行われる横領や会計上の不正を防止する仕組み作りに資する役割が期待されています。その観点からよく引用されるのが、不正が発生する原因を示すモデルとして有名な「不正のトライアングル」です。まずは、このモデルの説明から入りましょう。

1.不正のトライアングルとは?

米国の犯罪心理学者、クレッシーは業務上横領の発生要因を分析した論文「Other People’s Money : A Study in the Social Psychology of Embezzlement(1953)」の中で、 横領の発生条件として、次の3つを挙げています。

  • ①本人が他人と共有できない金銭的な問題を抱えていること
  • ②本人が信頼されている立場を利用すれば秘密裏に問題を解決できると認識すること
  • ③横領をしても問題ないと自らの行動を正当化すること

この3つが揃った時に、不正が発生する危険は極めて高くなります。 「不正のトライアングル」は上記の3要素を「動機・プレッシャー」「機会の認識」「正当化」と整理し、三角形にモデル化したもの。 トライアングルの3つの要素をいかに潰すか、という観点でリスクを管理する理論として定着していきました。

2.会計不正事件が理論を深化させた

クレッシーの理論の優れた普遍性は、2002年、エンロン事件の発生を受けて米国公認会計士協会 (AICPA)の監査基準書に取り上げられることで、 財務報告、内部統制の観点から再びスポットが当たることとなりました。

また、同理論は、2011年に改定されたCOSOフレームワークにも応用されています。 内部統制のフレームワークは、数々の財務報告上の不正事件で経済社会に深いダメージを受けた経験から、不断に見直されてきた歴史があるのです。

3.不正調査のスペシャリストとしての会計士

近年、「公認不正検査士」という不正対策に重要な4つの分野(会計知識、法律知識、犯罪心理学、調査手法)について専門知識を保有する不正調査のスペシャリストが脚光を浴びています。公認会計士、弁護士等が公認不正検査士資格もあわせて保有することで、不正調査のスペシャリストとしての活躍の幅が広がります。

公認会計士が不正調査のスペシャリストとして勤務する場所としては、大手監査法人等グローバルファームのファイナンシャルアドバイザリーサービス会社フォレンジング部門となり、大手監査法人等で通常の監査を経験後に部門異動や転職をしている方が大半と思われます。

そこでは、具体的には、事実解明および解決策の提供、調査支援、必要に応じて訴訟や仲裁の支援をします。また、同時に、不正リスクに有効な内部管理体制を構築するアドバイスや、内部監査のサポートをしますので、不正調査の専門知識だけでなく、監査法人での監査経験や内部監査での経験も活かすことができるやりがいのある仕事といえます。

4.会計は学際的な知見で補完される

「内部統制」という言葉は、J-SOXの影響もあり、会計士だけではなく経営者にもすっかり定着しました。 しかし、企業の内部統制の仕組みを作る際、米国から「輸入」されたフレームワークを当てはめるだけでは不十分であるとの議論がしばしばなされます。

会計は、経営学はもちろん、心理学、社会学にまで広がりを持った学際的な分野。会計業務を突き詰めると人間心理を含めた様々な知に行き着くことになります。

冒頭にご紹介した「不正のトライアングル」のように、 心理的メカニズムを理解することにより、内部統制の仕組みづくりは「実」を伴うものになります。

執筆者プロフィール

福留 聡(ふくどめ さとし)
公認会計士・税理士・ワシントン州米国公認会計士・米国税理士・行政書士 福留 聡事務所

福留 聡事務所は、新宿区の日米税理士事務所兼日米公認会計士事務所で、日本で最初の日米公認会計士兼日米税理士事務所であり、豊富な実務経験と出版経験を要する日米公認会計士・日米税理士が国内案件から海外案件、個人事業主から上場企業、外資系企業までお客様の多様なニーズにお応え致します。また、Skypeを用いて全国対応、海外対応している数少ない国際会計税務事務所です。

著書

『公認会計士・税理士・米国公認会計士・米国税理士 資格取得・就職・転職・開業ガイドブック』(税務経理協会)2014
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『7つのテーマがわかるIFRS実務ガイドブック』(税務経理協会)2016
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『7つのステップでわかる 税効果会計実務 完全ガイドブック』(税務経理協会)2016
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『7つのステップでわかる 税効果会計実務入門』(税務経理協会)2014
(※amazonの書籍ページに遷移します)

『経理業務を標準化する ワークシート活用ガイド』(中央経済社)2013
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関連サイト

福留聡税理士事務所/福留聡国際会計アドバイザリー株式会社
(※外部サイトに遷移します)

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