日本経済新聞 夕刊2022/7/13
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62562010T10C22A7EAF000/
米国の物言う投資家(アクティビスト)として著名なビル・アックマン氏率いる特別買収目的会社(SPAC)はこのほど、調達資金40億ドル(約5400億円)を投資家に返還すると発表した。市場環境の激変で合併先を見つけられず、清算する。過去最大のSPACによる合併断念は、同市場の変調ぶりを裏付ける。
米で過去最大のSPAC、調達資金5400億円返還 市場激変で合併断念
日本経済新聞 夕刊2022/7/13
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62562010T10C22A7EAF000/
米国の物言う投資家(アクティビスト)として著名なビル・アックマン氏率いる特別買収目的会社(SPAC)はこのほど、調達資金40億ドル(約5400億円)を投資家に返還すると発表した。市場環境の激変で合併先を見つけられず、清算する。過去最大のSPACによる合併断念は、同市場の変調ぶりを裏付ける。
米国の資本市場では、近年、株高や金融緩和により、「SPAC(Special Purpose Acquisition Company)」という上場の仕組みが活用されてきていた。
「SPAC」とは、将来事業会社を買収合併することを前提に計画を立案し、資金調達していわゆる「空箱企業」が上場し、上場により資金調達した資金を元手に原則2年内に企業買収し、その後合併して上場会社として運営していくというスキームである。実際に米国の資本市場では何百社も「SPAC」そのものの上場やSPACによる事業買収や合併が行われてきた。
SPACの歴史は、1980年代にOTCブリティンボードにて取引が開始されたことに始まる。インターネット・バブル崩壊後の2006年以降、アメリカン証券取引所(現在のNYSE American)が2005年にSPACの上場を承認したこと、IPO規制が強化されたことを受けて、再び脚光を浴び始め、2006年には37社計34億ドル、2007年には66社計121億ドルの調達を行なった。最近2020年では248社336.1億ドル、2021年では302社324.9億ドルの調達を行っている。
こうした動きを見て、日本でもSPACの活用が議論されてきた。それらの論点整理については、下記のURLに詳しいので、参照されたい。
『日本版SPAC導入についての基本論点』
森・濱田松本法律事務所
https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/spac/nlsgeu000005s68v-att/nlsgeu00000608as.pdf
日本での導入議論は最近始まったばかりだが、上記に見るように米国では長い資本市場の歴史の中で培われてきた制度である。日本の資本市場で一朝一夕に導入しようというのは無理があるというものである。
アックマン氏が運用するSPAC「パーシング・スクエア・トンティーン・ホールディングス」は2020年7月に上場したということなので、原則2年以内に買収先を見つけ実行することが制度上求められていた。株主総会決議により1年延長も認められているが、米国の市場環境が思ったほどよくなかったり、将来の回復可能性が不透明であったりという理由から、調達した資金を返還し解散するという結果に繋がった。
この記事によると、SPACが何という話ではなく、現在の米国の資本市場や経済の深刻さが伝わってくる。そして将来についても見通しが立たないという不透明な経済環境が見て取れる。金融緩和縮小、インフレ懸念が米国経済、日本経済、世界経済にあたえる影響について注意したい。
(文責 監査法人コスモス 統括代表社員 公認会計士 新開智之)
平成4年3月岐阜大学教育学部卒業、平成10年3月公認会計士試験第3次試験合格後、社員、代表社員を経て、令和元年6月監査法人コスモス統括代表社員就任。会計監査・IPO支援のほか、財務・会計・税務を中心とした業務に就いて、マネジメント・コンサルティング、企業再編コンサルティング、環境ISOの構築支援及び審査を経験してきた。現在では、中小・中堅企業の株式上場・IPO支援を積極的に実施しており、最近5年間で11社を東京プロマーケット市場へ上場支援し、特に東京プロマーケット市場から一般市場へのステップアップ上場への支援にも積極的に活動中。
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