大学発の起業 慶応が最多 昨年度、2位は岐阜大 200社新設、累計3,300社に 経産省調査
日本経済新聞 朝刊 2022/5/18 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60854080X10C22A5FFT000/
大学発スタートアップが1年間に200社新設され、累計で3300社を超えたことが経済産業省の2021年度調査で分かった。増加数は慶応義塾大が首位で、大学系ベンチャーキャピタル(VC)が起業を支援した。2位は岐阜大だった。裾野が広がる一方、新規株式公開(IPO)に至る企業は少ない。
着実に裾野が拡大する大学発スタートアップにとって、中長期の成長戦略をいかに描くかが課題になる。起業を促す環境整備だけでなく、事業拡大に息長く伴走する枠組みが求められている。■会計士の目線
(1)スタートアップに必要とされる伴奏の仕組み
スタートアップ企業では、研究開発段階のシード(種)の段階の開発段階で「魔の川」をわたれるか。開発の後は製品化の「死の谷」を越えられるかはまさに資金供給の課題といえる。IPOにまで行き着く企業を育てるためには、売れる商品への進化や量産化の壁、すなわち「ダーウィンの海」がある。
日経新聞の最後のコメントにあるように、事業拡大に息長く伴走する仕組みが求められるのであるが、この仕組みとはどんなことを言うのだろうか。
(2)必要とされるのは、経営計画策定のトレーニング
技術者や研究者が得意とする、開発段階での「魔の川」製品化での「死の谷」を越え、経営の実践として商品化での「ダーウィンの海」を越える必要がある。これまで多くのスタートアップが「死の谷」を越えながらも、商品化に行き着かず「ダーウィンの海」に沈んでいった。
日本の教育の在り方にも課題があるのだろうが、「経営リテラシー」の高い学生やスタートアップ経営者は少ないと感じざるを得ない。
スタートアップ企業を立ち上げるとともに、上場やIPOの活動も見据えて、効果的なビジネスモデルの構築や戦略立案の知識に裏打ちされた実現可能な経営計画の策定をしてもらうようなトレーニングが必要になると考える。
日本の教育の現場では「戦略思考の養成」や「仮説と検証による市場テスト」など、トライ&エラーを繰り返しながらも、明確なゴール設定をした上でプロジェクトや経営を実践しようとする考え方や指導がいきわたっていないようにも感じる。
経営が数字遊びに終始し、経営の実践、継続的改善といったマネジメントそのものの考え方の浸透や実践が希薄であると感じている。
スタートアップ企業の経営者にはマネジメントの知識や実践を学ぶことを必須としなければ、上場やIPOどころか「ダーウィンの海」でさえも生き残ることはできない。
(文責 監査法人コスモス 統括代表社員 公認会計士 新開智之)
- 執筆者プロフィール
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新開 智之(しんかい ともゆき)
公認会計士、監査法人コスモス統括代表社員平成4年3月岐阜大学教育学部卒業、平成10年3月公認会計士試験第3次試験合格後、社員、代表社員を経て、令和元年6月監査法人コスモス統括代表社員就任。会計監査・IPO支援のほか、財務・会計・税務を中心とした業務に就いて、マネジメント・コンサルティング、企業再編コンサルティング、環境ISOの構築支援及び審査を経験してきた。現在では、中小・中堅企業の株式上場・IPO支援を積極的に実施しており、最近5年間で11社を東京プロマーケット市場へ上場支援し、特に東京プロマーケット市場から一般市場へのステップアップ上場への支援にも積極的に活動中。
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