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公認会計士のための英語勉強法

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公認会計士 野村 宜弘

公認会計士として仕事をしていると、今や当然のように英語の能力が求められます。

というのも、日本の企業であっても海外と取引がある場合や、外資系企業の日本子会社がクライアントであったり、現地で外国人の方を雇用している場合など、実に様々なケースがあるからです。

たとえ、業務で使用する書類のすべてが英語でなくとも、英語の書類を確認したり、場合によっては現地の方とやり取りしたりする場面は現に存在しますし、そのときに、「英語が話せません」「読み書きできません」では仕事になりません。

ここではビジネスの視察で2年間アメリカに住んでいた公認会計士の野村宜弘さんに、実際に使える英語を身につけた方法をご教示いただきました。

日本にいながら実践できる方法もありますので、ぜひ参考になさってください。

■公認会計士に英語は必要か?

ビジネスがこれほどまでに世界規模になっている以上、監査を行う公認会計士の仕事でも今や英語は必須といえると思います。

監査法人内で国際部のように、部門として分かれている場合もありますが、日本の企業を担当していても、その企業が海外と取引をしている場合は、やはり英語に関わる書類に目を通す必要があります。現場レベルでもそういった機会は多数ありますので、他の公認会計士の方も皆さん意識的に英語を勉強していました。

一般的に日本人の英語力は国際的には非常に低いといえます。またTOEICは世界的にはあまり認知されていない語学力評価システムです。しかし国内においては一定の評価を得ているため、上司からは最低でもTOEIC750点、できれば900点以上は欲しいと言われていました。

またTOEICの点数が高くとも会話ができないのでは、「仕事で使える英語」とは言い難いでしょう。今は手軽にzoomなどで海外の方と打ち合わせをする機会もありますので、通常のやり取りができる程度の英会話力も必要です。

そうはいっても日本に住んでいる場合、英語が自然に身につくということはありません。わたしはビジネスの視察のため約2年間、アメリカのボストンに住んでいましたが、英語を身につけることをかなり意識した生活を送っていました。

わたしのもともとの英語レベルはTOEIC700点台前半でしたが、現在は、以前よりも英語の能力が明らかに伸びたことを実感しています。以前は、英語を使用した案件については断ったりしていたのですが、最近では、実際に、外国人の方の税務相談を受けたりしており、英語を使用する仕事を断ることはなくなりました。

■具体的な英語の勉強法

わたしが本格的に英語を身につけようと意識したのは渡米後のため、一番時間を割いたのは英会話の勉強になってしまうのですが、実感したのは「とにかく会話する機会を増やす以外に上達の道はない」ということでした。

まず現地の語学学校に1回3時間、週3日通学していましたし、わたしのいたボストンではノンネイティブのための英会話教室が無料で提供されていたので、できるだけ参加するようにしたのが一つ。

また、ボランティアの方とマンツーマンで話す機会を週2時間程度作るなど、とにかく休みの土日以外は一日3~4時間くらいは意識して英語に触れる機会を作っていました

また、英語生活に慣れるため、目からの情報も英語に統一すべく、iPadやスマホの表記も英語に変更するなどの工夫も。

そんなにも一生懸命英語を学ぶ原動力になったのは、やはりアメリカと日本の賃金の格差を実感したからでしょうか(笑)自分も使える英語を身につけることができたら、よりグローバルな仕事で活躍できると思ったからです。

そんな経験をもとにアドバイスするとしたら、日本で英語を鍛えるためには以下のような方法がよいのではないでしょうか。

<英会話>
  • FACEBOOKなどでも開催されている、英語で会話するグループに参加する。
    (※海外留学経験者などが、日本で英語力を落とさないために英語のみで会話するグループなどを開催しています)
  • 外国人講師との英会話レッスンやチャットを利用する(レアジョブ英会話等)。母国語が英語でない方は、比較的安価な傾向があります。
  • 英会話に特化したアプリなどを利用してAIと話す。
<ライティング>

わたしはDeepLという翻訳ツールを使用していたので、あまり熱心にライティングに特化した勉強はしていませんでした。これについては、通っていた英語学校で文章の書き方を一通り学びました。

もっとも、他の日本人をみていると、論文等でちゃんとした文章を書くような場合には、grammarlyGrammarly: Free Writing AI Assistance)というアプリを使用しているひとが少なからずいました。わたしは使用しませんでしたが、文法をちゃんとチェックしてもらうことができるようです。

■英語学習におすすめなアプリ・サービス

英語学習に役立つアプリ・サービスはいろいろあります。ここでは、ビジネスに限らず日常生活でも役に立つものも紹介しておきます。

ビジネスで使用する場合は、使用した機密情報が機械学習に利用されて流出しないようにする必要があります。そのために、機密が保持される有料バージョンを使用したりするなど、情報の流出にはくれぐれも注意をする必要があります。

・voscreenVoscreen - life itself):リスニング力向上

このアプリは、リスニング力を鍛えるアプリです。映画や音楽などの1つのシーンを聞いて、そのセリフや内容を理解するというものです。

ハーバードやMITといったトップレベルの大学院に受かるような人は、普通にTOEFL100点以上のスコアを獲得しています。しかし、このようなハイレベルの人達であっても、映画やミュージカルでの英語をストレスなく聞き取ることができる人は一部の帰国子女を除けばごく少数です。

このアプリで使用されるシーンの数は豊富で、中には実際に使ってみたいような言葉もあります。語彙力を増やしたい場合には、好きな言葉をストックしておくのはお勧めです。

・LingoClipLingoClip - Enjoy learning languages with music):リスニング力向上

これは、英語の歌を聞き取る力を向上させるアプリです。音楽を聴いて、歌詞を聞き取る練習をするというアプリです。これは、聴き取り能力を向上させるだけではなく、英語のカラオケの練習にも役に立ちます。

ちなみに、アメリカ人の前でカラオケを披露する機会があり、クイーンのボヘミアンラプソディを披露したら、なぜか何人からも握手を求められました。ものすごく反応が良かったです。

・OtterOtter|Otterは英語音声の文字起こしアプリです): 英語音声の文字おこしアプリ

これは、話している英語をその場で英語のテキストに直してくれるものです。打ち合わせの内容をその場でテキストに直してくれるので、聴き取れなかった場合にこのアプリで救われることがあります。

また、電話での会話は非常にストレスがたまるのですが、電話している場合もこのアプリを使用すると話している内容をテキストに直してくれるので重宝します。

・ELSA SpeakELSA - Speak English fluently, easily, confidently): 英語発音矯正アプリ

これは、主に発音矯正アプリとして使用しています。昔、一時的に無料版を使用していましたが、制限があって使いたいときに使えないことが多く非常に使い勝手が悪いので、しばらく使っていませんでした。

ただ、最近になって、わたしが英語で電話をしている動画を友達に勝手に撮られ、その動画を自分で見たところ、発音の下手糞ぶりに驚愕し、再度、有料版を購入し使い始めました。

ELSAを使っている友達の英語の発音を久しぶりに聞いたところ、確かにきれいになっていたので効果はあると思います。発音に専念したい場合には、ELSA Speak Proライフタイムメンバー(永久会員)という買い切り版があります。それ以外にもAIと英会話にもできるPremiumというバージョンもあるようです。

・Google翻訳Google 翻訳):翻訳ツール

ここ数年で、翻訳ソフトの能力は飛躍的に向上しました。外で使いやすいのはGoogle翻訳でしょう。

とくに、このアプリはカメラを使用した翻訳がついており、印刷物であってもカメラを向けることによってその場で翻訳してくれます。手許配布資料の内容をざっくり把握するのに役に立ちます。また、レストランでのメニューを見た時や、美術館で展示物の説明を見る際もとても役に立ちます。

・DeepLDeepL翻訳:高精度な翻訳ツール):高精度な翻訳ツール

Google翻訳は、訳の精度に若干難があるので、テキストの翻訳など正確な結果が必要な場合はDeepLの方が向いています。

・Chat GPTIntroducing ChatGPT (openai.com)):AIチャットサービス

これは2023年に登場以来、重宝しています。英語を実際に使用する場面でも使えます。

ChatGPTは、「コマンドプロンプト」といわれる指示をいかにして適切に与えるかが鍵になります。

例えば、「●●というビジネスの場にふさわしいフォーマルな文章に直してください。」と入力すれば、より洗練された英語の文章に直してくれます。

さらに、簡単な議事録を作成したりすることができるので、使い方を工夫すると非常に便利になります。

■英語学習アプリ活用のヒント

さらに、上記の英語学習アプリを組み合わせた使い方の一例を紹介します。

まず、①Otterで英語を聞き取り②Deep Lでそれを翻訳する。さらに、③それをChat GPTでまとめるということもできます。

英語を勉強せずとも、この手法を使えば、相手が何を言わんとしているのかをだいたい把握することができます。

ただ、これらのアプリに慣れすぎてしまうと、スマホを持ち込めない場面(工場見学など)では、手の打ちようがなくなってしまうという難点があります。

■まとめ

以上、お話したことのほかにも意識しているのは、日本語で話した時に、これは英語ではどのように表現すればいいのかと考えたりする、などでしょうか。またそもそもの単語力はないと新聞や現地の情報が理解できないため、TOEICの単語帳などはある程度、覚えていることも前提となります

わたしの場合はアメリカ在住中に英語を身につけることをかなり意識し、集中して勉強できたからこそ可能だった部分もあります。しかし学べば学ぶほど、現地の方でなくては理解できないイディオムや、比喩表現など、英語の難しさを感じる部分もありました。

しかし英語を身につけることで日本に帰ってきてからの仕事に大きな広がりができたことは事実です。わたしのアドバイスが皆様の勉強の参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

野村 宜弘(のむら よしひろ)
公認会計士・公認不正検査士

神戸大卒。監査法人入所1年目の時に、数十億円の架空増資を監査の過程で発見したことにより、不正調査の領域に興味を持つ。

しかしながら、監査による不正発見手法に限界を感じるのと時を同じくして、行政が行う犯則調査に興味を持ち、証券取引等監視委員会に出向したという異色の経歴を持つ。

当初、2年の出向予定であったが、結局5年もの期間にわたり在籍することとなった。
監視委員会に在籍する会計士は基本的には有価証券報告書の分析に終始することが多いが、粉飾だけではなく、株価操縦、インサイダー取引といった他の経済犯罪事件の現場も担当。

証券取引等監視委員会では、強烈な個性を有する国税庁資料調査課出身の上司から嫌疑者の「割り方」の極意を習得した。

証券取引等監視委員会の出向から監査法人に復帰後、不正調査専門の会計士として独立する。
現在、個人的に興味がある分野は、「会計」と「法律」の両方が問題となる領域。
さらに、最近は英語の勉強も再開している。

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