「独立系M&Aコンサルティング」の業務内容、仕事の魅力とは?

2021年12月15日 野村 昌弘
目次
■M&Aコンサルティングの業務内容
大手監査法人での監査を9年、2社の独立系会計コンサルティング会社を経て、現在は自身で会計コンサルティング会社を経営しています。
現在の会計コンサルティング会社、以前に勤めていた独立系会計コンサルティング会社でも、①会計コンサルティング、②経営コンサルティング、③M&A・組織再編コンサルティングを業務メニューとしていました。
会計コンサルティングの業務内容、仕事の魅力については、『「独立系会計コンサルティング」の業務内容、仕事の魅力とは?』( https://career.jusnet.co.jp/cpa/cpa_t_ct_01.php )の記事をご覧ください。
今回は、③M&A・組織再編コンサルティングのうち、M&Aコンサルティングの業務内容、仕事の魅力について、お話します。
M&Aコンサルティングとして、まず思い浮かべるのは売主又は買主の代理人となって相手方の代理人と交渉する ファイナンシャルアドバイザー(FA) かと思います。ファイナンシャルアドバイザーは、株式売買等が成立すれば多額の報酬を受け取ることができますが、1つの案件を成功させるためには非常に多くの時間を要します。また、案件が不成立となる可能性も十分にあり得ます。
そのため、小規模な会計コンサルティングや経営コンサルティングを行っている会社では、ファイナンシャルアドバイザーの案件を受ける余裕がありません。弊社では、主に M&Aの際の財務調査(デューディリジェンス)や株価算定 を中心に、業務を行っています。
■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)
M&Aの際の財務調査(デューディリジェンス)は、ほとんどは買主サイドについて行うことが多いですが、 その会社の株式や事業を取得するに際して、会計・財務・税務上大きな問題がないかどうか確認する調査 となります。会計・財務・税務に関連する資料を確認したり、経理担当者にヒアリングを行ったりして、問題点を洗い出します。この作業はある意味、会計監査に近い作業となります。そのため、会計監査をある程度(およそ5年以上)経験した公認会計士であれば、非常にとっつきやすい仕事だと思います。
ただし、買主が株式や事業を取得した後に大問題が発生して大きな損害を被ることがないように行う調査ですので、健全な懐疑心をもって作業し、 俯瞰的な目線で問題点がないかどうか見ていく必要がある点で、幅広い会計知識、洞察力を持っている方が向いている と思います。ある意味では、探偵にも似ている仕事かもしれません。
また、株価算定は、買主がその会社の株式や事業を取得するに際していくらで買ったら妥当か、ストック・オプションを会社が発行する際に自社の株価がいくらか、組織内再編を行う際の合併比率や交換比率の算定等が挙げられます。
株価算定には、理論がありますので、理論を理解しておく必要があります。そのため、会計監査では経験のない世界ですので、 新たに勉強が必要 です。理論を学んだ後に、多くの経験を積むことによって身につく仕事だと思います。理論をしっかり理解していること、理論から計算根拠を説明できることができる方が向いていると思います。
■M&Aコンサルのやりがいやメリットは?
財務調査や株価算定は、最初はまず1件ということで依頼されますが、その1件でクライアントが信頼をしてくれれば、頻繁に会社や事業を取得する会社であれば、継続的に依頼していただけます。
わたしも今までにいろいろな業種の財務調査・株価算定をやらせていただきましたが、特にゴルフ場や飲食業の取得では、数多くの案件を経験させていただきました。それには、財務調査を行って取得に至る案件もあれば、我々からの報告によって取得は止めておこうということになり不成立となる案件もあります。
不成立となってしまった案件について、一生懸命成立に向けて努力されていたファイナンシャルアドバイザーには本当に申し訳ないですが、取得した後に大きな損害が及ばないためには取得はおすすめしないとアドバイスすることも必要不可欠だと考えます。
的確に財務調査の結果や株価算定の結果をクライアントにお伝えし、クライアントが適切な判断をしていただくことが重要であり、それを継続すること が、長年クライアントから仕事をいただける信頼感につながると考えます。
財務調査の案件では現場にも伺うことが多く、クライアントの担当者と一緒に地方に出張することも多いため、多くの時間を共有し仲良くなります。クライアントの担当者が他の会社に移った後も財務調査や株価算定を依頼していただいたり、ファイナンシャルアドバイザーの方から別の財務調査や株価算定を依頼していただいたりした時には、本当に有難くやりがいを感じます。
■M&Aコンサルの採用ニーズ
コロナ禍等で一時的に案件が減るときはあると思いますが、会社や事業の売買や組織再編は頻繁に行われており、中長期的に見れば案件が少なくなるということはないと思われます。そのため、 M&Aコンサルのニーズはまだまだ十分にあり、採用ニーズもある と考えます。経験がものをいう業務ですので、業務をしっかり身につけるのであれば、コンサルティング会社で専門部署に入って経験を積むということは非常によいと思います。
なお、弊社では、「「独立系会計コンサルティング」の業務内容、仕事の魅力とは?」で記載したとおり、従業員はおりません。
株価算定であれば人手は必要なく、我々のキャパシティでできますが、財務調査の場合は人手が必要になります。そのため、案件を受注すると、知り合いの公認会計士や税理士に声をかけて、案件ベースで業務委託の形で手伝っていただいています。監査経験や財務調査の経験のある公認会計士・税理士と一緒に仕事をしていますので、業務の質が落ちることなくクライアントに業務提供できるようにしています。
■M&Aコンサルの年収はどのくらい?
財務調査ですと監査経験がかなり活きて業務もやりやすいので、年収も大手監査法人に在籍時とほぼ横ばい位のスタートができるかもしれませんが、株価算定で業務経験がない場合には、年収が下がることも考えられると思います。
ただし、業務経験が多くなりクライアントからの信頼を得てくれば、年収は上がってくるのではないかと思います。
■M&Aコンサルの経験を活かしたその後のキャリアパスは?
今まで述べてきたように経験値が活きる業務ですので、専門病院の医者と同じように、そのまま その業務分野で経験を活かしていく というのが一つだと思います。あるいは、ファイナンシャルアドバイザーに転じるというのも一つかもしれません。
その他、会社や事業を積極的に取得している会社の担当部署(例えば、経営企画部等)に入社して、今までの経験を生かして働くというのも一つだと思います。多様なキャリアパスが考えられます。
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- 執筆者プロフィール
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野村 昌弘(のむら まさひろ)
公認会計士1997年 立教大学法学部卒業。あずさ監査法人(現有限責任あずさ監査法人)等を経て、現在、アヴァンセコンサルティング株式会社代表取締役。上場企業等の会計相談、決算コンサルティング業務のほか、M&A・事業再生に関する財務デューデリジェンス業務等に従事。
税効果会計基礎講座(個別財務諸表編、連結財務諸表編)、連結CF計算書の作成実務、グループ経営入門、会計税務の基礎セミナー等講師経験多数。
株式会社ジオコード(東証スタンダード上場)社外監査役
株式会社RBGパートナーズ社外監査役
株式会社RMDパートナーズ社外監査役 - 著書
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「グループ経営をはじめよう~非上場会社のための持株会社活用法~(第4版)」(税務経理協会、共著)
月刊税務QA(税務研究会)他