「資産税コンサル」の業務内容、仕事の魅力は?

2023年4月19日 金井 義家
目次
■必要とされる志向性
まず何をおいても「きめ細かい税務知識」が必要です。
ご存知のとおり「公認会計士・税理士」は「試験組税理士」のように税理士試験で厳しい税法三科目をクリアしているわけでもなく、「国税OB税理士」のように何十年もの税務調査のキャリアがあるわけでもありません。
スタートの時点で、我々「公認会計士・税理士」は彼らに比べて 税務知識で圧倒的に劣っているというのが現実 です。
まして資産税コンサルとなると「相続税法」だけでなく「法人税法」や「所得税法」、「消費税法」、「登録免許税法」や「地方税法」などまで、幅広く横断的に理解していないと本来はできません。
これまで公認会計士試験や監査法人でそれなりに勉強での苦労もしてきたとは思いますが、ここから さらに税法を0からやり直すという気持ちがある人が向いている と思います。
■「資産税コンサル」の業務内容
(1)相続税の申告書作成
まずは 「相続税の申告書作成」 というのが基本になると思います。
この仕事のためには「相続税法」や「財産評価基本通達」「租税特別措置法」などの理解が当然に必要ですので、一から相当に勉強しなくてはならないと思います。単純作業と思われがちですが、税理士の知識差によって相続税額は何千万円、場合によっては何億円も異なることが普通にありますので、とても責任の重い仕事です。
(2)相続税の相談
顧客から生前に相続税の相談をされることもあり、その際には相続税の試算をすることになります。
特に 「小規模宅地等の特例」 などの 「租税特別措置法の特例の適用可否」 は重要になります。相続全般に関する知識を身につけることで、顧客にあった具体的なアドバイスをすることも相談では必要となってきます。
例えば相続税の納税のための現預金が不足している場合、そのお金をどのように用意するかなども、非常に重要になってきます。
(3)贈与税の申告書作成・相談
贈与税の申告書作成・相談も仕事の1つです。
贈与税の申告には 「相続時精算課税」 や 「住宅取得等資金贈与の特例」 など、いくつかの選択肢があることもありますので、それについての顧客の相談に応じることも重要です。
また顧客が複雑な 「事業承継税制」 などを検討している場合などは、相当な知識が必要になるでしょう。
(4)所得税の譲渡所得の申告書作成・相談
一般的に、 土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる 所得税の 「譲渡所得」の申告書作成・相談 もあります。
特に所得税の譲渡所得には実に読みにくい「租税特別措置法」が膨大な数存在していますから、これを理解するのが非常に大変です。
また最近できた「国外転出時課税」などもかなり複雑ですから、この相談も重要な仕事になるでしょう。さらに過去の税制改正が税額に大きく影響することもあるなど、実際は相続税以上に緊張感の伴う仕事になります。
(5)わたしの場合
「公認会計士・税理士」が資産税コンサルタントをするにあたっては、 “会計”と“税務”の感覚のズレを埋めることが重要 だと思います。
会計には流れがあり「一を聞いて十を知る」ところがあると思います。これに対して税務は「十聞かないと十知ることはできない」ところが特徴です。
税法は国策などがからみますから、特に「税率」や「期間」などは、とにかく1つ1つ確認するしかないのです 。「公認会計士・税理士」は流れというか、直感のようなもので仕事をするクセがあるので、そこの修正が必要だと思います。
■「資産税コンサル」の業務のやりがいやメリットは?
資産税には多くの課題や問題が伴います。例えば、相続財産の評価や相続人の権利関係、遺産分割などです。このような問題に対して適切なアドバイスを提供し、クライアントの問題解決にうまく貢献できたときに一番のやりがいを感じます。
個別の事例について書くのは憚れますが、やはり本当に行き詰っている人を窮地から救い出した時の充実感は大きいと思います。心の底からの感謝の気持ちをクライアントから言っていただいたときは、本当にやっていてよかったと思う瞬間です。
■「税理士法人(資産税系)」の採用ニーズ
(1)求められるスキル、人材
わたしも何度も転職していますが、ここは時代背景や運が一番大きいと思います。
今は基本的にどこも人手不足なので、税務知識の少ない会計士(税理士)だったとしても、やる気があればかなりの確率で採用されるように思えます。
わたしもタクトコンサルティングに入社できたのは、たまたまその時の景気が良かったというだけで特にスキルや能力があったということではないと思います。いずれ景気が悪くなれば再び門戸は閉ざされてしまう可能性もあるので、動くなら今のうちかと思います。
(2)採用されるポイント
基本的に「公認会計士・税理士」は相続税を含めた税務知識はないというのは共通認識なので、それでも敢えて募集している事務所であれば、そのことは全くハンデにはならないと思います。
強いて言うなら問題になりそうなのは年齢くらい でしょうか。40歳を超えると難しい部分もあると思いますが、今は人手不足なので頑張って探せば採用されることは不可能ではないと思います。
(3)転職で気を付けるポイントや難易度
繰り返しですが「税法」の勉強が大変です。
最初から 「試験組税理士」などとは違い、大きなハンデがある と思ってください。
ただそのような前提で採用する側も採用していますから、税法の知識不足でクビになったりはしません。事務所内での肩身は多少狭いかもしれませんが、周囲の雑音は気にせずマイペースでやれば良いと思います。
■「税理士法人(資産税系)」の年収はどのくらい?
これは事務所によってまるでバラバラだと思います。最近の情報が全くありませんが、最初から600万円だと高い方という印象はあります。
■「税理士法人(資産税系)」の経験を活かしたその後とキャリアパスは?
今は人手不足なので、独立しても勤務をし続けても、どちらでもやっていけると思います。しかし 社会には定期的に大規模な不況、つまりリセッションがやってきます。そのような時期が来たらどう乗り越えるかということを常に意識してキャリアパスを考えれば良い のではないでしょうか。
わたし自身も独立してからは一度もリセッションを経験していませんから、これからが本当に自分が試される時だと思っています。
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- 執筆者プロフィール
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金井 義家(かない よしいえ)
公認会計士・税理士・中小企業診断士1973年 東京都生まれ
1996年 早稲田大学政治経済学部卒業、株式会社北海道拓殖銀行入社
1998年 東京都庁入庁
2003年 新日本有限責任監査法人入社、大手企業の監査経験を積む
2009年 税理士法人タクトコンサルティング入社、税理士として資産税に係る幅広い実務をこなす
2014年 資産税のプロフェッショナルとして独立開業相続・資産承継を専門として、コンサルティング業務を行う。銀行や地方自治体、大手監査法人、大手税理士法人での実務経験で得たスキルを基にした、企業経営者や不動産オーナー等の資産家に対する中長期的な資産計画の提案を得意とする。公認会計士・税理士等の専門家向けの税務実務の教育指導にも力を入れており、講師として依頼される。年間30回を超えるセミナー・講演会は、解説がわかり易いと好評を得ている。
公益社団法人全国野球振興会(プロ野球OBクラブ)監事・日本公認会計士協会東京会研修委員会等役職多数。著書「実践 資産承継の勘所~顧客の資産タイプ別アプローチ法~」(株式会社きんざい)他執筆多数。
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