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公認会計士のキャリア|転職先17種類を徹底解説!【業務内容・やりがい・独立可能性・年収 比較】

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公認会計士 齊藤健太郎&ジャスネットキャリア編集部

公認会計士の資格を活かせる転職先は多岐にわたります。本記事では、ジャスネット編集部が公認会計士とともに選別し、転職先の17種類を徹底解説します。

転職先17種類について、それぞれの 業務内容・やりがい・独立可能性・年収 を比較しそれぞれを詳しく解説します。

目次

1. 公認会計士の転職先は全17種ある【比較表】

2. 【年齢別】公認会計士におすすめの転職先

3. 監査法人の非常勤として働く‐非常勤職員の日常

4. 公認会計士の転職の失敗例

5. よくある質問(FAQ)

1. 公認会計士の転職先は全17種ある【比較表】

【一覧表】公認会計士の転職先と主要項目
転職先 業務内容 やりがい 独立可能性 年収(目安)
① 経理 企業の財務・会計管理 経営の中枢を担える。経理スキルを身に着けられる。 中位 600万~1,200万円
② 内部監査 企業のリスク管理・コンプライアンス 企業価値向上に貢献。経営の中枢を知ることができる。 中位 700万~1,300万円
③ 経営企画 事業戦略の立案・M&A対応 経営層と密接に関わる。買収やIRなど会社の事業戦略に関与することができる。 中位 800万~1,500万円
④ ベンチャーCFO 資金調達・財務戦略策定 経営者視点での経験が得られる。上場準備作業の中心として活躍できる。 高い 800万~2,000万円
⑤ 大手監査法人(監査) 監査業務全般 監査を通じて企業の財務諸表の社会的信頼性確保に貢献する。 中位 500万~1,500万円
⑥ 大手監査法人(アドバイザリー) M&A・IPO支援など 高度な専門スキルを磨くことができる。 低い 600万~1,800万円
⑦ 中小監査法人 監査・税務・コンサル 監査を通じて幅広い監査業務経験を早く積うことができる。 高い 500万~1,400万円
⑧ FAS 財務アドバイザリー(M&A等) 高額報酬・専門性の向上。 中位 1,000万~2,500万円
⑨ 戦略コンサル 企業戦略立案 高額報酬・幅広い業界経験の知識、ノウハウの獲得 低い 1,000万~3,000万円
⑩ 会計事務所 会計・税務顧問 中小企業の経営者の会計・税務・人事面の悩みに幅広く対応して支える 高い 600万~1,200万円
⑪ 税理士法人 税務相談・申告業務 幅広く高度な税務知識の獲得の機会がある 高い 700万~1,500万円
⑫ 投資銀行 M&A・資金調達業務 高額報酬・金融の最前線でベンチャービジネスなどに積極投資 低い 1,500万~5,000万円
⑬ 公開引受・引受審査(証券会社) IPO支援・審査業務 企業成長に貢献、公正な証券市場の形成に関与 中位 800万~1,800万円
⑭ 証券取引所 上場審査・開示支援 公正な市場運営に関与 低い 500万~1,500万円
⑮ PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド) 企業投資・バリューアップ 投資家目線の経験が得られる 低い 1,500万~5,000万円
⑯ 公務員(会計監査・財務関連) 監査・財務・政策立案 地方公共団体の財務諸表作成、公会計の監査対応によるノウハウ獲得、社会貢献度が高い 中位 600万~1,200万円
⑰ 大学教員・専門学校講師 会計・財務の教育 簿記、原価計算、財務諸表論、監査論などを通じて後進育成に携われる 低い 500万~1,200万円

上記のうち公認会計士の資格がなければできない仕事は、監査法人に限定されますが公認会計士の資格を有することでその知識が活かせるもの、スキルを磨く機会を得られるものを列挙しています。


① 経理

業務内容

企業の財務・会計業務全般を担当し、経理仕訳業務から、月次決算の取りまとめ、年次決算、予算管理、資金管理、税務申告などを行います。上場企業では、連結決算や開示業務も重要な業務です。

やりがい

企業の経営状態を数字で把握し、意思決定に貢献できます。公認会計士の知識を活かして、財務戦略を策定できるのが魅力です。

また、監査法人からキャリアをスタートさせる公認会計士にとっては、経理業務を行う機会がないのでこうした機会を得ることができるのは貴重な経験です。実際の経験者としていえるのは、すぐに適応できるかと思いますが、やはり監査だけしか経験がないのと、経理業務を経験しているのとでは、見方、考え方、人によっては自信が異なってくることも確かににあるかと思います。

独立可能性

公認会計士としてのキャリアの組み合わせ次第で十分に独立は可能です。組織内会計士として見たときにはCFOや経営層へのキャリアアップの道はかなり開けるかと思います。

年収

600万~1,200万円


② 内部監査

業務内容

企業のリスク管理やコンプライアンス体制をチェックし、業務改善を提案します。J-SOX法対応も重要な業務です。

やりがい

多くの場合、社長直轄の組織構成員として活動することになります。企業のガバナンス強化に貢献でき、経営陣と関わる機会も多いのが特徴です。企業全般を見渡せるので、ある意味、社長の次に組織のことを知りうる立場になります。

会社によっては経営幹部への登竜門として部署を置いている会社もあるほど。こうした組織に身を置くことができれば、やりがいは大きなものになると思います。

独立可能性

公認会計士の場合、これまでのキャリアとの組み合わせによって独立は可能です。組織内会計士としてみると大手企業の管理職としてキャリアアップが可能です。

年収

700万~1,300万円


③ 経営企画

業務内容

事業戦略の立案、M&A対応、経営データ分析を行い、企業の成長戦略を推進します。また、企業によっては予算編成や企業のIR活動を一手にになうこともあります。

やりがい

経営者に近い立場で仕事ができるため、ダイナミックな業務を経験できます。

独立可能性

独立は難しいですが、CFOや起業家としての道も考えられます。

年収

800万~1,500万円


④ ベンチャーCFO

業務内容

資金調達、財務戦略の策定、投資家対応などを担当し、スタートアップの成長を支えます。上場準備作業にあたっては先頭に立って主幹事証券会社や監査法人と折衝を重ねながら会社を上場に導く役割を担います。

やりがい

経営者としての視点を養え、成功すればストックオプションによる高収入も可能です。企業の成長と自身の成長や社会的地位の向上を体感することができる可能性があります。

独立可能性

スタートアップの起業・支援を通じて独立可能です。

年収

800万~2,000万円


⑤ 大手監査法人(監査部門)

業務内容

上場企業や大企業の財務諸表の監査を行い、企業が作成した財務諸表の信頼性を保証します。企業会計基準や法令に基づき、企業の財務情報を監査します。公認会計士試験を合格するとほとんどの合格者は大手監査法人に勤務することになります。

やりがい

証券市場の社会的信頼性の向上に貢献でき、監査を通じて幅広い業界の企業と関わる機会があります。国際監査基準(IFRS)やUS GAAPを学べる点も魅力です。

独立可能性

独立を行う場合は、まずは監査法人の非常勤職員として働くことが多いです。このため監査法人で一定のスキルを磨き独立の準備をすることができます。

また内部で昇進を重ねると監査法人のパートナーになり、企業の社外監査役、内部監査部門への転職などの選択肢もあります。

年収

500万~1,500万円


⑥ 大手監査法人(アドバイザリー部門)

業務内容

M&A、IPO支援、事業再生、リスクマネジメント、デューデリジェンス(DD)などのアドバイザリー業務を担当します。また監査法人系の税理士法人でのアドバイザリー業務などもあります。

やりがい

企業の重要な経営判断の局面に関わりサービスを提供するため、専門性が高く、経営層とのやり取りが多いのが特徴です。また、大手監査法人の顧客は日本を代表するような大企業を相手にすることが多く、社会的な影響力も大きいためビックプロジェクトに関与することができます。

またこうしたアドバイザリー業務で磨いたスキルは、大手監査法人がかかわらない中小規模の案件において発揮することができます。

独立可能性

独立するための経験値を積むことができるため、コンサルタントとして磨いたスキルを活かし、独立系ファームを立ち上げたり、個人で事業を展開するケースもあります。

年収

600万~1,800万円


⑦ 中小監査法人

業務内容

上場企業だけでなく、中小企業や非営利法人の監査業務を担当します。監査にあたって組成される監査チームの構成人数が少ないので、大手監査法人と比べて幅広い業務を経験できます。

やりがい

監査業務については、幅広く裁量が任され、多岐にわたる業務に関与できるため、実務経験を積みやすく、成長スピードを速めていくことができる環境です。

独立可能性

一通りも監査スキルを身に着けることができれば、独立して監査法人を設立することも可能です。

年収

500万~1,400万円


⑧ FAS(財務アドバイザリー)

業務内容

M&A、企業価値評価(バリュエーション)、財務デューデリジェンス(DD)、事業再生などの専門業務を提供します。

やりがい

金融・財務の専門家として、企業の成長や再生に貢献できることが魅力です。

独立可能性

FAS経験を活かして、独立したり、会計士同士で複数人でコンサルティング会社を設立するケースもあります。

年収

1,000万~2,500万円


⑨ 戦略コンサル

業務内容

企業の成長戦略、M&A戦略、新規事業開発、経営改革などのコンサルティングを行います。

やりがい

多くの業界の企業と関わることができ、業界への深い知識の得たうえで会社の成長ストーリーを立案することをサポートするので論理的思考力と分析力が磨かれます。大企業のグローバルな案件も多く、成長機会が豊富です。

独立可能性

大企業を顧客とすることが多く、中小企業には戦略コンサルを抱える資金力もニーズもないため独立可能性は低いですが、独立してコンサルティングファームを設立する人もいます。

年収

1,000万~3,000万円


⑩ 会計事務所

業務内容

法人・個人の記帳代行、決算書作成、税務申告、経営アドバイスなどのサービスを提供します。

やりがい

中小企業の財務をサポートし、クライアントと密接な関係を築くことができます。中小企業の経営者の会計・税務・人事面の悩みに幅広く対応して支えることで中小企業の縁の下の力持ちとしての役割をこなすことになります。

独立可能性

中小企業のサポートを幅広く行うことでノウハウが蓄積され、また中小企業の経営者の信頼を獲得することで人脈が広がり独立も円滑に行うことできます。このため独立可能性は高く、自分の会計事務所を開業することが可能です。

年収

600万~1,200万円


⑪ 税理士法人

業務内容

税務申告、税務コンサルティング、国際税務、相続税対策などを提供します。

やりがい

幅広く税務に関する専門知識を活かし、企業や個人の税務最適化を支援できます。

独立可能性

専門性が高く、かつ規模によりますが税務に関するスキルを幅広く突き詰めていけるので、自身の専門を定めて極めていけば独立開業が可能です。

年収

700万~1,500万円


⑫ 投資銀行

業務内容

M&Aアドバイザリー、資金調達、IPO支援、企業価値評価などを担当します。企業がビジネスを拡大するにあたって必要な資金調達をサポートする業務になります。

やりがい

高額報酬の可能性もあり、企業が有価証券や債券を発行することで成長していくことを資金面で支援することができ、大規模な案件に携われる点が魅力です。

独立可能性

低いですが、M&Aアドバイザリー会社を設立するケースもあります。

年収

1,500万~5,000万円


⑬ 公開引受・引受審査(証券会社)

業務内容

IPOを行いたい企業の上場支援コンサルティングと上場時の資金調達のサポートを行う公開引受業務と会社が上場するにあたって証券取引所に上場企業として適格か否かを判断する推薦状を出すに値するか、株式を引受けて売買することが可能かを判断する引受審査業務があります。

やりがい

上場を目指す企業の事業内容、事業計画にコミットして会社をサポートすることができるので、企業の成長に関与することができ、また自身がサポートした企業を上場を通じてより羽ばたいていくことを見ることができ、日本の資本市場の発展に貢献できます。

独立可能性

公認会計士のキャリアとの組み合わせによるかと思います。会計監査の実施や組織内会計士としてCFO業務の経験があると、IPOコンサルタントとして独立することが可能です。

年収

800万~1,800万円


⑭ 証券取引所

業務内容

証券取引所に属し、上場審査、開示支援、市場監視などを担当し、公正な証券市場の運営を支えます。

やりがい

日本の証券市場を活性化、市場の品質の維持に貢献することで、日本経済の根幹を担う仕事であり、社会的意義が大きいです。新卒でなければ仕事に携わることは難しいですが、福利厚生は充実しております。

独立可能性

基本的に証券取引所に勤めることになるため、低いですが、上場企業の開示サポート、上場支援業務といった金融関連のコンサルタントとして独立することも可能です。

年収

800万~1,500万円


⑮ PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)

業務内容

未上場企業への投資、経営改善、企業価値向上を行い、最終的に売却による利益を狙います。「プライベート・エクイティ・ファンド」の略称。後継者不在の企業や事業再生を必要とする企業を主な投資対象として、企業価値向上を図っていきます。

やりがい

企業にとって必要な経営改善策の提供や企業価値向上のための様々な施策を行っていくことを通じて、投資家としての視点が身につき、企業価値向上に直接関与できます。

独立可能性

低いですが、独立して投資ファンドを設立するケースもあります。

年収

1,500万~5,000万円


⑯ 公務員(会計監査・財務関連)

業務内容

国や自治体の財務管理、会計監査、政策立案などを行います。

やりがい

会計インフラが整っていない地方自治体や地方自治体の出資先の会計インフラの整備を行い、公会計監査を受けることができる環境を構築していきます。安定した環境で、地方自治体の会計インフラの整備を通じて社会貢献ができることが魅力です。

独立可能性

この業務単体での独立可能性は低いですが、公会計の監査を受ける側に立つので、公会計監査に注力する監査法人に重宝されます。退職後に公認会計士として独立する道もありますが、ほとんどが、学校法人監査などを主とするような監査法人に属することになります。

年収

600万~1,200万円


⑰ 大学教員・専門学校講師

業務内容

会計・財務に関する教育・研究を行い、後進の育成に携わります。

やりがい

大学では簿記や財務諸表論の口座を提供し、専門学校では公認会計士を目指す学生を指導し、知識を次世代に伝えることができます。自身が身に着けた専門知識を後進の指導に充てることができるのが魅力的になります。

独立可能性

専門学校では専任で行っている人は少なく、何かしらの実務に従事している人がほとんどです。そのため、講師を行ったからと言って会計士としての独立可能性は高くありません。

年収

500万~1,200万円

まとめ

公認会計士の転職先は 「企業内(経理・経営企画)」「監査法人・FAS」「金融(投資銀行・PEファンド)」「士業(会計事務所・税理士法人)」「教育・公務員」 など多岐にわたります。ただ、最も公認会計士にとっての強みは、会計及び監査の専門家としての能力を発揮していくことです。

例外もありますが、公認会計士は自身の実務経験を重ねながらキャリアチェンジを繰り返していく、自分にしか積み上げらないキャリアを築いていくことができます。そのためキャリアの方向性を考えながら、どの道を選ぶのが最適かを判断しましょう。

2. 【年齢別】公認会計士におすすめの転職先

公認会計士資格を転職に活かすためには年齢相応の転職を行うことも必要です。そこで一応の目安として年齢別の転職先をまとめてみました。

20代の公認会計士の転職先

20代の一般的な公認会計士は、監査法人での経験を3年から4年程度積んでいると思います。こうした公認会計士はキャリアの方向性を考え始める時期です。大手監査法人の監査部門やアドバイザリー部門、またはFAS(財務アドバイザリー)、戦略コンサルティングなどの専門性が高い分野に進むケースが多いです。

また、ベンチャー企業のCFO候補や経理・財務部門で実務経験を積む選択肢もあります。

20代での転職は、将来のキャリアの土台を築くために慎重に選ぶことが重要です。未経験の分野にチャレンジしやすい時期でもあり、コンサルティング業界や投資銀行などのハードワークな環境に挑戦する公認会計士も少なくありません。

30代の公認会計士の転職先

30代になると、監査法人での職位はマネージャークラスになっていると思います。

実はマネージャークラスを超えると一般事業会社におけるキャリアと監査法人内のキャリアに差が開いてきます。

つまり一般事業会社に転職するには、未経験な分野で実務的な経験値を積むという点では、年収に開きが出てくるので監査法人内でキャリアを追求するか、事業会社での実務経験を積み幅を広げていくかで人生の進路が分かれるという最後の年代なのかもしれません。

FASやM&Aアドバイザリー、投資銀行、PEファンドなどの金融業界への転職は、30代の公認会計士にとって魅力的な選択肢です。また、企業の経理・財務部門や経営企画部門への転職も増え、特にCFOや管理職候補としての採用が期待されます。

しかしながら、実務経験がないことから転職に苦戦することもあるというのも事実。このため監査法人での経験年数を7,8年積んでから転職するというのも、監査以外の他の分野での自身の価値を高める機会を逃しているのではないかと一度考えてみる必要があります。

そのため、独立を視野に入れる人も多くなり、会計事務所や税理士法人の開業、あるいはIPO準備企業の支援などを行うケースもあります。

30代はキャリアの方向性を固める時期であり、より高収入を狙った転職を考える人も多くなりますが、「監査法人内のキャリア≠世間の評価」という事実があることを念頭にキャリアを見つめることが必要です。

40代の公認会計士の転職先

40代の公認会計士は、マネジメント層としての経験が重視されるとされ、企業のCFOや経営層へのステップアップを目指すことが多いです。

監査法人内のみの経験値ですと一般事業会社の人事採用は、会計士の能力を測りかねる場面が多々見受けられるようになります。また、マネージャーまでになると大手監査法人のパートナー職を目指すケースが一般的となります。

監査法人から事業会社への転職では、財務戦略やM&Aを担うポジションが多く、特に上場企業やIPO準備企業での役割が重要になります。しかしながら、世間の評価が、公認会計士の監査法人内のキャリアが通用するかという点では30代の時と同じジレンマに陥るかと思います。

公認会計士としての知見を活かし、社外取締役や監査役としてのキャリアを築くことも選択肢として見えてくる年代でもあります。

独立志向の強い人は、会計事務所やコンサルティングファームを設立することも視野に入れます。また、経験を活かして大学教員や専門学校の講師として教育分野に進む人もいます。40代の転職は即戦力としての実績が求められるため、専門性を磨き、自身の強みを活かせる業界やポジションを選ぶことが重要です。

50代の公認会計士の転職先

50代になると、経営層としての経験を活かした転職が中心になります。

すでに監査法人を退所して一般事業会社に転職済の公認会計士だと、大手企業のCFOや役員クラスのポジションを目指す人が多く、特に財務戦略やガバナンスに関する知識や経験が求められます。

これまでの経験を活かして会計事務所やコンサルティング会社の経営にシフトする人も増えます。その際に、大手監査法人のパートナーが非常勤職員として中小監査法人に入り、自身の事務所と兼務しながら運営しつつ、その後中小監査法人のパートナーになる人もいます。

さらに公認会計士としての知見を活かし、社外取締役や監査役としてのキャリアを築くことも可能です。

企業の顧問やアドバイザーとして活動するケースも多く、監査法人を退職後にフリーランスで働く人もいます。50代の転職では、給与よりも働き方やライフスタイルの最適化を考える傾向が強くなります。

3. 監査法人の非常勤として働く‐非常勤職員の日常

監査法人で勤務しながら転職を考えている公認会計士の中には、監査非常勤として働く選択肢を検討する人も多いでしょう。

非常勤の働き方は、柔軟な勤務形態を実現しながら収入を得られるメリットがありますが、一方で注意すべき点もあります。本章では、監査非常勤の仕事内容や働く人の特徴、メリット・デメリット、仕事の探し方などを詳しく解説します。

(1)監査法人の非常勤職員の日常

監査非常勤の主な業務は、監査チームの一員として決算書類のチェックや内部統制評価を行うことです。具体的には、以下のような業務を担当することが多いです。

監査調書の作成・確認:クライアントの財務諸表や監査証拠をチェックし、監査調書を作成
リスク評価のサポート:内部統制の評価や不正リスクの分析などを補助
現場監査の補助:実際にクライアント企業へ訪問し、監査手続を実施
監査手続の進行管理:監査法人のマネージャーやパートナーと連携し、作業スケジュールを調整

監査非常勤の勤務日数は、監査法人やクライアントの決算スケジュールによって異なります。繁忙期(1月~3月)には多くの業務が発生し、フルタイムに近い勤務となることもありますが、それ以外の時期は比較的余裕があるケースが多いです。

(2)監査の非常勤職員は、どのような人が多いのか

監査法人での非常勤職員として働くのは、さまざまなキャリアの公認会計士です。代表的なパターンとして、以下のような人が挙げられます。

独立開業を目指す会計士:自身の会計事務所を開業する準備として、収入を得ながら柔軟な働き方を選択
事業会社への転職を検討中の会計士:転職活動中に収入を維持するために監査非常勤を活用
子育てや介護と両立したい会計士:フルタイム勤務が難しいため、非常勤として働く
定年後に監査業務を続けたいシニア会計士:フルタイム勤務から退きつつも、監査業務を継続
複数の仕事を持つフリーランス会計士:監査業務のほか、税務やコンサルティングなどと組み合わせて活動

監査非常勤は、監査法人の忙しい時期に労働力を補完する役割を担うため、経験がある公認会計士が求められやすいです。

特に、監査法人での勤務経験がある人や、過去に上場企業の監査に関与したことがある人は、採用されやすい傾向にあります。

(3)監査非常勤のメリット

監査非常勤として働くメリットは、主に以下の点が挙げられます。

柔軟な働き方が可能:フルタイム勤務に比べて、自分のライフスタイルに合わせた勤務が可能
監査の経験を維持できる:監査業務に関与し続けることで、専門知識やスキルを維持できる
一定の収入を確保できる:フルタイム勤務よりも労働時間は短いが、時給換算すると比較的高収入
転職活動や独立準備と両立しやすい:フルタイムの職場に比べて、他の活動と並行して働きやすい
繁忙期のみの勤務も可能:監査法人のニーズが高まる時期に限定して働くこともできる

特に、独立準備中の公認会計士にとっては、収入を確保しながらスムーズに開業準備を進められるという点が大きなメリットです。

(4)監査非常勤のデメリット

一方で、監査非常勤には以下のようなデメリットもあります。

繁忙期は多忙になりやすい:1月~3月は仕事が集中し、思ったよりも拘束時間が長くなることがある
案件によっては単調な業務が多い:正社員と比べて、ルーチンワークが多くなりがち
長期的なキャリア形成には向かない:基本的に補助的な立場であり、昇進の機会がない
収入が安定しない:監査法人のニーズに依存するため、業務量が一定ではない
案件によっては短期間で終了する:一つのクライアントの監査が終わると、次の案件まで待機期間が発生することも

非常勤はあくまでも「補助的な働き方」であり、長期的なキャリアの基盤とするには適していません。安定した収入を求める場合や、監査法人での昇進を目指す場合にはデメリットが大きいため、注意が必要です。

(5)監査非常勤を行うにあたっての注意点

監査非常勤を検討する際には、以下の点に注意が必要です。

契約条件を明確にする:報酬体系、勤務時間、業務範囲などを事前に確認
業務内容を把握する:ルーチンワークだけでなく、どのような監査手続を担当するのかチェック
複数の案件を確保する:単一の監査法人だけでなく、複数の法人と契約することで収入を安定させる
長期的なキャリアプランを考える:非常勤を続ける期間や、次のキャリアステップを計画する

特に、非常勤を続けることで正社員の転職が難しくなるケースもあるため、長期的なキャリア設計とバランスを取ることが重要です。

(6)監査非常勤の仕事はどのように探すのか

監査非常勤の仕事を探す方法として、以下のような手段があります。

監査法人の公式採用ページ:監査法人が非常勤職員を募集しているケースがある
転職エージェントを活用する:会計士向けの転職エージェントに登録し、非常勤の案件を紹介してもらう (ジャスネットの登録ファームを入れる)
知人・元同僚の紹介:以前勤務していた監査法人の同僚や先輩を通じて紹介を受ける
公認会計士協会の求人情報:公認会計士協会が提供する求人情報をチェックする

監査法人によっては、元職員や経験者を優先的に採用するケースもあるため、過去の勤務先に直接問い合わせるのも一つの方法です。

(7)まとめ

監査非常勤は、柔軟な働き方ができる一方で、収入の安定性やキャリア形成には課題がある働き方です。自身のライフスタイルやキャリアプランを考慮しながら、最適な選択をすることが重要です。

4. 公認会計士の転職の失敗例

監査法人からの転職は、公認会計士にとってキャリアの大きな転機となります。しかし、転職先の業務内容や職場環境が期待と異なり、転職を「失敗だった」と感じるケースも少なくありません。ここでは、仕事面・待遇面・人事考課・キャリアデザインの4つの観点から、実際に公認会計士が転職に失敗したと感じる事例を紹介します。

(1)仕事面での失敗事例

このケースは転職先での仕事内容が、監査法人時代に想定していたものと異なり、「転職失敗」と感じるケースです。

失敗事例①:業務の幅が狭すぎた

監査法人から事業会社の経理部門へ転職したものの、ルーチンワークが中心で、決算の補助や伝票処理が主な業務だった。監査法人時代にはクライアントの経営全般に関与していたため、単調な業務にやりがいを感じられず、早期に転職を考えるようになった。

失敗事例②:思ったより忙しすぎた

監査法人の繁忙期に比べて、事業会社の経理部門は比較的落ち着いていると考えて転職したが、IPO準備企業のCFOとして採用された結果、予想以上の激務になった。人手不足で役員会への資料作成や投資家対応、資金調達まで任され、精神的にも肉体的にも疲弊してしまった。

失敗事例③:専門性が活かせない

FASや投資銀行などのM&A関連の業務に転職したが、監査法人時代の経験がそのまま活かせず、実務未経験者としてゼロから学ぶ必要があった。新しい環境で成果を出すのに時間がかかり、スキルのミスマッチを感じた。


(2)待遇面での失敗事例

転職後の給与や福利厚生、労働環境などの待遇面で不満を感じ、「失敗した」と後悔するケースです。

失敗事例①:想定よりも年収が下がった

「企業経理はワークライフバランスが良い」と聞き、監査法人から上場企業の経理部門へ転職。しかし、残業が少ない分、年収が大幅に下がり、監査法人時代の半分ほどになってしまった。生活レベルを落とさざるを得ず、転職を後悔した。

失敗事例②:インセンティブ制度が合わなかった

投資銀行に転職し、高額な年収を期待していたが、固定給はそれほど高くなく、ボーナスやインセンティブ次第だった。案件獲得の競争が激しく、実績を上げられなかったため、結果的に年収が思ったほど伸びなかった。

上場準備企業にストックオプションをもらえることを匂わされたので入社したものの、ストックオプションの付与はなかった。そのうちに会社は上場を取りやめることになってしまった。

失敗事例③:福利厚生が充実していなかった

監査法人の福利厚生(資格手当、研修制度、残業代全額支給など)に慣れていたが、転職先のベンチャー企業では退職金制度がなく、健康保険や厚生年金の負担が重かった。また公認会計士資格の維持に対しての補助も行われず自腹では支払うことが必要となった。そのため結果的に、実質的な手取りが減り、待遇面でのギャップに苦しんだ。


(3)人事考課での失敗事例

監査法人では比較的年功序列に近い評価体系だったが、転職先の評価制度に適応できず、昇進が難しくなったケースです。

失敗事例①:評価基準が不透明

監査法人では「年次ごとの昇格」が比較的明確だったが、転職先の事業会社では評価基準が曖昧で、昇進がどのように決まるのか分からなかった。結果的に、期待していた昇進ができず、モチベーションが下がった。

失敗事例②:監査法人の経験が評価されなかった

監査法人での経験を活かせると思い経営企画部に転職したが、監査法人出身者よりも、事業会社での実務経験が豊富な人が優遇されていた。経営層の視点を理解していないと評価されにくく、キャリアアップが難しくなった。

失敗事例③:成果主義に馴染めなかった

外資系コンサルティング会社に転職したものの、監査法人とは異なり、結果が全ての世界だった。上司や同僚との競争が激しく、数字で結果を出さなければ評価されず、精神的に追い詰められてしまった。


(4)キャリアデザインの面での失敗事例

長期的なキャリアプランを考えずに転職し、思い描いた未来が実現できなくなったケースです。

失敗事例①:転職後に選択肢が狭まった

「とりあえず監査法人を辞めたい」という理由で転職したが、業界の専門性が低い仕事を選んでしまい、次の転職が難しくなった。会計士の資格を活かせる仕事に戻るのが困難になり、キャリアの幅が狭まってしまった。

失敗事例②:独立しにくくなった

将来的に独立を考えていたが、転職先が自身が思い描いていた仕事とは関係のない職種で、独立に必要な実務経験を積む機会がなかった。結果として、独立準備が進まず、独立のタイミングを逃してしまった。

失敗事例③:転職後に市場価値が下がった

大手監査法人から中小企業の経理職に転職したが、役職が得られず、転職市場での価値が下がってしまった。次に転職を考えたときに、監査法人時代の給与水準を維持することが難しくなり、キャリアの選択肢が限られてしまった。


(5)まとめ

監査法人からの転職で失敗しないためには、仕事内容・待遇・評価制度・キャリアプランの全てを慎重に検討することが重要です。

✔ 転職前にチェックすべきポイント
  • 転職先の業務内容が、希望するキャリアと一致しているか
  • 年収だけでなく、福利厚生や評価制度を事前に確認する
  • 短期的なメリットだけでなく、長期的なキャリアプランを考える
  • 監査法人時代のスキルや公認会計士資格そのものが転職先で活かせるかを見極める

監査法人勤務の公認会計士が転職で後悔しないために、しっかりと情報収集を行い、自分に合った転職先を選ぶことが大切です。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 公認会計士にとって最も年収が高い転職先は?

A. 投資銀行やPEファンドは年収が1,500万~5,000万円と非常に高額です。

Q2. 独立を目指すならどの転職先がよい?

A. 会計事務所、税理士法人、ベンチャーCFOなどが独立しやすい職種です。

Q3. 独立開業も見据えた会計士におすすめの転職先は?

A. 独立開業を視野に入れるなら、税理士法人やコンサルティングファーム、事業会社の経理・財務部門での経験を積むのが有効です。特に税務の知識を深められる税理士法人や、経営戦略に関与できるコンサル業界は、将来の独立に役立つスキルが身につきます。また、スタートアップ企業のCFO(最高財務責任者)として経営経験を積むのも良い選択肢です。

Q4. 資格保持者だからかえって転職時に警戒されることはないのか?

A. 公認会計士は高度な専門知識を持つ一方、オーバースペックとみなされることもあります。特に一般企業では、給与水準や業務範囲のミスマッチを懸念されることがあります。そのため、転職時には自身のキャリアビジョンを明確に伝え、企業のニーズに合ったスキルや経験を強調することが重要です。

特に一般事業会社は監査法人出身者がどのようなことを行ってきたか理解していない方がほとんどのため、監査法人から事業会社への転職では、監査以外の業務経験もアピールするとスムーズに進みます。

Q5. リモートワーク・在宅勤務に向いている転職先は?

A. リモートワークを重視する場合、監査法人での監査業務が最も適していると考えられます。近年ではGoogleドライブやクラウドストレージの活用が進み、監査資料の共有やクライアントとのやり取りがオンラインで完結するケースも増えています。そのため、在宅でも効率的に業務を進めることが可能です。

また、企業の経理・財務部門、コンサルティングファーム、ファンド業務、会計系SaaS企業のアドバイザリー業務なども、在宅勤務に適した選択肢として挙げられます。

Q6. 出張が多い転職先は?

A. 出張が多い職種としては、内部監査や海外子会社管理が挙げられます。特に内部監査は、グループ会社や海外拠点の監査を行うため、国内外への出張が頻繁に発生します。また、海外子会社管理では、現地の経理・財務状況の確認や経営サポートのため、定期的な出張が必要となるケースが多いです。

一方、M&Aアドバイザーや財務コンサルタントは、以前は出張が多い職種とされていましたが、近年ではクラウドツールやオンラインミーティングの普及により、リモート対応が主流になりつつあります。そのため、必ずしも頻繁な出張を伴うとは限りません。

Q7. 公認会計士に人気の転職先はどこですか?

A. 公認会計士の転職先として人気なのは、一般企業の経理・財務部門、M&Aアドバイザリー、投資銀行、ファンド業務、税理士法人、コンサルティングファームなどです。

特に近年は、スタートアップやPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)など、成長企業のCFOや管理部門責任者として活躍する会計士も増えています。また、金融機関のリスク管理部門などは、会計士の知見を活かせる分野として注目されています。

Q8. 監査法人は何年くらいで辞めるのがベストですか?

A. 監査法人を辞めるタイミングはキャリアプランによりますが、一般的には3~7年程度が目安とされています。3年目くらいでスタッフ業務を一通り経験し、5年目にはシニアとしてマネジメント業務も経験できます。7年以上在籍すると、マネージャーやシニアマネージャーとなり、より高度な案件に携われる一方、転職の選択肢が狭まることもあります。自身のキャリア目標に応じて、適切なタイミングを見極めることが重要です。

Q9. 公認会計士はどのような理由で監査法人を辞めるのですか?

A. 公認会計士が監査法人を辞める主な理由としては、長時間労働による負担、監査業務の単調さ、キャリアの幅を広げたいという希望、待遇への不満、ワークライフバランスの改善、事業会社での経営に携わりたいという意向などが挙げられます。特に、監査法人ではルーチンワークが多く、成長の機会が限られると感じるケースもあります。そのため、より戦略的な業務を求めてコンサルや事業会社へ転職する人が増えています。

Q10. 公認会計士が英語を活かせる転職先はどのようなところがありますか?

A. 英語を活かしたい場合、外資系企業の経理・財務部門、グローバル企業のCFO、投資銀行、M&Aアドバイザリー、国際税務、外資系コンサルティングファーム、海外進出企業の管理部門などが選択肢となります。

特に、BIG4監査法人の国際部門や、外資系ファンドでは、高度な英語力が求められます。また、日本企業の海外子会社管理や内部監査部門も、英語を活かしながら働ける環境です。

執筆者プロフィール

齊藤 健太郎(さいとう けんたろう)
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社 エグゼクティブエージェント
公認会計士・税理士/齊藤公認会計士事務所

横浜国立大学経済学部卒業
横浜国立大学国際経済法学研究科修了:専攻は会社法

2003/2-2006/9
エイチエス証券株式会社引受審査部所属
2006/9-2010/7
あずさ監査法人第5事業部(IPO専門部署)所属
2010/8-2012/10
あずさ監査法人 IT監査部所属
2012/10-2017/11
LINE株式会社 内部監査室 マネージャー
2017/11-2020/9
ライフアンドデザイングループ 取締役CFO
2020/10-2023/1
日本M&Aセンター TPM事業部 上場審査部 JQS

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