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自民「未上場株の流通市場を」スタートアップ支援策

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日本経済新聞 朝刊 2022/3/31
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA29DJA0Z20C22A3000000/

岸田政権下ではスタートアップ支援を強化する方針であり、スタートアップ企業の支援策の候補として『未上場企業の株式取引を活発にする流通市場の創設』を柱に、企業価値が向上しやすい環境を整備するとの提言をまとめた。2022年6月をめどに策定する計画への反映が目指されることが日経新聞のニュースで報道された。

提言の主なポイント
  • 未上場株式取引の流通市場の創設
  • 再投資を目的に、未上場の自主株売却益にかかる税制の優遇を
  • 27年に国内スタートアップへの投資10兆円に
  • 公共調達の拡大。発注前提の開発投資への補助金拡充を
  • 府省にまたがる政府のスタートアップ支援組織の統合、設置

■会計士の目線

(1)グリーンシート市場とは?

皆さんは、平成9年7月に創設された、「グリーンシート市場」という未上場株式市場のことをご存じだろうか。平成20年には100社程度の未上場株式の登録を達成したものの、平成30年に「グリーンシート市場」は廃止された。

本制度の沿革は、日本証券業協会ホームページに詳しい。下記を参照いただきたい。
https://www.jsda.or.jp/shijyo/minasama/greensheet/seido/history.html

2022年3月22日の日経新聞朝刊に掲載された「ユニコーン138社への壁」という記事にある様に、経団連がスタートアップ企業の育成策を提言していることに、呼応するように政府は未上場株式市場の創設について発表した。

(2)「未上場企業の株式市場」は「グリーンシート市場」と同じ轍をふむ可能性がある

グリーンシート市場は、平成9年当時、エンジェル税制の導入もあり中小企業の未上場株式市場(=公開株式市市場)として、鳴り物入りで始まった制度である。公認会計士の出縄良人社長がD-ブレイン証券を設立して、グリーンシート市場という未上場株式市場を利用して、個人投資家の開拓や市場の活性化、中小企業の成長支援を目指したが、これに参加する証券会社は限られ、D-ブレイン証券の私設市場のようになってしまって、失敗に終わったという印象をもっている。

政府や経団連は「未上場企業の株式市場」に何を求めているのだろうか。

単に中小企業のための株式流通市場を準備したり、エクイティ・ファイナンスの市場を準備するというお題目はよいが、かつての「グリーンシート市場」の様に、「未上場企業の株式市場」で資金調達することが、単なる証券会社の手数料稼ぎの手段になると、本末転倒である。

資金が集まるということは、資金調達した企業やそれを支援した証券会社に責任が生じるということである。
中小企業の資金調達や成長力を高めるためにも、市場参加者にとってフェアな市場作りがもとめられる。

いたずらに厳しい基準を設けても中小企業には利用できないし、基準を緩くしすぎても投資家の利益を害することになる。
「未上場企業の株式市場」における投資家や株主の質・属性の問題や市場の流動性の確保についても課題は山積である。

(3)「東京プロマーケット市場」は中小企業の成長可能性に貢献する

こうしたことは、現在、東京証券取引所が運営する「東京プロマーケット市場」にも当初みられた。

2008年創設された市場でありながら、当初、フィリップ証券のみがJ-アドバイザーとして活動するのみで、大手、中小のどの証券会社も様子見を決め込んでいた。しかし、最近では、HS証券や日本М&Aセンターや宝印刷がJ-アドバイザーとして活動するなど、毎年10社以上が上場していくような上場市場に成長してきている。

ただし、一般の個人が資金を投資できるような市場でなかったり、株式の流動性が低く、政府や経団連が想定するような投資の回収をするための市場にはなっていない。

しかし、経団連が求めるような、ユニコーン企業を生み出すと同時に、企業の財務諸表の信頼性を確保するためには、「東京プロマーケット市場」を利用すべきである。

現在5社が上位市場にIPOして資金調達するなど、中小企業の成長可能性に貢献する市場といえる。今後も多くの中小企業がIPO市場に上場していくだろう。現在のところは個人投資家や一般投資家の多くが投資できないという制度となっているが、今後は流動性を高める方策も検討されている。経団連も日本政府も、「東京プロマーケット市場」の有用性に気づくのも時間の問題である。

(文責 監査法人コスモス 統括代表社員 公認会計士 新開智之)

執筆者プロフィール

新開 智之(しんかい ともゆき)
公認会計士、監査法人コスモス統括代表社員

平成4年3月岐阜大学教育学部卒業、平成10年3月公認会計士試験第3次試験合格後、社員、代表社員を経て、令和元年6月監査法人コスモス統括代表社員就任。会計監査・IPO支援のほか、財務・会計・税務を中心とした業務に就いて、マネジメント・コンサルティング、企業再編コンサルティング、環境ISOの構築支援及び審査を経験してきた。現在では、中小・中堅企業の株式上場・IPO支援を積極的に実施しており、最近5年間で11社を東京プロマーケット市場へ上場支援し、特に東京プロマーケット市場から一般市場へのステップアップ上場への支援にも積極的に活動中。

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