近年、注目を集める『非常勤』として監査業務に携わること。
一度、監査法人を退職され、独立や何かしらのライフイベントを終えた後に、ふたたび監査法人で働くことを選ぶ公認会計士が増えています。
非常勤として働くことの魅力はどこにあるのか、はたまた懸念されるのはどのようなことなのか。独立開業後、監査法人にて非常勤として監査業務の経験がある公認会計士にお話をうかがいました。
公認会計士が監査法人で『非常勤』として働く!そのメリットは?
近年、注目を集める『非常勤』として監査業務に携わること。
一度、監査法人を退職され、独立や何かしらのライフイベントを終えた後に、ふたたび監査法人で働くことを選ぶ公認会計士が増えています。
非常勤として働くことの魅力はどこにあるのか、はたまた懸念されるのはどのようなことなのか。独立開業後、監査法人にて非常勤として監査業務の経験がある公認会計士にお話をうかがいました。
非常勤監査とは、監査法人にてフルタイム勤務者よりも短い時間で、監査業務に従事する雇用形態のことです。基本的に残業はなく、案件ごとにアサインされ、監査業務を行います。平たくいえば、「業務委託」の形態で監査法人に勤めることをいいます。
監査法人は、公認会計士や公認会計士試験合格者と雇用契約を結びます。一方で、人手不足や雇用の多様化で、会計士と業務委託契約を結び、時間を制限する形で監査業務に従事してもらうことも増えてきました。
わたしは以前、某監査法人に6年勤務した後、独立しましたが、その後2年間ほど監査法人にて非常勤監査に従事していました。
公認会計士の多くは、無期雇用かつフルタイムで働く雇用契約を監査法人と取り交わし、正職員として働きますが、非常勤は働ける期間が決まっている有期契約になります。わたしの場合は、1年ごとに契約を更新していく形態でした。
非常勤の1日のスケジュールは、だいたい以下のようになります。
9:30~ 出社もしくは現場(正職員と同時刻)、監査業務
12:00~13:00 昼休み(チームのメンバーと食事)
13:00~ 監査業務
17:30 退社
基本、正職員の公認会計士と同じスケジュールになります。
基本残業はありませんが、繁忙期やチームの業務内容により2,3時間の残業が発生することもありました。業務終了時には、その日に行った業務内容と業務時間を監査法人に報告します。
非常勤の業務は、監査法人が行っている業務のサポートがメインになります。
具体的には、下記の通りとなります。
基本的に、アサインされた案件により業務の内容が決まります。
非常勤監査に求められる実務経験レベルについては、上記のような業務を行うので、一通りの監査業務を経験している必要があります。
監査法人に勤務していた方であれば、だいたいシニアスタッフ(3年~5年以上)くらいまでのレベルであれば対応できるでしょう。また、主査(インチャージ)業務をした方であれば、幅広く業務を見ることができるので、より対応しやすいかと思います。
大手監査法人では、日給35,000円以上(想定労働時間7時間程度)が相場です。
仮に、月20日出勤して、1日7時間勤務とすると、月給70万円ほどになります。わたしの場合は案件ごとのアサインでしたので、だいたい月10日くらいの稼働でした。
中小監査法人の時給は日給40,000円以上(想定労働時間7時間程度)が相場となっており、大手監査法人に比べ単価は高いです。ただし、ただしクライアントの規模により、勤務時間は少なくなる傾向にあるかと思います。
中小の40,000円以上ですと、監査法人入社3年以上という感じです。経験5年以上、マネージャー以上ないしマネージャーに近しき経験ありの場合は、日給50,000円超えるかと思います。
ちなみにある中小監査法人に聞いたところでは、通常〜マネージャークラスまでで、日給44,000円〜55,000円という感じのようです。繁忙期については、日給70,000円くらいになるようです。
大手、中小のいずれも、人手不足により時給は上がる傾向にあります。 ここに書いたことは、2024年の時点で監査法人勤務の方に確認をしたもので、あくまでも一般的な例となります。監査法人ごと、契約する公認会計士個人によっても、報酬単価は変わってくるとお考えください。
非常勤は、常勤のようにフルタイムで働くことはないため、時間の管理がしやすくなるというメリットがあります。そういった点では、ワークライフバランスを確保できる雇用形態といえるでしょう。
また、正職員と異なり、勤務日数や勤務時間、残業の有無などを、監査法人と協議することができ、自分で仕事を選択しやすい環境です。
繁忙期は、さすがに希望が通らないことがあるとは思いますが、時間に拘束されず、自分で働く日数や時間が決められるのは、大きなメリットでしょう。
加えて、非常勤は公認会計士が監査法人を退職し独立した際に、事務所経営が安定するまでの収益確保の手段として挙げられます。
自身の事務所を立ち上げ、経営が軌道にのるまでには、意外と自由に使える時間が多いといえます。これまでの経験を活かし非常勤として仕事をすることは、選択肢の一つになるでしょう。
非常勤で働く上でのデメリットは、雇用契約と違い業務委託契約になるので、働く期間が一時的であるということです。
わたしの場合は、1年ごとの契約でしたし、自分の思うように仕事をいれることができないこともありました。自身のおかれた状況によって異なりますが、非常勤を収入の柱とするのは、難しい側面があるでしょう。
契約期間については、監査法人や契約する個人の会計士ごとによっても違うので一概にはいえません。
これは、監査法人をやめることのデメリットともいえますが、例えば、監査法人に勤務している場合は、公認会計士協会の会費は、法人が負担してくれます。
しかし監査法人をやめて、非常勤として会計士業務を行うとなると、年会費の負担は、当然、自身で行わなければなりません。
時給単価は高いですが、上記のような自己負担額も増えるのが非常勤です。また、非常勤には、退職金制度や有給休暇は適用されませんので、その点も考慮する必要があります。
非常勤として働く公認会計士は、おもに下記の方々が挙げられます。
それぞれに、上記3.4.で挙げたメリットとデメリットを踏まえた上で、非常勤という働き方を選んでいるといえるでしょう。
自身が以前勤めていた監査法人にお願いをして、非常勤として監査業務に関与することができます。そうしたい場合には、監査法人のパートナーに相談されるのがよいかと思います。
以前は、それまで勤めていた監査法人でそのまま非常勤で働くことが一般的でした。最近はそのようなこともなくなっており、あずさを辞めた公認会計士が、新日本で働くといったことも珍しくないようです。
また、知り合いの会計士・会計事務所の紹介を受けるのも方法の一つでしょう。やはり会計士業界は、人材不足の傾向にあるので、非常勤を募集している監査法人は増えてきています。
JICPA Career Naviは日本公認会計士協会が運営する求人情報サイトです。
こちらの利用は、公認会計士および公認会計士試験合格者に限定されており、様々な求人情報があります。その中に非常勤の求人もありますので、ご自身で確認してみてください。
転職エージェントに非常勤監査希望の相談をすることもきっかけの一つになるでしょう。
転職エージェントは監査法人のパートナーと独自のつながりを持っているケースもあるので、公認会計士協会などにはない求人案件を保有している場合もあります。
あらかじめ転職エージェントに登録し、ご自身の実績などを伝え、希望に合う非常勤監査の案件があれば声をかけてもらえるよう準備をしておきましょう。
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