福証「IPO挑戦隊」に3社入会
日本経済新聞 地域経済2022/6/7
福岡証券取引所は新規株式公開(IPO)を目指す九州・沖縄・中国地方の企業を対象とする支援プログラム、「九州IPO挑戦隊」の入会式を開いた。14期にあたる今回は熊本、鹿児島、山口3県の3社が入会した。監査法人の審査に耐える水準まで経営や組織のレベルを高め、3~5年後の上場を目指す。 新規入会したダイヤモンドブルーイング(熊本市)は、ビールの製造を手掛ける。鍛島勇作代表は「産業の底上げのためにIPOが必要だ。25年の上場を目標にしている」と話した。福証の長宣也理事長は「上場の際はぜひとも福証に」と呼びかけた。 実に裾野が拡大する大学発スタートアップにとって、中長期の成長戦略をいかに描くかが課題になる。起業を促す環境整備だけでなく、事業拡大に息長く伴走する枠組みが求められている。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61470550W2A600C2LXC000/
■会計士の目線
■変貌を遂げる地方の証券取引所。その存在意義は?
第二次世界大戦まえの日本には全国に11か所に証券取引所があり、戦後に8取引所として復活した。
現在日本には、東京、名古屋、福岡、札幌の4取引所が残る。
1994年には広島証券取引所市場第二部にファーストリテイリングが上場し、2006年には札幌証券取引所アンビシャス市場にライザップが上場している。わかりやすい会社で例にあげたが、いずれの会社も地方市場から本格成長への産声をあげ、現在も立派に国内市場や世界市場で成長をつづけている企業だ。
本来の地方証券取引所は、全国の中小企業の信用力、資金調達力、成長力を付与し創造する不可欠な存在だといえるのだが、2013年の東京証券取引所と大阪証券取引所の合併に代表されるように、全国の取引所に人による立会がなくなり、取引の電子化がすすむなか、特に地方の証券取引所の存在意義について疑問が投げかけられていた。
2022年4月4日東京証券取引所は市場再編を実施し、市場を「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」として、世界の証券取引所と互角に競えるような市場を目指し、まさにグローバルマーケット市場へと転換をはかろうとしている。
他方で、地方市場では、基本的な制度変更はせず、特に名古屋証券取引所は「プレミア市場」「メイン市場」「ネクスト市場」と市場名称を変更し、個人株主比率5%を市場によっては義務付けるなど、地方市場ならではの対応を実施してきた。福岡証券取引所においても、「九州IPO挑戦隊」を企画し、九州地方からのIPOを推進する動きをみせている。
■これからの地方の証券取引所の役割とは?
東京証券取引所はグローバルマーケットに変貌するなか、特にスタンダード市場を目指す全国の中小・中堅企業にとっては上場のハードルが極めて高くなった。
東京証券取引所を目指すことが難しいと考えている九州地方や北海道地方の企業は、それぞれの地方市場の使い勝手が向上しそうである。
名古屋証券取引所は、全国から中小・中堅企業を「メイン市場」「ネクスト市場」に受け入れようとしている。
東京証券取引所はグローバルマーケットへ、全国の地方市場はドメスティックマーケットへとそれぞれの役割を明確にしながら、地方創生・事業承継などに活用されそうである。
東京証券取引所の東京プロマーケット市場も2022年度は既に前年実績を越えて過去最高の上場企業数となる。また、今後の法律改正により、特定投資家(プロ投資家)の基準の緩和が行われ、資金調達市場として、流通市場としての機能も充実しそうである。
日本の証券取引所は、多様な全国の中小・中堅企業が使いやすい資本市場へと変貌を遂げつつある。
(文責 監査法人コスモス 統括代表社員 公認会計士 新開智之)
- 執筆者プロフィール
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新開 智之(しんかい ともゆき)
公認会計士、監査法人コスモス統括代表社員平成4年3月岐阜大学教育学部卒業、平成10年3月公認会計士試験第3次試験合格後、社員、代表社員を経て、令和元年6月監査法人コスモス統括代表社員就任。会計監査・IPO支援のほか、財務・会計・税務を中心とした業務に就いて、マネジメント・コンサルティング、企業再編コンサルティング、環境ISOの構築支援及び審査を経験してきた。現在では、中小・中堅企業の株式上場・IPO支援を積極的に実施しており、最近5年間で11社を東京プロマーケット市場へ上場支援し、特に東京プロマーケット市場から一般市場へのステップアップ上場への支援にも積極的に活動中。
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