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【会計士が一番最初に読む IPO入門講座】第2回 IPO準備の基本(2):IPOできる会社・できない会社の違い

【会計士が一番最初に読む IPO入門講座】第2回 IPO準備の基本(2):IPOできる会社・できない会社の違い

1.年度別IPO件数が示すIPOできる会社とできない会社

(1)日経平均株価とIPO件数の相関関係

現在、日本国内においてIPO準備に取り掛かっている会社数はおよそ600社、検討しているという会社まで含めれば1,000社以上あると推計されています。一方で、昨年(2019年)における新規IPO件数はたったの86社という結果となっております。

下の図1は、1997年から2019年までの「日経平均株価(年度平均)とIPO件数の推移」を抽出しています。IPOの目的の一つとして創業者をはじめとする既存株主のキャピタルゲインの獲得があることから、過去においては景気動向が株価に連動する、その結果としてIPO件数が比例するものといわれてきました。

リーマンショック前においては、先述の通り、IPO件数が日経平均株価に連動して増減していることがグラフを見て分かりますが、2012年以降のアベノミクス以降、IPO件数が必ずしも日経平均株価に連動しておらず、低水準で推移していることが理解できると思います。

図1 日経平均株価(年度平均)とIPO件数の推移

図1

(2)近年、IPO件数が伸び悩む理由

この原因として考えられる大きな要因の一つにIPO審査が厳格化していることがいえます。2012年以降、日経平均株価がしっかりとしたトレンドになっていることを背景にIPOは一時期のリーマンショックから活気を取り戻す傾向にありましたが、IPOした企業のうち、経営者による不祥事、業績予想と実績の大幅な乖離、会計処理をはじめとする不透明な事象が判明したことによるIPO後での第三者委員会の組成など、投資家の信用を大きく失墜させる事案が度々起こり、 ‘IPOしたら後は野となれ山となれ’といわれてもやむを得ない「IPOゴール」と揶揄され、チェックを行う証券取引所、証券会社、監査法人などエンティティに対して強く批判される事態となりました。

(3)IPO審査の厳格化

IPO審査は主幹事証券会社の審査と証券取引所の審査の二段階で行われます。上記のような事象が発生する以前は、主幹事証券会社の審査を経ていれば証券取引所の審査はこの確認のみで済むようなレベルでした。ところが昨今では証券取引所の審査で4割ほど落とされていると推測されています(上場承認後に取消となった案件を除き、審査段階で不受理となった企業の実数がWEBページ等で公表されていないため、このような企業の正確な数は追うことができませんが、推計でそのようにいわれています)。

このような審査の厳格化については、筆者はむしろ良い傾向であると考えており、IPO後に投資家の期待を裏切る可能性がある企業を少しでもフィルターにかけることは、逆にこのような中IPOを達成できた企業を中心に株式市場の健全化につながります。

(4)審査落第の原因

4割近くが証券取引所の審査で落第しているといわれる原因に、申請主体である企業側のディフェンスの姿勢に問題があると思われます。

具体的にいうと業績さえ良ければ後は、申請書類やJ-SOXドキュメント、社内規程、議事録などを要件通り作成しておきさえすればIPOできるという、業績・成長性以外のディフェンスの部分についていい加減な対応をする企業が多いということが挙げられると理解しています。

とりわけ最近では下記のような企業が、審査後にIPO申請延期または断念となっている模様です。

①コンプライアンス(法令遵守)の不備
労働基準法を筆頭に、先般では景品表示法、不当競争防止法、個人情報保護法、知的財産権に関連する各種法律など企業活動において密接に関連する法律において具備できていない。

②計画と実績の大幅な乖離
増収増益基調にあっても中期経営計画で公表している事業計画が進んでおらず、CEOにおいても具体的な戦略・施策案が説明できない。

逆説的にいうと、落とされた4割の企業はそもそもビジネス自体を否定されたということではなく(むしろビジネスは評価されたので審査までは進んだといえます)、CEOをはじめ構成員が上場企業になった後の社会的責任を自覚の上、ディフェンス面をしっかり整えていればIPOできていたかもしれず、非常にもったいないことであったと思います。

IPO準備に臨む企業側においては、業績さえ良ければIPOできるという時代はとっくの昔に終焉しているということを肝に銘じていただき、将来的に上場企業となることを想定してディフェンス面を強化しなければならないことを強く認識していただく必要があります。

2.内部から見たIPOできる会社とできない会社

次に企業の内部から見たできる会社とできない会社の違いを解説します。

(1)IPOの検討・準備に入る時期

やはりIPOが活性化するのは株式市場が好況なときですが、CEOが将来のIPOを決断するタイミングは景気動向に左右されるのは望ましくありません。

IPOは一朝一夕で成し遂げられず、最低要件として申請期の直前期、直前々期が審査対象年度として監査法人の監査証明が必要となり、また直前々期以前に監査法人に受嘱してもらうための調査も必要となりますので、どんな会社でも3年はかかります。景気は循環することが歴史を見ても明らかであり、いざIPOする時期になったらどのような経済状況になっているかは誰にも分かりません。株式市場が良くないから準備をやめる、という企業は、逆に株式市場が良くなってもIPOできない会社です。

コロナウィルスの影響が今後どこまで深刻になるのか見通しが不透明ですが、どのような経済環境においても自社のおかれている環境を冷静に分析して成長戦略を示すことがCEOに求められていると思います。したがってIPOの検討・準備に入る時期は景気動向ではなく、中長期的なビジョンをしっかり持てた時期に開始するというのが一番望ましいです。そのような企業はIPO想定時期までに必要な対応・書類の準備を完了しており、もし株式市場がその時点であまり良くなければ、回復するまでに時期を待つということも十分にできます。

(2)CEOのコーポレートガバナンスに対する考え方

IPOを検討しているCEOはすべからく本日現在までその検討ができるまでに自社を成長させてきた方々であり、この点については尊敬すべきです。

一方で組織を構成する人員が多くなってくると組織マネジメントが重要になり、権限移譲と内部統制の両輪で大人数の組織を動かしていかなければなりませんが、ある程度まで成長を遂げてきた企業のCEOでIPOまで至らないケースとして、それまでの経営手法を変えることなく同じ目線を従業員に求めるのみに留まるということが非常に多いです。その考え方の背景として、下記のようなものがあります。

①経理部門などの間接部門に人件費やその他のコストをかけたくない
②自社のことは私が一番理解しているので、月次決算、予実管理といった計数管理は必要ない

シード、アーリーステージにある企業であれば問題はないと思いますが、組織が大きくなるとCEOが隅々まで理解できる物理的限界が訪れ、製品・サービス別や部門別・場所別などの売上高・利益について正確な情報を把握するには、月次決算をはじめ計数管理を行わないことにはブラックボックスが増えてきます。

(3)必要となるJ-SOX対応

また、財務情報を正確ならしめるためには、社内ルール、業務フロー・マニュアルを整備し、業務が適切に運用できる仕組みを構築しなければなりません。上場企業には内部統制報告制度が設けられており、IPO準備においてJ-SOX対応が必要となることは良く知られていますが、本来は自社の業務を効率ならしめ正しい情報を経営者が把握することはJ-SOXを待たずとも整備すべき課題です。

そのインフラの下で初めて経営理念及び経営者のビジョンに沿って従業員が動くことができますので、組織の成長とともにコーポレートガバナンスの在り方を変えなければならないことを理解できるかどうかがIPOを可能にするかどうかにおいて大変重要なエッセンスとなります。

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執筆者プロフィール
重見 亘彦(しげみ のぶひこ)
  • 公認会計士・税理士
  • 株式会社サンライトコンサルティング 代表取締役CEO

㈱ミズホメディー(現在東証二部)社外監査役、九州大学大学院非常勤講師、その他IPO準備中の企業の社外役員、顧問、中小監査法人のパートナーを務める。

セミナー実績 名古屋・札幌・福岡各証券取引所のIPOセミナーを中心に講演多数

主な著書(共著)
会計が分かる事典(日本実業出版社)
7ステップで分かる株式上場マニュアル(中央経済社)
関連サイト
株式会社サンライトコンサルティング

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