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監査法人でパートナーになるには ~会計士が出世するためのポイント3選

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公認会計士試験に合格をすると多くの方が監査業務を志し、監査法人へと進みます。
監査業務は公認会計士の独占業務であり、企業の決算書に信頼を付与する重要かつ高い責任を伴う業務です。

その監査報告書にサインをする立場であるパートナー(社員)職は、公認会計士なら誰でも一度は憧れるポジションでしょう。

今回は監査法人内の最高職位であるパートナーへの道に向けて、お話をしたいと思います。

1.監査法人内の職階について

最初に監査法人における職階についてみていきましょう。

監査法人も大手監査法人から準大手監査法人、中小監査法人と様々な法人がありますが、基本はこのような職階でパートナーに進みます。

  • スタッフ(1年目~4年目)
  • シニアスタッフ(5年目~8年目)
  • マネージャー(9年目~11年目)
  • シニアマネージャー(12年目~14年目)
  • パートナー(15年目以降)

近年では監査法人も中間層以降の人員が増えており、シニアスタッフの次にスーパーバイザーとよばれる職位やマネージャーの前にアシスタントマネージャーを設ける監査法人もあります。

また上記の年次はあくまで目安です。
監査法人の規模によって各職位の人数が異なり、いわゆる出世への年次にも影響がでます。
また当然優秀な方は年次を飛び越えて昇格することもあります。若い方でもすぐにシニアスタッフ、マネージャーと飛び級イメージで昇格していくことがあります。

今回は読者の方に若手の方が多いことから、スタッフの方がシニアスタッフ、マネージャー、パートナーへと出世の階段を昇っていくポイントについてお話をしていきたいと思います。

2.監査法人の新人からスタッフにおいて求められる出世力

監査法人といえば高度な専門知識を有したプロ集団となります。
そのような中で出世の階段を昇る力としては主に以下のスキルが求められます。

  • (1)高度な専門知識と高い倫理観
  • (2)怠らないインプット姿勢と高いアウトプット力
  • (3)監査法人内外を問わず高いコミュニケーション力とホスピタリティ精神

では、個々にどのような力が求められるのか見ていきましょう。

(1)高度な専門知識と高い倫理観

①高度な専門知識について

監査業務においては公認会計士としての高い専門知識が求められることは言うまでもありません。

もちろん、皆さん公認会計士試験を合格しておられますので高い専門知識があることは前提ですが、働き始めてみると上場企業クライアントにおいては自分自身よりも高い会計知識と経理業務に詳しい経理部長などと対峙することもあり、驚いたことは無いでしょうか。

私自身、J1(入所1年目)の頃はすぐに監査六法や前期調書を読み込みクライアントと接したものの、クライアントの方々のほうが自分よりも会計実務に詳しいことに何度もショックを受けました。

公認会計士試験に合格した程度の知識では会計・監査のプロとしては入り口であり、高度な専門知識が監査法人内での出世において求められることは当然のことでしょう。

②高い倫理観について

近年、企業の会計不祥事事件がつきません。
監査業務においては不正の疑義がある事例や意図的ではないものの不適切な会計処理を発見することもあるでしょう。

そのような中、監査人として一人ひとりの公認会計士に高い倫理観が求められます。
公認会計士は「市場の番人」、とも呼ばれることがありますが、情にほされクライアントに甘い姿勢を持つことなどはあってはならないことです。
若手スタッフといっても一人の立派な「公認会計士」であり、常に高い倫理観をもって業務に臨むことが求められます。

あらためて公認会計士の使命を胸に抱き、高い倫理観を持ちましょう。

(2)怠らないインプット姿勢と高いアウトプット力

①怠らないインプット姿勢

言うまでもなく、公認会計士は監査及び会計の専門家です。
そして監査も会計も常に基準の改正や新基準の公開もあり、油断をしていると自分の知識はあっという間に陳腐化してしまいます。

ひと昔前の知識で監査現場に臨むと監査チーム内からもクライアントからも失笑をかってしまうこともあります。

インプット面においては会計専門書や監査六法、週刊経営財務(税務研究会)、旬刊経理情報(中央経済社)といった会計・監査関連の書物を読み込んだり積極的に研修に参加したりして、新しい知識を身につけていきましょう。

自分達自身で勉強会を開催することも有益と思います。
筆者がスタッフのころですが、同期でメーリングリストを作って、監査現場での経験や失敗談をすぐに共有してお互いに研鑽していたことがありますが、このような知識の共有も有益と思います。

また公認会計士だから自分は会計と監査の知識だけ学んでいればよい、ということは決してありません。クライアントのビジネスについても詳しくなければ、適正な会計処理の判断をすることはできませんからビジネスに対する知見も求められます。

この点では日本経済新聞はもちろん、日経ビジネスや週刊ダイヤモンド、東洋経済、プレジデントなどの経済雑誌も手にしてみると良いでしょう。

最近はスマホでも雑誌が定額で読めるサービスが増えてきています。
このようなサービスを利用して幅広い知識を身につけることが仕事においてきっと役立つことでしょう。

②高いアウトプット力

監査業務においては監査人が作成する監査調書が仕事の結果となります。
長い時間かけて綿密な監査手続きを実施したとしても監査調書が不十分なものでは監査スタッフとしての仕事は評価されません。

いかに見やすく分かりやすい監査調書を作るか、アウトプット力も求められます。

この点で必要なスキルとしてはパソコン力となります。
監査調書はエクセルとワードが基本です。
特にエクセルは前期比較を実施したり、分析的手続きをしたり、再計算をしたりと監査業務でも多用します。

あまりに高度な関数計算までは不要ですが、SUMやCOUNT、IF関数、ソート(データ並び替え)などは使える必要があります。

またマウスを使って操作するよりもショートカットキーを使って操作する方が圧倒的にエクセル作業は速いので簡単なエクセル本で学んでおくと良いでしょう。

上司は、皆さんの仕事のやり方やかけた時間を思いのほか見ています
さっとパソコンを使いこなし、わかりやすい監査調書を作ることを心がけましょう。

さらに近年はクライアント向けの監査の報告資料や監査における検出事項の説明資料をパワーポイント形式で作る監査法人が増えてきました。

対クライアントに分かりやすい説明・提案資料を作成するアウトプット力としてパワーポイントについても慣れておくと良いでしょう。

当然、会計基準や監査手続きの内容を監査チーム内やクライアントに向けて分かりやすく説明できるアウトプット力も大事な力ですので、物事を論理的に説明できる力も磨いておきましょう。

なお、あまりに凝った監査調書を作成することを目的として過剰な時間をかけてしまうと、それはそれで評価にはマイナスです。業務の生産性も意識してアウトプット力を磨いてください。

(3)高いコミュニケーション力とホスピタリティ精神

①高いコミュニケーション力

公認会計士試験を目指す人の中には「人と話すのが苦手なので公認会計士試験を受けました」という気持ちの方が案外多いものです。

しかし、監査はチームワークが求められる仕事であり、高いコミュニケーション力は仕事において必須のスキルであり最低限のビジネスマナーです。

社会人となると一度は聞く「ほうれんそう(報告、連絡、相談)」は本当に大事です。 また、監査(Audit)はその語源が聴くことを意味するオーディオから来ているとも言われることからクライアントの話も上司の話もしっかり聞く力が求められます。

監査チームでの業務においては先輩や上司が身近なクライアントともいえますので、監査チーム内でのコミュニケーションをおろそかにしてはいけません。

もちろん、監査業務はクライアントとの信頼関係で成り立ちますので、そのためにもクライアントとのコミュニケーション力も大事です。

若いころから「先生、先生」と呼ばれて、舞い上がって得意になっているようでは、きっと陰で笑われてしまうことでしょう。公認会計士試験に合格したとはいえクライアントの方の方が社会人として大先輩です。礼儀正しさや謙虚さを忘れないようにしましょう。

最近ではメールやSNSに慣れてしまい、クライアントと直接話すことが苦手な方が増えていると聞きます。またメールにしても、文章力が乏しくクライアントに不快な思いをさせることも増えているそうです。

クライアントと話すことが苦手であったり、電話やメールをするのも苦手であったりでは高い評価を得ることは難しいといえます。ぜひコミュニケーションスキルを磨いていきましょう。

またコミュニケーションを広くみると服装や髪形も大事で、周りの人を不快にさせない清潔感ある外見が求められます。

私も監査法人に入ったころはオシャレと思って派手なストライプのシャツを着たり、茶色の革靴を履いたりしましたが、当時の上司からは「そんな恰好するな」(実際のセリフはもう少し優しいものでした)と有り難い注意を受けたことがあります。

服装や髪形は個人の好みや主張もあるので何とも難しいところですが少なくとも身近な方々が不快に思うような服装には注意しましょう。

②ホスピタリティ精神

コミュニケーションと同様に大事なことが仕事におけるホスピタリティ精神です。 思いやりの精神や期待を超えて仕事に臨む気持ち、という方がイメージできるでしょうか。

監査業務はチームワークが大事ですので、そこにはホスピタリティ精神も求められます。
特に繁忙期は誰もが疲弊をしており、ギスギスした雰囲気にもなりやすいです。そのような中でもホスピタリティ精神を持って仕事に臨むことであなたへの評価は非常に高いものとなるでしょう。

また監査調書は前期調書があり、その前期調書をそのまま更新する人もいれば、必ず前期調書を超える見やすく分かりやすい調書にする人もいます

後者が評価されることは言うまでもありません。
残念ながら世の中には「少しぐらい頑張っても、もらえるお給料が一緒なら、頑張るだけ損」という考えの人もいるようですが、あなたの仕事は必ず誰かが見ています
常に向上心や奉仕の心を持ち、仕事に臨むことが、あなたをより責任のある仕事へ導くこととなります。

また監査法人の仕事は監査業務だけではありません。
社内研修の仕事やリクルートの仕事、社内イベント業務などもあるでしょう。

私自身は欲張りな人間でもあるので、監査業務以外でも積極的にリクルート業務にかかわったり忘年会の幹事役なども担当したり、と監査業務以外のことも多く経験するようにしておりました。

そのような経験は自分自身の成長につながりますし、周りの方にも自分のことを覚えてもらえる良い機会となります。ぜひ社内の様々な業務についてもホスピタリティ精神を発揮して積極的にかかわってみて下さい。

またホスピタリティ精神は対クライアントでも大事となります。
クライアントは皆さんのことをよく見ております。皆さんの頑張りはクライアントに伝わり、クライアント側も監査チームのパートナーやインチャージに「あのスタッフさんは非常に頑張ってくれていますよ」と評価してくれます。

逆に、あなたが横柄な態度やいい加減なクライアント対応をしていればクライアント側から「あの方には困ります。交代させてください」とクレームがきてしまうでしょう。
ぜひ明日からの仕事にホスピタリティ精神を加えてみてください。

3.監査法人内における人事考課ポイント

これまでスタッフとして出世していく上では、どのような力を身につけていけばよいか述べさせていただきました。

では具体的に監査法人における人事考課はどのようなポイントがあるのでしょうか。
もちろん監査法人ごとに異なりますが主たるポイントはこのような点となります。

No. 評価項目サンプル
1 社会人としての勤務姿勢、ビジネスマナー
2 会計知識、専門知識習得力
3 監査経験、監査調書作成力、監査の品質管理力
4 問題発見力、論理力、思考力、課題解決力
5 対クライアントコミュニケーション力
6 監査法人内における諸業務貢献度
7 出版実績、研修実績
8 その他語学力、専門知識、保有資格、前職における経験等

このような項目に対して、期首や人事考課時に自己評価を記載した「人事考課シート」を、直属の上司数名がレビューし、各項目について評価をしていくこととなります。

前年の人事考課シートを参照されることもありますので、いい加減な気持ちで人事考課に臨むと当然評価が低くなります

人事考課は自分を振り返る良い機会ですので真剣に臨み、面談上司へは熱意をもって自己PRをしていきましょう。

4.おわりに

監査法人内で出世をするとはいっても基本は社会人として出世をするために必要な人間的魅力が求められます。若いスタッフであれば元気の良さも評価のポイントとなるでしょう。その上に、これまで述べてきた監査人としての高度な専門知識や高い倫理観、継続して学ぶ力などが求められます。

そして何よりも「監査という仕事が好き」という点も監査法人内では大事です。
私も監査法人時代を思い返してみると尊敬する上司はみな「本当に監査業務が好きなんだな、監査のプロフェッショナルだな」と感じたものでした。

監査報告書にサインができる機会は、そうそうあるものではありません。
自分の名前が有価証券報告書や株主総会の招集通知に載るということは高い責任と共に公認会計士として大変名誉なことでしょう。

ぜひ監査法人における最高職位たるパートナーを目指してください。

執筆者プロフィール

江黒 崇史(えぐろ たかふみ)
公認会計士 江黒公認会計事務所代表/株式会社E-FAS 代表取締役

1999年3月早稲田大学商学部卒業。
2001年公認会計士二次試験合格。
2001年10月から2004年まで監査法人トーマツにおいて製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にITベンチャー企業の取締役CFOとして、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より株式会社アーケイディア・グループに入社。会計コンサル業務を中心にグループである税理士法人アーケイディア、清和監査法人の業務も担当。
2014年7月に江黒公認会計士事務所を設立し会計コンサルティング、IPOコンサルティング、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
2015年2月に株式会社E-FASを設立、代表取締役に就任しIPOコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事している。
またテラ株式会社、株式会社タウ、他複数社の社外役員を務める。

関連サイト

アドレナリン会計士江黒崇史のブログ
(※外部サイトに遷移します)

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