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【コーポレート・ガバナンス 頻出用語解説 ②】
取締役会の運営:月次決算の早期化について

コーポレート・ガバナンスの強化にあたっては、取締役会の構成員とその資質が重要である旨は、先の回(*)で説明したとおりであります。

実際に取締役会を置いてみると取締役会では何を報告し、何を監督しなければならないのかということが課題になります。通常は会社の業績報告が審議・監督のためのツールとして俎上にあがることになりますが、月次の業績報告の情報も鮮度が大事であるため、月次業績報告が、翌月末や翌々月に行われていては、せっかく置いてみた取締役会での審議も意味のあるものにはなりません。

また月次の業績把握は、会社の経営課題をいち早く察知するための重要な指標になりますが、会社業績の把握は早ければ早いほど望ましいものとなることは言うまでもないかと思います。

そのためには月次決算の早期化を図らなければならないのですが、実際にどのように月次決算の早期化を図ることができるのか。今回はそのようなお話をしようと思います。

*参考:「コーポレートガバナンスとは?■ 取締役会の適切な運営 1. 取締役および取締役会の構成員について」

■ 会社の業績の把握

(1)決算を早期に固めるのに大事なことは?

会社の業績を早く把握して、有効な手を打ちたいということは、会社を経営する上において必要なことですが、そうは思っても毎月の業績が早くつかめない、そのため、売上のみ速報値を把握しているという企業を見たことがあります。

しかしながら、会社四季報などみてみると本決算短信の公表が早い企業がランキング化されたりしており、こうした企業は決算の早期化を常に心がけた結果、その境地にたどり着いたといえます。

決算を早期に固めるという点においては、年次であれ月次であれ考え方は同じだと思いますが、そのためには、まずは貸借対照表と損益計算書の性質を把握する必要があります。

(2)まず固めるべきは、貸借対照表の数値

毎月の業績を早く把握することは、損益計算書の情報を早く知るということと同じことだと思いますが、結論からいいますと、貸借対照表の数値を早く固めることが必要です。

これはどういうことなのか、会社の財務諸表のからくりを説明したいと思います。

会社の毎月の財務諸表、つまり貸借対照表と損益計算書は下記の図によって時系列に並べることが可能です。

月次試算表作成のイメージ図
月次試算表作成のイメージ図

この図からはわかるのは、会社の毎月の業績評価は、損益計算書によって測定することができるのですが、この損益計算書は、各月の前月末の貸借対照表と当月末の貸借対照表の差分でしかないということになります。

つまり、会社の業績を早く把握するには、毎月の貸借対照表の金額を早期に確定させることが必要なのです。逆にいうと、損益計算書の項目をいくら動かしたとしても業績を早く把握することはできません。

■ 毎月の貸借対照表の把握

(1)勘定科目ごとに金額確定の時期をコントロールする

それでは、貸借対照表の金額を早く確定させるにはどのようなことが必要なのでしょうか。

まず、貸借対照表において使用される勘定科目の性質を認識した上で、各科目の性質に応じた適切な管理を行い、金額確定を行うことが必要です。その作業の積み重ねの結果、正確かつ迅速に業績把握を行うことが可能になります。

下記の図の貸借対照表は、一般的に用いられる勘定科目をあげておりますが、流動資産、固定資産、流動負債、固定負債は、下記勘定科目ごとにその性質に応じで金額確定の時期をコントロールすることができます。

月次試算表作成のイメージ図

(2)貸借対照表を早く固めるのは、経営戦略の第一歩

このように貸借対照表の各勘定科目を毎月上旬に固めることで、損益計算書の把握が可能になり、会社の業績と予算数値と比べた内容を取締役会に報告することが可能となるため、貸借対照表を早く固めることは、取締役会の場で、具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論が行われることの第一歩になります。

また、取締役会に参加する経営陣の方は、会社の売上や営業利益や経常利益の算出プロセスに着目するだけでなく、貸借対照表の各科目の増減に異常項目がないのか、貸借対照表の各科目の利益への貢献状況を毎月の取締役会で見ていくことで、会社の動きを把握すべきであると思います。

(3)早期に決算を固めるための作業の洗い出し

月次決算の早期化作業を実務に落とし込む場合、会社の経理作業の内容に着目することが必要です。実務上の経理作業は、会社の規模が大きくなると科目ごとに分担して行われることが多いと想定されます。

また、月次決算の早期化を実現するには、上記の図の仕組みを経理の一部の人員だけではなく、全ての経理部員が財務諸表の仕組みを理解した上で、各担当の貸借対照表の科目を固めるのにはどのような作業が必要であるのかを模索していく必要があります

その上で、各勘定科目が翌月のいつに金額確定されるのかを把握することによって、その原因を潰すことが、月次決算の早期化作業に結びつくことになります。

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