日本経済新聞 地域経済2022/8/10
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63305650Z00C22A8LX0000/
福岡市は2012年にスタートアップ都市宣言を出し、創業しやすい街を目指し環境を整えてきた。
九州産業大学の船岡健太教授によると、宣言した12年から21年までの10年間で29社の九州企業が上場し、うち6割超の19社が福岡企業だった。
だが、全国で俯瞰(ふかん)してみると同期間にIPOをした企業の2%を占めるにすぎない。宣言以降に起業した会社の上場もゼロだ。東京では起業後8年程度といった社歴の短い企業のIPOが相次いでいる。一方、福岡ではスタートアップの代表格であるヌーラボでも18年かかった。
目次
会計士の目線
■東京や名古屋でもスタートアップの取り組みが活発に
中小企業の応援やスタートアップ企業を増やそうという動きが、東京もさることながら、名古屋でも活発だ。名古屋ではフランスの「Station F」をモデルにした「Station Ai」の立ち上げを急いでおり、2022年には名古屋駅近くに「Pre-Station Ai」を開設し、2024年の2年後には千社を超えるスタートアップを国外国内から誘致する予定だ。
名古屋の製造業の産業集積にくわえて、DXなどのテクノロジーをくわえ、「ディープテック」かつ「ユニコーン企業」の創造につなげるとしている。
■「目的」に生きる企業を目指せ
IPOしてから、成長が止まる。成長しない。といった現象が過去から起きている。
東証の市場再編に見られるように、時価総額が上場してから成長していない上場会社が如何に多いことか。
現在もプライム市場やスタンダード市場の時価総額基準に満たない上場会社が数百社ある。こうした上場会社は事業計画を提出しながら、数年で上場維持基準を達成できるように模索中である。もともと、上場してから株価が低迷し、上場前の成長性などが失われた上場会社も多い。
私見だが、上場することが目的になっていた企業が多いようにも感じている。なぜ上場するのか。なぜ上場企業でなければならないのか。上場をして自らの商品や製品を世に問い、顧客を創造し、新しい価値を生み出し、働く場を提供し、多くの利益を出し、税金を納め、地域や国に貢献していく。そんな上場企業の姿が求められている。
自社の商品製品を「売って良し、買って良し、世間良し」の「三方良し」にする経営こそが社会に求められ、社会に貢献し、成長し、継続する企業になり得ると感じている。
当たり前のことかもしれないが、金融市場を本来の目的や正当な目的でない使い方をして、我利を貪る経営をしてこなかったか。社会的に存在意義のある利他の企業を多く上場に導きたい。
(文責 監査法人コスモス 統括代表社員 公認会計士 新開智之)