会計士・税理士が注目する国際資格 公認内部監査人(CIA)とは?

公認会計士、税理士は、会計の国家資格として高い評価が定着していますが、それに加え、他資格の取得で特定業務に関するスキルを示すことを検討している会計プロフェッションもいます。そして現在、会計とかかわりが深く、ダブルライセンスの対象として注目される国際資格の一つに、企業の内部監査に関するスキルを担保する公認内部監査人(Certified Internal Auditor :CIA)があります。
1.急増する取得者 気になる試験の内容
公認内部監査人は、米国を本拠とする内部監査人協会(IIA)が認定する国際資格であり、日本では、日本内部監査協会が、1999年から日本語での試験を実施しています。日本語試験の実施により、1998年までで国内に17名しかいなかったCIA資格取得者は、2018年までで累計8,801人までに増加しています。
試験科目は、パート1(内部監査の基礎)125問、パート2(内部監査の実務)100問、パート3(内部監査に関する知識)100問と、かなりのボリューム。試験の情報が入手しにくいこともあり、難易度は高いですが、選択試験であることからチャレンジしやすいという側面もあります。また、パート3の試験範囲として、財務会計や管理会計の問題も設定されており、会計人にとって知識の応用ができる部分が大きいといえます。
CIAを受験するには、4年制大学を卒業していることが要件とされ、これを満たしていない場合は実務経験が必要です。また、勤務先の上司等、客観的立場の第三者が行う「IIA倫理綱要」に基づく推薦が必要というのも特徴的です。
資格の認定を受けるためには、試験での合格のほか、外部監査や監査役監査、内部監査、リスク・マネジメント、コンプライアンス、内部統制等の実務経験が2年以上あることも条件となっています。なお要件を細かく確認されたい方は、下記をご参照ください。
『CIA公認内部監査人認定試験ガイド』
3.認定要件
(出典 一般社団法人 日本内部監査協会)
なお、IIAではそのほかに、CCSA(Certification in Control Self-Assessment:内部統制評価指導士)、CFSA(Certified Financial Services Auditor:公認金融監査人)といった資格も認定しており、CIAと合わせて取得を目指すケースが多いようです。
2.公認会計士・税理士がCIAを取得するメリットは?
CIAのダブルライセンスによる効果を考える際、まず魅力的なところは、発祥国である米国をはじめ、世界約190の国と地域で実施される国際資格であることです。
また、会計士だけではなく、中小企業の内部監査・内部統制に関する業務にビジネスチャンスを見出す税理士事務所において、勤務税理士がダブルライセンスとして取得することも有効であると思われます。
IIAは、2017年11月に内部監査に関する「専門職的実施の国際フレームワーク-2017年版-」(International Professional Practices Framework:IPPF)を刊行しています。これは世界中の内部監査の専門職が必要とする最新かつ適切な情報を提供するもので、実務に関する手引きとしてだけではなく、資格認定試験の学習教材として使われています。日本語版もありますので、興味のある方は確認しておくとよいでしょう。
3.転職の際のCIAを取得するメリットは?
すでに触れましたが、内部監査の仕事は監査実務と近いため公認会計士にとってはCIAの試験は取り組みやすく、比較的容易に合格可能な試験であるといえます。監査実務を経験しない税理士にとっては、難易度は高く感じられるかもしれません。ただCIAの資格を保持していても、監査法人や公認会計士事務所では特別な評価を得ることはないというのが、わたしの経験上思うことです。
一方で、最も取得を検討すべき場面は、企業内会計士・税理士として転職を考える場合でしょう。外資系企業を含めて、一般企業の内部監査、コンプライアンスに関する求人において、優遇条件としてCIA等、IIA資格の取得者を挙げているという事実があります。
この場合の年収は、その企業の給料体系に従うこととなります。内部監査自体を重要視している会社においては、「他の部署での採用より多少は多い給与を得られる可能性がある程度」くらいに考えていたほうがよいでしょう。


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