【連載】独立会計士のための はじめての税務実務 第3回 申告調整

1.源泉徴収税額(源泉税)の申告調整(法人)
第1回の源泉税の解説では、役員や従業員の給与・賞与、士業や芸能人の報酬を支払うような場合、源泉税の部分は、税金の前払いとして、税務署へ納付されるという内容でした。この時は個人が報酬等を受け取るケースでしたが、実は、法人(会社)が受け取るケースでも、源泉税が納付されるものがあります。
それは、会社が、銀行から利息を受け取る場合や、配当金を受け取る場合です。
例えば、会社の銀行預金には、2月と8月、利息の入金があります。入金額を「受取利息」として記帳することは簡便的な方法です。
入金額は、すでに銀行が源泉税を控除した後の金額ですので、「受取利息」として計上すべき金額は、源泉税を控除する前の金額とするのが原則です。源泉税の金額については、すでに前払いで納付したものとして法人税、住民税及び事業税(以下、法人税等)へ計上することになります。
すなわち、受取利息100,000の場合、源泉税率15.315%(所得税と復興特別所得税)に基づく金額が控除された、84,685円(100,000-100,000×15.315%)が入金されるため、次の仕訳を計上する必要があります。
なお、配当金の源泉税率は、上場株式の場合(原則)15.315%、非上場株式等の場合20.42%となります。配当金計算書などで確認したことがあると思います。
税務申告書上、法人税等15,315について、まず、税務申告書の別表六で明細を作成したうえで、別表四「法人税額から控除される所得税額」に記載され、加算(社外流出)として、申告調整がなされるのです。さらに税額計算のため、別表一「控除税額」に記載されて、すでに前払いした金額として、支払うべき法人税額から控除されることになるのです。
詳細については、下記リンク先、国税庁のタックスアンサーなどをご確認ください。
2.別表四と五(一)における申告調整
会計監査において、税金計算や税効果会計について検討をする際、税務申告書のドラフトを入手したことがあると思います。
別表四は、毎期、当期純利益から課税所得を計算するために、加算項目・減算項目を記載することにより作成されます。別表五(一)は、別表四などに基づき、税務上の利益積立金額(会計上、利益剰余金に相当)と資本金等の額(会計上、資本金と資本剰余金の合計に相当)について、当期の増減額を記載することになります。
なお、別表五(一)には、期首残高を記載し、別表四の加算・減算項目(留保)を記載することにより、税務上の残高が計算されます。
また、税効果会計を適用することによって計上される繰延税金資産、繰延税金負債、法人税等調整額などは、税務上の残高はゼロですので、貸借対照表及び損益計算書の計上金額をすべて取り消すように別表四と別表五(一)に記載されることになります。
それでは、以下の前提条件において、別表四と別表五(一)の抜粋を作成することにします。
・実効税率30%(便宜的に、実際の税額450は課税所得1,500×実効税率30%にて計算された金額と一致)
・期末日現在、資本金が1億円を超えていないため、外形標準課税の適用対象では無い。
・申告調整項目は以下のみ
加算:賞与引当金400、法人税、住民税及び事業税450(うち未払事業税100)
減算:法人税等調整額150
なお、未払事業税100については、納税申告書を提出した事業年度において、損金の額に算入されます。翌期の別表四の減算項目「納税充当金から支出した事業税等の金額」に記載されるため、将来減算一時差異となります。未払事業税について、当期、(借)繰延税金資産30 (貸)法人税等調整額30(=100×30%)が計上されるため、賞与引当金に関する仕訳(400×30%=120)と合計すると、(借)繰延税金資産150 (貸)法人税等調整額150が計上されています。これらを取り消すように申告調整がなされるのです。
また、上記では省略しましたが、仮に、源泉税15が発生していた場合には、1.源泉徴収税額(源泉税)の申告調整(法人) にて記載したとおり、別表四「法人税額から控除される所得税額」において加算(社外流出)15となり、申告調整となりますが、翌期以降に損金となるものではありませので、税効果会計の対象にはなりません。 (さらに、加算項目「損金経理をした納税充当金」15、減算項目「納税充当金から支出した事業税等の金額」15のように、同額で加算と減算の項目にも含めることもありますが、課税所得は同じになります。)
詳細については、下記リンク先、国税庁のタックスアンサーなどをご確認ください。
次回以降は、下記のテーマでお届けします。


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