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会計士のための非常勤役員、社外役員になる方法

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近年、企業経営においてはガバナンスの強化や経営陣の多様性確保が強く求められる傾向にあります。特に上場企業では社外取締役を選任することが義務となり、監査役会においても過半数は社外監査役で構成する必要があります

上場企業において社外役員が求められることとなったため、今や社外役員候補者が不足している状況です。そのような状況下において今、社外役員候補者として公認会計士が注目される時代となりました。

本コラムでは社外役員に関心のある公認会計士向けに、どのように社外役員に選任されるか考えてみたいと思います。

1.社外役員に公認会計士が求められる時代

上場企業における企業統治のガイドラインともいえるコーポレートガバナンス・コード。

そのコーポレートガバナンス・コードの【原則4-8】においてはプライム市場上場会社では取締役会を構成する取締役のうち、独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきと定められています。

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。
また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

2021年3月に改正された会社法では、上場会社には社外取締役の設置が義務付けられました(会社法327条の2)。

【第327条の2】(社外取締役の設置義務)
監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない。

また、会社の機関設計として監査役会を設置している会社では、監査役会を3名以上の監査役で構成し、その過半数は社外監査役であることが従来から求められています。監査役には取締役の職務執行を監督する責任があることから、その候補者は高い専門性や相当な知見が求められます。

このように上場会社においては社外取締役、社外監査役が複数人求められる時代です。しかし上場企業は約3,600社程度あります。すべての上場企業で社外役員が求められる時代となった結果、今や上場企業では社外役員不足の時代ともいわれております。

このような時代背景を受け、公認会計士は会計・監査の専門家として会計や財務について相当の知見を有することから社外取締役や社外監査役候補として経営者から注目を集める時代となりました。

公認会計士の皆さんとしても、自身のこれまでの業務経験や専門家としての知見を活かす場面として企業経営に参画することは高いやりがいや充実感が得られる貴重な機会となることでしょう。

では公認会計士が社外役員として選任されるためには、どのような道筋があるのか考えてみたいと思います。

2.社外役員になるための3つの道筋

(1)自ら声を掛けられる人脈作り

社外役員となる道筋の一つに企業経営者から直接、社外役員への就任相談を受けることがあげられます。

上述したように、今や取締役会や監査役会において社外役員が求められる時代です。そのため経営者としても「当社に合った社外役員はいないだろうか」と常に探している状況にあります。

これは既存の上場会社はもちろん、これから上場を目指すようなスタートアップ企業においても同様で、上場準備段階から社外役員候補を求めている状況です。

特に上場準備中の会社ではコーポレートガバナンス・コードや会社法で社外役員が求められる以上に、自社の成長や上場を達成するために企業経営に関する豊富な経験や専門的な助言を求めていることから「経験豊富な方を、ぜひ社外役員として迎え入れたい」という高い意欲を持つ経営者が多いです。

そのような経営者に声をかけられるには、企業経営者との出会いや信頼関係を構築することが求められます。

例えば、経営者が集まるセミナーや交流会、イベントに積極的に参加したり、自らセミナー講師や書籍出版、ブログ執筆等により情報発信をしたり、コミュニティに参加することで直接経営者と親しくなり、その結果、会社経営や社外役員就任の相談を受けることがあります。

しかしながら、せっかく企業経営者と直接出会えたとしても、ただ名刺交換をして挨拶で済んでしまっては、その場限りの出会いで終わってしまいます。少ない時間でもしっかりと相手の会社のビジネスモデルや事業環境を聞いたり、自身の実績や経験、自分自身が仕事を通じて貢献できること等を伝えたりして、経営者から信頼を得ることが必要でしょう。

経営者から社外役員候補者としてみてもらう視点としては、例えば、「この方は公認会計士の方なのだな。しかし話していると会計の知識のみならず、最新のビジネスモデルや企業経営、M&Aや社会情勢の動きについても詳しく、頼もしい方だな」と感じてもらうことや、上場を目指す経営者であれば「この方はIPOについて大変詳しい方だ。今後もぜひIPOについて相談していきたい」などと感じてもらうことで、社外役員就任への機会となるでしょう。

お話をした経営者が直接社外役員を必要としていない場合でも、別の機会に「わたしの知人経営者が社外役員を探しています」と相談をいただけることも十分あり得ます。一つひとつの出会いを大切にすることが、将来の社外役員への信頼づくりとなるための道といえるでしょう。

(2)紹介を受ける実績作り

社外役員就任の道筋としては、直接経営者から社外役員の相談をいただく以外のケースもあるでしょう。例えば、証券会社やベンチャーキャピタル、またこれまで(現在も)勤務をしていた監査法人、会計事務所、勤めていた会社から、社外役員就任の相談を受けることも多くあります。

これだけ社外役員の注目が高まる中、多くの証券会社やベンチャーキャピタルといった上場支援をされる方々も企業経営者同様、常に社外役員候補者を探しています

そのため、仕事を通じて出会う人々から高い信頼を得られるよう、常に最新の会計基準や会社法はもちろん、コーポレートガバナンス・コードや最近で言えばSDGs、TCFDなどを巡る社会情勢にも強い関心を持ち、実力を積んでおきましょう。

また上場企業においても社外役員候補者は常に求められていることから、経営者は監査法人や会計事務所に社外役員候補者の相談をしていることが多く見受けられます。

筆者が知人(監査法人勤務者)から聞いた話では、上司から「○○(別の)監査法人から、『クライアント経営者から社外役員を探しているという相談を受けたので、当監査法人から誰か紹介いただきたい、という話が来ているのだが関心は無いか』」と社外役員就任の機会をいただけた、とのことでした。

また、ここでもやはりセミナー講師やコラム執筆、出版などの実績も、就任への有力な機会づくりになります(編注)。多くの方から認めていただけるよう、多方面で業務経験を積みあげていきましょう。

(編注)
ジャスネットではセミナー講師、コラム執筆に関しては会計士の方々に門戸を開いています。出版に関しても、書籍企画案をゼロから共同で制作し出版社を紹介するサービス(無料)を整えています。【メール送信先】jaas@jusnet.co.jp

(3)公認会計士協会への登録や人材エージェントへ相談

日本公認会計士協会においては、社外役員候補者の紹介制度があります。

公認会計士の皆さんは、こちらの紹介制度に登録をすることで、社外役員をもとめる企業からの紹介をうける機会を得ることができます。

また、日本公認会計士協会では公認会計士社外役員ネットワークもあり、研修会等も実施しております。

社外役員就任を希望される公認会計士の方はぜひ、こちらの紹介制度への登録及び公認会計士社外役員ネットワークに加入を検討してみてください。

また、人材エージェントにも社外役員希望の相談をすることも社外役員就任のきっかけとなります。

人材エージェントは常に多くの企業の求人情報を保有しております。人材エージェントの方にご自身の実績等を伝え、社外役員の機会があればお声がけいただけるようあらかじめ登録をしておきましょう。なおジャスネットコミュニケーションズでは会計士を対象に、非常勤役員の紹介サービスをスタートしています。

3.終わりに

近年、企業経営を取り巻く環境は激動の時代を迎え企業経営者にとっては頼れる社外役員の存在が不可欠といえる時代となりました。

今後も企業に求められるガバナンスはますます厳しくなるでしょう。

本コラムをきっかけに公認会計士の皆さんが社外役員として活躍され、日本企業のガバナンス強化や日本経済の発展に寄与することを祈念し、結びに変えさせていただきます。

執筆者プロフィール

江黒 崇史(えぐろ たかふみ)
公認会計士 江黒公認会計事務所代表/株式会社E-FAS 代表取締役

1999年3月早稲田大学商学部卒業。
2001年公認会計士二次試験合格。
2001年10月から2004年まで監査法人トーマツにおいて製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にITベンチャー企業の取締役CFOとして、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より株式会社アーケイディア・グループに入社。会計コンサル業務を中心にグループである税理士法人アーケイディア、清和監査法人の業務も担当。
2014年7月に江黒公認会計士事務所を設立し会計コンサルティング、IPOコンサルティング、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
2015年2月に株式会社E-FASを設立、代表取締役に就任しIPOコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事している。
またテラ株式会社、株式会社タウ、他複数社の社外役員を務める。

関連サイト

アドレナリン会計士江黒崇史のブログ
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