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東証プライム、1841社上場 基準厳しく 新陳代謝狙う。1部の8割強が東証プライム移行、改革道半ば

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日本経済新聞 朝刊2022/1/12
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB113YR0R10C22A1000000/

■4月4日に実施する株式市場再編後の全上場企業の所属先を公表。「プライム」には1841社が上場。

(出典:日本経済新聞 朝刊2022/1/12)

東京証券取引所は11日、4月4日に実施する株式市場再編後の全上場企業の所属先を公表した。実質最上位の「プライム」には1841社が上場する。東証1部のうち8割強が移行し、プライム以外に移る企業は2割弱にとどまった。再編には上場基準を厳しくして新陳代謝を促す狙いがある。ただ、基準を満たさなくてもプライムに上場できる例外規定を約300社が活用しており、活性化に向け課題を残した。

東証の中核市場に及ぶ再編は2部を新設した1961年以来60年ぶり。新興市場も集約し4市場を3市場にする。東証は「プライム」を世界経済をリードする企業向けと位置づける。国内経済の中核「スタンダード」、高い成長性を持つ「グロース」に整理し、投資家にわかりやすくする。

一連の再編で上場と廃止の基準を厳しくした。これまでのルールでは東証1部に時価総額40億円で上場でき、10億円を下回らないと上場廃止にならなかった。プライムでは上場も廃止も一律に流通時価総額100億円(時価総額に換算すると約250億円になる企業が多い)以上を求めた。時価総額が数百億円の中堅企業は上場廃止のリスクと隣り合わせになる。

■各社の行先は?

焦点だったプライムの基準を満たさない東証1部上場600社強は行き先が分かれた。

296社は「上場維持基準の適合に向けた計画書」を開示して、経過措置の適用を受けながらプライムに上場する。東証は達成の期限を定めていない。計画書の内容を精査した上で有識者らを交えて決める方針だ。最長で10年の計画もある。

残りの321社はプライムを選ばずスタンダードに移る。親会社が株式を多く保有し流通株の比率が基準を満たさない企業や、事業範囲が国内のためプライムを目指さない例が多い。プライムの基準を満たしていてもスタンダードを選んだ東証1部企業も23社あった。大正製薬ホールディングスは「目指す姿に一致している」とする。

東証1部の上場社数はこの10年で3割増えた。一方、米国では90年代後半のピークから約4割減少した。低収益企業が市場から退出を迫られたり買収されたりと新陳代謝が活発で、経済拡大の活力になっている。

東証再編では市場の再設計を通じて企業を動機づける。プライム企業にはコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改定して社外取締役3分の1以上など高い基準を求めた。有望企業を生んで新陳代謝を高めるには「国を挙げたグロース活性化策が不可欠」(レオス・キャピタルワークスの藤野英人会長兼社長)との指摘も多い。

改革は道半ばだ。期限のない経過措置で実効性は弱まった。「成長ストーリーを描けている適用企業は極めて少ない」(大手監査法人)。「優等生100社程度を選んでプライムと呼び、その下の企業群が目指すような仕組みにしないと市場区分をつくった意味がない。ガバナンスの強化が必要」(日本取締役協会・宮内義彦会長)と厳格化を求める声もある。

■会計士の目線

(1)改正の目玉、上場維持基準が上場時の時価総額と同じ基準になる

今回は、東京証券取引所の市場再編がIPOに与える影響についてレビューしていきたい。

時価総額基準だけを見てみると、従来の基準では、上場するときは市場により、40~250億円の時価総額が必要になるにもかかわらず、上場廃止基準は、流通株式時価総額の基準では、東証一部・二部で5億円、JASDAQ・東証マザーズでは2.5~5億円などと、上場基準と上場廃止(維持)基準が大幅に異なっている。

今回の市場再編では、上場するときの時価総額の基準などが大きく変わるところはないが、改正の目玉の一つである上場維持基準が上場時の時価総額と同じ基準になったことで、既存上場会社だけでなくIPOを目指している会社にも激震が走っている。

(2)IPOのハードルは高くなる?

どういうことか説明すると、これまでIPOを目指す企業は、他の基準をクリアしている前提で、上場時の時価総額基準を満たしているかどうかを確認して上場申請すればよかった。しかし、今後は上場時の基準と同じである上場維持基準も併せて考慮して上場申請しなければならなくなった。したがって、上場した後すぐに上場維持基準に引っかかるような時価総額で上場するということができず、上場基準よりもかなり高い時価総額で上場をすることが求められるようになってきたのである。

例えば、JASDAQを目指している会社は、これまでの基準では経常利益レベルで、3~5億円程度を目指して上場準備をしていた。しかし、市場再編により上場維持基準が導入されたことにより、引き受け証券会社から8~10億円レベルの経常利益を求められるようになったと巷では噂になっている。

JASDAQ上場を目指す企業ばかりではなく、その他の東証市場を目指す企業にも同様のことがいえるようなIPO環境になってきており、IPOへのハードルは益々高いものになってきている。

(3)IPOの登竜門となる東京プロマーケット市場

また、東証マザーズへ上場する会社についても、過去は大幅な赤字でも成長性を認められて上場していくケースが目立っていたが、昨今では、原則的に上場申請期に赤字見込みの会社は上場できていない。過去1~2年内の上場実績を調べてもらえれば明白である。上場申請期において赤字見込みで上場している会社は極めて少ない。

東証としては、世界各国の上場市場と競争していかなければならないため、より高い基準を設定し、より高い基準を満たしたエクセレントカンパニーに上場してもらいたい。といったところだろうか。

東証は世界基準の上場市場を準備する一方で、東京プロマーケット市場*をIPOのための登竜門と位置付け始めている。

2022年1月13日現在で47社だが、2年程度で100社をこえ、東京プロマーケット市場から東証でけでなく、福岡証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所へIPOしていく企業がどんどん出てくる予測である。

実際に昨年は東京プロマーケット市場から福岡証券取引所Qボードに2社上場しており、数年前には、名古屋証券取引所セントレックスに1社上場している。過去においては、ジャスダックや東証マザーズへの上場実績もあり、これからの中小・中堅企業のIPOを下支えする市場として成長著しい市場といえる。

*東京プロマーケット市場は、正式名称「TOKYO PRO Market(略称TPM)」のことであり、東証が運営する株式市場の1つで、2009年に新たに開設されました。

大きな特徴は、“プロ投資家(=特定投資家)向け”の株式市場であること。東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQのような一般市場の場合は、個人でも法人(企業)でも、誰もが投資家として自由に市場に参加する(株を買う)ことができますが、TOKYO PRO Marketは、株を売買いできる投資家を、株式投資の知識や経験が豊富なプロ投資家(=特定投資家)に限定しています。プロ投資家(=特定投資家)しか参加できないようにすることで、多くの人々が参加する一般市場よりも柔軟な上場基準(制度設計)が可能となっており、資金調達はできなくてもオーナーシップを維持したい企業など、幅広い目的での活用が広がっている。

現在、TOKYO PRO Marketに上場している企業数は、ほかの市場と比べてまだ少ないが、TOKYO PRO Marketに新しく上場する企業の数は右肩上がりで増加してる。

多く中小企業に門戸を開いている株式市場として、TOKYO PRO Marketが注目されている。

執筆者プロフィール

新開 智之(しんかい ともゆき)
公認会計士、監査法人コスモス統括代表社員

平成4年3月岐阜大学教育学部卒業、平成10年3月公認会計士試験第3次試験合格後、社員、代表社員を経て、令和元年6月監査法人コスモス統括代表社員就任。会計監査・IPO支援のほか、財務・会計・税務を中心とした業務に就いて、マネジメント・コンサルティング、企業再編コンサルティング、環境ISOの構築支援及び審査を経験してきた。現在では、中小・中堅企業の株式上場・IPO支援を積極的に実施しており、最近5年間で11社を東京プロマーケット市場へ上場支援し、特に東京プロマーケット市場から一般市場へのステップアップ上場への支援にも積極的に活動中。

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