筆者はかつて公認会計士清風会(50年以上続く独立公認会計士の会合)の代表世話人を務めさせていただいたり、今も公認会計士世田谷会で幹事を拝命している等の環境があるため、「これから独立しようとする若手の公認会計士」の方にお目にかかることがあります。
そのような公認会計士の多くから、「相続税を担ってみたい」という声をお聞きします。
正直なところ、監査法人どっぷりだった公認会計士が、いったん税理士法人等へ転職をする等のキャリアを挟まずに、おそらくそれまでの業務で担ったことがないであろう相続税をいきなり担うって、いかがなものかという気もしないでもないです。
ただ、諸事情で相続税業務をしなければならない方もおられるはず。
筆者も「初めて相続税を担う」税理士の方から不動産について質問されることもありますので、ここでは簡単に「初めて相続税を担う税理士(公認会計士)」向けに、不動産に関して最低限しておきたい準備を整理したいと思います。
目次
1 まず、不動産登記簿の見方を学ぼう
監査法人にどっぷりの方だったりすると、不動産登記簿(登記事項)を見たことがないという方も多いのではないでしょうか。
簡単に言うと、表題部…その不動産がどのような不動産か、甲区…所有権に関する事項、乙区…その他の権利〔抵当権〕等に関する事項なのですが、見方がわからないと話になりません。
2 法務局備え付けの公図、地積測量図、建物図面の見方も学ぼう
登記された不動産がどこにあるのかを示したのが公図、その土地に測量が入っている場合にその内容を記録したのが地積測量図、建物の状況を記録したのが建物図面です。これらの見方も学んでおきましょう。
3 住宅地図、インターネット登記情報サービスの設備の用意を
住宅地図は、1/1500等の縮尺で示した地図です。こちらか、専門の業者が有料で全国の任意の場所の住宅地図をパソコンからダウンロードで取得できるサービスを講じており、この設定は不可欠でしょう。
また、本来は法務局で取得する登記事項や公図、地積測量図、建物図面もインターネット登記情報サービスで取得できます(有料)ので、その設置も準備すべきでしょう。
4 隣接士業のあても、できれば作っておくべし
一口に相続税と言っても、税理士ができる部分は一部です。
例えば相続登記をしたいとなければ司法書士の先生が必要ですし、遺産争いとなれば弁護士の出番です。また、遺産分割協議書の作成となれば、税務が絡めば実務上は税理士が作成する場合もありますが、弁護士か、登記が絡む場合は司法書士に委ねた方がより堅い場合もあるでしょう。あるいは、お客様が土地を売却したいとなれば宅建業者も必要ですが、普段から信頼関係のある宅建業者でないとなかなか任せづらいのが実態です。
無理やり開拓の必要はないですが、お客様に相談を受けた場合に簡単に紹介のできる隣接士業のあてを作っておくことは大切でしょう。
以上、簡単にまとめてみましたが、実はこれ、相続税に強い税理士事務所に転職する際も役立つ話です。ぜひ皆様の参考にしていただければと思います。