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【完全解説】公認会計士の仕事内容(監査の1日)とは?年間スケジュールから1日の流れまで現役公認会計士が詳しく解説

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ジャスネットコミュニケーションズ エグゼクティブエージェント
公認会計士 齊藤健太郎

公認会計士の仕事といえば「監査」が代表的ですが、その中身やスケジュール、実際の働き方については意外と知られていません。

本記事では、公認会計士として監査業務に従事する筆者が、年間スケジュール・時期ごとの業務内容・1日の流れを具体的に解説します。

繁忙期・閑散期のリアルな働き方から、代表的な監査手続き(棚卸立会・現金実査・残高確認)までを網羅。これから公認会計士を目指す方、また現職の方にも役立つ実務ガイドです。

目次

■ 公認会計士の監査業務とは

公認会計士の最も重要な独占業務である監査業務は、企業が作成した財務諸表の適正性を第三者の立場から検証し、投資家をはじめとする利害関係者に信頼性を保証する業務です。

(1)監査の社会的意義

企業の経営者は投資家に対して正しい財務情報を開示する責任(アカウンタビリティ)を負っていますが、自ら作成した情報の正しさを自分で証明することはできません。そこで、独立した第三者である公認会計士が専門的な知識と経験に基づいて企業の財務諸表を検証し、「監査報告書」として監査意見を表明します。

(2)監査対象企業い

公認会計士が行う監査は主に法律で決められますが、こうした何らかの法律に基づいて実施される監査を法定監査と言います。法定監査の対になる監査のことを任意監査と言いますが、任意監査は必ずしも公認会計士による監査が必要なわけではありません。

しかしながら、任意監査を行う場合も公認会計士によって行われることが多いのは、これは公認会計士が行う監査があるべき監査の姿や監査対象の知見が十分であると見込まれること、公認会計士にお墨付きをもらうことが、社会の信頼を獲得しやすいといったメリットが期待されるからです。

こうした法定監査には以下のようなものがあります。

  1. 上場企業:金融商品取引法に基づく監査
  2. 大会社:会社法に基づく監査
  3. 学校法人・社会福祉法人:特別法に基づく監査
  4. 地方公共団体:地方自治法に基づく監査

その他に、労働者派遣事業の申請、電気事業の部門別収支の監査など様々な業法に伴う公認会計士監査があります。

■ 監査業務の年間スケジュール

ここでは、一般的な3月決算の上場企業を基準とした公認会計士の年間業務スケジュールは以下の通りになります。

(1)年間業務サイクル

年間業務のサイクルを四半期に分け、業務強度をそれぞれランク付けすると下記の通りになります。

時期 主要業務 業務強度
4月~6月 繁忙期(期末監査・決算監査) ★★★★★
7月~9月 期中監査・第1四半期レビュー ★★☆☆☆
10月~12月 中間レビュー・第2四半期レビュー ★★★☆☆
1月~3月 期中監査・第3四半期レビュー ★★★☆☆

(2)年間の業務の流れ

こうした3月決算会社の監査業務を年間通してみてみる下記の通りになります。

①7月:監査計画の策定、キックオフミーティング
前事業年度の有価証券報告書の監査報告書の提出が終わり、来年度の年間監査計画を策定するとともに、企業と来年に向けた監査実施に向けたキックオフを行います。

この段階で来年度の見積りを提出しますが、この段階で折り合いがつかず監査法人に変更に至ってしまうことも稀にあります。

②7月~8月:期中監査・第1四半期レビュー
第1四半期のレビューは、任意になりました。つまり、この時期は1Qの決算をもとにレビューが行われるのが通常でしたが、一部の例外を除き、レビュー結果報告は義務ではなくなりました。

もっとも1Qの業績を軸に財務分析や期中監査は行われるという点では業務量はそれほど変わらず、監査法人内向けの手続きが減少したという感じでしょうか。この時期は主に企業の全体分析や通期を見越した企業のリスク評価が行われます。

③10月~11月:中間レビュー(第2四半期)
第2四半期は法的には、半期報告書の提出が義務付けられており、また取引所の規則でも中間決算短信の開示も行われます。

この時期は、監査法人として第2四半期でのレビュー意見が必要となるのである程度の手厚い手続きが行われます。もっとも昔の中間監査のように中間期末を基準とした残高確認状の送付や実査などは、必須ではなく、リスクに応じて行われるといった感じでしょうか。

また、企業の全体分析や通期を見越した企業のリスク評価の見直しなどが行われます。企業によって差異はありますが、内部統制の評価はこのころには開始されています。

④12月~3月:期中監査および第3四半期レビュー、内部統制監査
第3四半期のレビューは、第1四半期と同じく任意になりました。一部の例外を除き、レビュー結果報告は義務ではなくなりましたが、1月~2月の期間は、3Qの業績を軸に財務分析や期中監査は行われるという点では業務量はそれほど変わらず、監査法人内向けの手続きが減少したという感じかと思います。

また順調に作業が進むならば、内部統制評価についてはこの時期に作業の終了が見えてきます。

⑤4月~6月:期末監査(繁忙期のピーク)
第4四半期は、法的に有価証券報告書の提出が義務付けられており、また取引所の規則でも決算短信の開示も行われます。この時期は、監査法人としての監査報告書の提出が必要となるので手厚い手続きが行われます。

監査最終段階での企業の分析や企業のリスク評価が行われ、期末監査が実施されます。

■ 繁忙期(4~6月)の業務と1日のスケジュール

公認会計士の年間業務のサイクルは上記のようになりますが、それでは繁忙期はどのように過ごしているのでしょうか。繁忙期の作業内容と1日の典型的なスケジュールを説明していきます。

(1)繁忙期の主要業務

繁忙期は公認会計士にとって最も忙しい時期で、3月決算企業の期末監査業務が集中します。
4月から6月までの主な業務内容は羅列していくと下記の通りになります。

【4月(3月末含む)主に期末時点の手続と決算監査の開始】

  1. 現金実査
  2. 棚卸立会(3月末に実施)
  3. 残高確認上の送付
  4. 決算残高の検証
  5. 売上・仕入の期間帰属テスト

【5月(監査報告書作成)】

  1. 会社法監査報告書の作成・審査
  2. 経営者確認書の作成・受領
  3. 計算書類の検証
  4. 決算短信の確認
  5. 株主総会資料の確認
  6. 監査調書のレビュー

【6月(金商法監査完了)】

  1. 有価証券報告書の検証
  2. 金融商品取引法監査報告書の作成・審査
  3. 経営者確認書の作成・受領
  4. 四半期レビュー報告書の準備
  5. 次年度監査計画の検討

(2)繁忙期の1日

【繁忙期の1日のスケジュール例-スタッフレベル】

時間帯 内容
8:30 出社・メール確認
9:00 チーム内打ち合わせ、当日の作業スケジュール確認
10:00 現場監査作業(担当者ヒアリング・仕訳テストの実施
・証憑突合作業等)
12:00 昼食(外出先やコンビニ)
13:00 引き続き現場監査作業
17:30 チーム内で進捗報告・レビュー
・監査調書の完成

監査期間中は、監査対象によって様々な変化がありますが、おおむね上記のような作業が日々行われることになります。

■ 期中監査(7~9月・12月~3月)の業務詳細

期中監査は期末監査の効率化と監査リスクの早期把握を目的として実施されます。この時期の業務は比較的落ち着いており、時間に余裕があることから、深い分析と計画的な監査手続きが可能です。また、こうした時期に地方の工場の現場視察なども行われます。

(1)主要な期中監査業務

期中監査の主要な業務は、分析や内部統制評価が主となりますが、期末監査の手間を省くことを目的として手厚い実証手続きを行うこともあります。

①内部統制の評価・テスト
統制環境の評価、統制活動のテスト、リスク評価手続きを行い、また事業理解の更新をします。

②重要な虚偽表示リスクの評価
不正リスクの再評価、会計上の見積りリスクの検討、IT統制リスクの評価なども行います。

(2)期中監査期間の1日

【期中監査の1日のスケジュール例-スタッフレベル】

時間帯 内容
8:30 出社・メール確認
9:00 チーム内打ち合わせ、当日の作業スケジュール確認
10:00 内部統制テスト
売上プロセスの統制テスト
購買プロセスの統制テスト
人件費の計上プロセスの確認
12:00 昼食(外出先やコンビニ)
13:00 引き続き内部統制テスト作業が行われ以下のような
手続が行われます。
・実証手続きの準備

(3)中間レビュー(10~12月)の実務内容

中間レビューは監査よりも限定的な保証を提供する業務です。監査ほど詳細な検証は行いませんが、重要な事項について質問・分析的手続きを中心とした検証を実施します。また、企業のリスクに応じて監査と同様の手続を行うこともあります。

①分析的手続き
比較分析として、前年同期比較、予算実績比較、月次推移分析、業界平均との比較など様々観点での分析を行います。

その他、比率分析として、売上総利益率の変動分析、流動比率・当座比率の推移、回転率指標の分析などがあります。

②質問・閲覧手続き
経営者などのキーマンへの質問により、重要な会計方針の変更有無、異常な取引の有無などを確認することができます。またこうした質問や書類閲覧を通じて経営者の誠実性を推し量ることになります。そのほか、後発事象の確認を行い、レビュー結果を覆るような事項がないか確認を行います。

また、取締役会議事録の確認、重要契約書の閲覧を行いガバナンス体制、今後の企業の方向性や会計処理に影響を及ぼす事項の確認を行います。
一日のスケジュールは、期末監査とそれほど変わらないので割愛します。

■ 重要な監査手続きの詳細解説(棚卸立会、現金実査、残高確認状の送付)

上記のような監査業務ですが、一部主要な監査業務が存在しています。以下は、棚卸立会、現金実査、残高確認状の送付について解説します。これらの手続は、基本的に強力な監査証拠を入手しうると評価される手続です。

このため、監査の実施に当たっては、監査手続で入手される資料の証拠力が落ちないように気を付けなければ実施しなければなりません。

(1)棚卸立会

①棚卸立会の目的
棚卸資産の実在性と網羅性を確認するため、会社が実施する棚卸業務に公認会計士が立ち会い、適切に実施されているかを検証します。

基本的に棚卸立会は、期末時点に実施しないと意味がないので、時期的な実施可能性を検証することとなります。年末年始に働くなんてことがあるのも、こうした立会の手続があることによります。 立会手続きの詳細は以下の通りです。

②事前準備

  1. 棚卸実施計画書の入手・検討
  2. 前期棚卸立会結果の確認
  3. 立会計画の策定

③当日の立会業務

(ⅰ)開始時確認

  1. 棚卸責任者との打ち合わせ
  2. 棚卸手順書の確認
  3. カットオフ手続きの確認

(ⅱ)実地確認

  1. 重要な棚卸資産の実査
  2. カウント手順の観察
  3. 棚卸表への正確な記載確認

(ⅲ)テストカウント

  1. 独自のカウント実施
  2. 会社カウントとの照合
  3. 差異原因の調査

(2)現金実査

①現金実査の目的
帳簿上の現金残高と実際の現金有高が一致しているかを確認し、現金の実在性を検証します。現金勘定は、どんな企業でもごまかしがきかないので、通帳の実査・突合と合わせて実施することが多いです。

実査手続きの流れは以下の通りです。

②事前準備

  1. 実査日時の調整
  2. 現金管理責任者との打ち合わせ

③実査当日の手続き

(ⅰ)金庫・レジの確認

  1. 現金保管場所の確認
  2. 通帳の保管場所の確認
  3. 現金管理責任者の立会要請
  4. 実査開始時刻の記録

(ⅱ)現金カウント

  1. 紙幣・硬貨の種別カウント
  2. 外貨現金の確認
  3. 小切手・商品券等の確認

(ⅲ)帳簿残高との照合

  1. 現金出納帳残高の確認
  2. 差異の有無と原因調査
  3. 実査結果調書の作成

(3)残高確認状の送付

①残高確認状送付の目的
第三者(取引先・金融機関等)から直接回答を得ることで、会社が作成した帳簿記録の実在性と正確性を検証します。

②確認状の種類と対象
残高確認状を送付することになる主な勘定科目は下記の通りです。そのほかに、棚卸資産や未払金、前受金、差入保証金を対象に実施することもあります。

(ⅰ)売掛金確認状

  1. 主要取引先への残高確認
  2. 取引条件の確認
  3. 債権の実在性検証

(ⅱ)買掛金確認状

  1. 主要仕入先への残高確認
  2. 未計上債務の有無確認

(ⅲ)銀行確認状

  1. 預金残高の確認
  2. 借入金残高・条件の確認
  3. 担保・保証の状況確認

(ⅳ)弁護士確認状

  1. 訴訟案件の有無確認
  2. 偶発債務の調査

③残高確認状手続きのスケジュール
残高確認状の送付に当たっては、選択が恣意的にならないように事前の準備が必要であり、また回収した回答も有効がどうか判断しなければなりません。

おおよそ以下のスケジュールで対応することとなります。

【1月~2月(確認状準備期)】

  1. 確認先リストの作成
  2. 確認状文案の検討
  3. クライアントとの調整

【3月(残高確認状送付)】

  1. 残高確認状の印刷・発送
  2. 送付記録の管理
  3. 回答期限の設定

【4月~5月(回答分析期)】

  1. 回答内容の分析
  2. 差異事項の調査
  3. 未回答先への督促
  4. 代替手続きの実施

■ 公認会計士の将来性と市場価値

公認会計士の監査業務は、時期により業務内容と忙しさが大きく変動する特徴があります。特に繁忙期(4~6月)は長時間労働が続く一方で、期中監査や中間レビューの時期は比較的落ち着いた環境で深い専門性を磨くことができると思われます。

監査業務を通じて企業の財務情報の信頼性を保証する公認会計士の役割は、資本市場の健全な発展にとって不可欠です。AI化の進展により業務内容は変化・進化していますが、高度な専門判断を要する業務や企業の経営支援業務において、公認会計士の価値は今後も維持し続けるでしょう。

これから公認会計士を目指す方や監査業務に興味をお持ちの方は、この記事を参考に具体的なキャリアプランを描いていただければと思います。今回紹介した監査業務の経験は、その後のキャリアにおいて貴重な財産となることは間違いありません。

執筆者プロフィール

齊藤 健太郎(さいとう けんたろう)
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社 エグゼクティブエージェント
公認会計士・税理士/齊藤公認会計士事務所

横浜国立大学経済学部卒業
横浜国立大学国際経済法学研究科修了:専攻は会社法

2003/2-2006/9
エイチエス証券株式会社引受審査部所属
2006/9-2010/7
あずさ監査法人第5事業部(IPO専門部署)所属
2010/8-2012/10
あずさ監査法人 IT監査部所属
2012/10-2017/11
LINE株式会社 内部監査室 マネージャー
2017/11-2020/9
ライフアンドデザイングループ 取締役CFO
2020/10-2023/1
日本M&Aセンター TPM事業部 上場審査部 JQS

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