■監査法人時代の「働き方」―繁忙期・閑散期のリアルとキャリアごとの変化
――監査法人時代の1日のスケジュールや、繁忙期と閑散期での働き方の違いを教えてください。
4月から6月までがもっとも忙しい時期で、3月決算企業の期末監査業務が集中します。4月中旬(3月末含む)以降から期末監査が開始され、5月中旬まで続きます。そのあと会社法計算書類の監査報告書作成に関する手続き、6月は有価証券報告書の確認、金商法の監査報告書作成に関する手続きを経ておおよその作業は完了となります。
繁忙期の1日のスケジュールは、監査法人や監査対象会社によって多少異なりますが、以下のようなイメージ(※スタッフレベルの場合)です。
繁忙期の1日のスケジュール例
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時間帯
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内容
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9:30
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出社・メール確認
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10:00
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チーム内打ち合わせ、当日の作業スケジュール確認
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10:00以降
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現場監査作業(担当者ヒアリング・仕訳テストの実施・証憑突合作業等)
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12:00
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昼食(外出先やコンビニ)
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13:00
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引き続き現場監査作業
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17:30
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チーム内で進捗報告・レビュー
1.監査調書の取り纏め、完成
2.シニア等上長からの指摘事項対応
3.翌日の準備作業
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18:00
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業務終了・退社(もしくは残業を行う場合は継続)
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また、期末監査の効率化とリスクの早期把握を目的として期中監査は7~9月や12月~3月に四半期決算のタイミングで実施されることが多いのですが、比較的業務も落ち着いています。こうした時期には地方の工場への現場視察なども行われます。
期中監査の1日のスケジュール例
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時間帯
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内容
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9:30
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出社・メール確認
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10:00
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チーム内打ち合わせ、当日の作業スケジュール確認
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10:00以降
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内部統制テスト(各担当にあわせて1~3を実施)
1.売上プロセスの統制テスト
2.購買プロセスの統制テスト
3.人件費の計上プロセスの確認
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12:00
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昼食(外出先やコンビニ)
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13:00
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引き続き内部統制テスト作業が行われ以下のような手続が行われます。
1.実証手続きの準備
2.サンプル選定作業
3.分析的手続きの実施
4.監査調書の作成
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17:30
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チーム内で進捗報告・レビュー
1.監査調書の取り纏め、完成
2.シニア等上長からの指摘事項対応
3.翌日の準備作業
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18:30
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クライアントとの最終確認
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20:00
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業務終了・退社(もしくは残業)
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――監査法人時代、大変だった業務はどのようなものでしたか。
大変さは監査法人内の職位によって様々だと思いますが、一般的に言われるのは、監査証拠が集まらないケースでしょうか。その理由はさまざまで、「会計システムを変更した」というクライアントの場合、システムを切り替えたことで、それまで実施できていた確認作業ができなくなることがあります。そうなると、別の方法でどのように監査証拠を収集するかを検討しなければなりません。また、上場準備企業で見られるケースでは、本来、会計帳簿には根拠となる資料が存在するはずであるのに、実際には資料そのものが整備されていないこともあります。そうなってくると「なぜこの仕訳を計上したのか」「この数字の根拠は何か」という確認から始めなければならないケースも少なくありません。
その他に、粉飾決算や不正会計の疑いが見つかった場合も大変です。問題が発覚すると、関連事項から次々と判明することが多く、またどこまで監査手続を踏めば十分なのか判断が難しくなります。さらに、どのような処理を行えば適正な状態に戻せるのかを検討する必要もあります。
監査業務は、大きな問題がなければ比較的計画どおりに進みます。しかし、一度問題が発生すると想定していた工数が大幅に増加し、追加の人員投入が必要になるので、そうならないように内部統制をきちんと見る、期中監査をおろそかにしないといった措置が必要になるのです。
――監査法人内でのキャリア(スタッフ→シニア→マネージャーなど)によって、働き方はどう変わりますか。
スタッフが割り当てられた科目に対する監査、シニアから全体の取り纏め作業が必要になってきます。マネージャーになると、人を差配して仕事を割り当て、クライアントと折衝する業務がメインになってくるので、「仕事が楽しくなる」という人もいます。
シニア以降はインチャージ(現場責任者)になる可能性があり、科目ごとに仕事を割り振り、チームメンバーから聞いた話を整理して会社側に伝えるという役割が加わります。大手監査法人におけるインチャージの場合は、現場の取りまとめの他にスタッフの教育も入ってくるので、「調書はどう作るのか」という考え方を指導することもあるでしょう。
■監査法人から事業会社への転職、CFOへ。監査の経験はどこまで活きるのか
――事業会社・CFOを目指そうと思ったきっかけは何ですか。
大手監査法人から事業会社へ転身した理由は、成長企業に内部の立場から主体的に関わりたいと思ったからです。監査法人にいると、どうしても外部の専門家という立場になります。前々から一当事者として上場準備に関わり、事業会社で働いてみたいという思いがありました。
CFOを目指したのは、単純に会計システムを自分の手で扱ってみたかったところが主な理由です。実際に仕訳を入力し、財務諸表を作成するところまで経験してみたかったのです。
会計士で事業会社を目指す人は、自らの手で事業に深く関わりたいという志向を持つ人が多いと思います。その中で、自分の強みをどのように活かせるかを考えるとCFOとして貢献できるのではないかと考えるに至るケースは多いと思います。
――監査法人での監査の知識・経験は、CFOの仕事でどう活きますか。
上場企業や歴史のある企業のCFOは、社内で経験を積んだ人材が昇格して就任するケースが一般的です。公認会計士がCFOを目指す場合は、上場準備企業のCFOに就くケースが比較的多いと感じています。上場準備企業のCFOは、内部統制が未整備な状態からあるべき姿になるように作り上げていくことが必要なので、そうした意味では、上場準備企業のCFOは公認会計士にとって親和性の高いポジションの一つといえるでしょう。
監査業務では、企業が作成した財務諸表から遡って仕訳、元となる証憑を検証します。そのため、実務上は会計システムへの入力作業こそ行わないものの、財務数値がどのような過程を経て作られるのかを深く理解しています。
実際入力された仕訳を確認し、財務諸表の数値に不自然な点がないかを確認するという作業は、CFOの仕事にも共通しています。これは、監査で培った視点がそのまま活かせる部分です。
例えば、試算表を見れば、「ここは少し違和感がある」「本来であれば棚卸資産が増加しているはずなのに、なぜ反映されていないのだろう」といった点に気付くことができます。そして、その原因を探り、修正対応につなげることもできます。監査で培った経験は、CFOとして業務を推進する上で大きな強みになります。
「会計士は経理業務ができない」といった意見を目にすることもあります。しかし、私自身はCFO就任後、およそ1週間で会計システムの操作を習得することができました。そうした経験からも、公認会計士とCFOの仕事には高い親和性があると感じています。
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■非常勤は会計士の「セーフティネット」
――監査法人の非常勤の仕事を選んだのはどのような経緯からですか。
事業会社から独立しようと考えた際、「どのように安定した収入を確保するのか」最初に直面する大きな課題です。こうしたことを考えるとなかなか決断できませんでした。そこで何人かの先輩や元同僚などに相談したところ、監査法人の非常勤業務をベースにしながら、自分のやりたい仕事を組み合わせて働いている会計士が多いことを知りました。
独立当初は2〜3件の監査法人の非常勤業務を掛け持ちしながら、コンサルティングや監査役の仕事も並行して引き受けていました。その後、小規模監査法人ですが、パートナーに就任したため、非常勤の仕事は終了しました。
――非常勤の求人はどのように探しましたか。
日本公認会計士協会の「JICPA Career Navi(キャリアナビ)」に掲載されていた非常勤求人に応募しました。
※現在は、キャリアナビの後継サービスとして「公認会計士求人情報」が運用されています。
https://jicpa.or.jp/about/classifiedad/classifiedad.html
非常勤の仕事に対するニーズは高いと思いますが、求人の多くが一般には公開されていません。上記の「公認会計士求人情報」や会計・監査分野に特化した転職エージェントで募集されることもありますが、会計士同士のネットワークを通じて仕事を紹介されるケースのほうがむしろ多いと思います。
――非常勤では、どのような仕事を、どの程度のペースでこなしていましたか。
3月決算の会社を担当していたときは、4月下旬から5月半ばまでの繁忙期は毎日勤務していました。決算月が異なる会社も合わせて担当していると、繁忙期がずれて入ってくることがあります。多いときで月に10〜15営業日ほどアサインが入りましたが、少ないときは3日程度もありましたが、そういうときには別のコンサルティング業務のスケジュールを入れていたため、忙し過ぎず、きちんと仕事をこなせる量になるように調整してました。
非常勤の場合は、契約している監査法人に対して「この日は対応可能です」「今月は余裕があるので、通常より多めにアサインいただいて構いません」といった形で希望を伝え、業務量を調整することも可能です。
勤務形態については、現場に行くことも多かったです。監査法人やクライアント側の要請でリモートワークをすることもありますが、非常勤といってもフルリモートで働くのは、実態としては難しいと思います。
――非常勤という働き方のメリット・デメリットを教えてください。
メリットは、働き方の自由度が高いことです。また、非常勤業務は比較的高単価な案件も多く、限られた稼働日数でも一定の収入を確保しやすい特長があります。独立直後の収入基盤として活用する人もいれば、自ら事業を立ち上げたりコンサルティング業務を行ったりする中で、収入面の安定を図るために非常勤契約を活用する人もいます。
そうした意味で、非常勤は公認会計士のキャリアにおける「セーフティネット」として重要な役割を果たしていると感じています。
さらに、業務内容が監査業務を中心とした専門領域に限定されるため、公認会計士にとっては経験を活かしやすい仕事です。比較的スムーズに業務へ入れる点も魅力の一つではないでしょうか。
一方で、デメリットは収入や働き方が安定しにくいことです。アサインがなければ収入につながりません。加えて非常勤は責任範囲が限定されることが多く、負荷が抑えられる反面、組織運営やマネジメントに深く関わる機会は少なくなります。そのため、人によっては成長実感を得にくく、スキルアップの機会が限定的だと感じることもあるでしょう。
■まとめ
――これから「会計士としての働き方」を模索する人や、CFOを目指す人、非常勤を検討している人へアドバイスをお願いします。
どんな仕事でも最初から敬遠せず、まずは積極的に関わってみることが大切だと思います。公認会計士の資格や経験は、想像以上に幅広い分野で活かすことができます。
キャリアの選択肢としては、監査法人だけでなく、内部監査、監査役、CFOなどさまざまな道があります。必ずしも一つの職種や肩書きにこだわる必要はありません。
チャンスがあれば、まずは挑戦してみる。そして経験してから、自分に合った働き方を考えていけばよいのではないでしょうか。
――監査法人でのキャリアからCFO、独立・非常勤という働き方まで、さまざまなお話を伺うことができました。本日はありがとうございました。
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