■どうして監査法人出身者が経理職で重宝されるのか
監査法人出身者が一般企業の経理部門で高く評価される理由は、その専門性の高さと実務経験の豊富さ、あるべき経理部門の姿の理解にあります。
監査業務を通じて身につけた会計基準への深い理解は、経理実務において即戦力となる強み
です。
特に、上場企業や上場準備企業においては、適正な財務報告書の作成が事業継続の生命線となります。監査法人で培った「正確性への執着」「根拠に基づく判断力」「期限を守る責任感」そしてあるべき上場企業の姿を知っているということは、経理部門が求める資質と完全に合致しています。
また、
監査業務では多様な業界の企業を担当するため、業界特有の会計処理や業務フローに関する幅広い知識を持っています。
この経験は、新しい職場でも迅速に業務に適応できる能力として高く評価されます。
さらに、
内部統制監査の経験は、企業のリスク管理や業務プロセス改善において貴重な知見
となります。経理部門では単純な記帳業務だけでなく、企業全体の財務リスクを把握し、経営陣に適切な情報を提供する役割が求められており、監査経験者はこの要求に応えられる人材として期待されています。
近年のコーポレートガバナンス強化の流れも、監査法人出身者への需要を押し上げています。投資家や取引先からの透明性要求が高まる中、財務報告の信頼性を確保できる専門人材の価値はますます高まっているのです。
■まずはチェック!監査法人の経験を活かせる求人例
【求人例①】
「急成長中のIT企業で監査経験を活かし、IPO準備の最前線で専門性を磨く」
年収: 500万円~700万円
職種: 経理部門、内部統制担当
【求められるスキル】
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監査法人での実務経験(5年程度)
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日商簿記1級または公認会計士試験合格
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決算業務、税務申告の基本知識
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Excel上級レベル、会計システム操作経験
【業務内容】
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月次・四半期・年次決算業務
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監査法人との窓口業務
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内部統制の整備・運用
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予算管理・実績分析
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税務申告書作成支援
【求人例②】
「グローバル展開する製造業で連結決算を統括。M&A案件にも携わる経営企画ポジション」
年収: 700万円~1,000万円
職種: 経営企画
【求められるスキル】
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監査法人でのマネージャー経験(10年程度)
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公認会計士資格
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IFRS、US-GAAP知識
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チームマネジメント経験
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英語力(TOEIC700点以上推奨)
【業務内容】
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経理部門の統括・管理
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連結決算業務の責任者
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経営陣への財務報告
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M&A関連業務のサポート
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内部統制システムの構築・改善
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■なぜ今が転職の絶好のタイミングなのか
現在の転職市場は、監査法人出身者にとって追い風が吹いている状況です。
どの企業も単純作業ではなく、分析や戦略立案、連結財務諸表の作成をまかせられる人材を求めています。
(1)IPO準備企業やM&Aの件数増加
特に、IPO準備企業やM&Aの件数の増加は大きなチャンスとなっています。
上場を目指す企業では、監査対応ができる経理責任者が不可欠であり、監査法人での経験は最も評価される要素
の一つです。これらの企業では、上場達成後やM&A達成後の成長とともに年収アップも期待できます。
(2)業務プロセスの見直し
コロナ禍を経て、多くの企業が業務プロセスの見直しを行っており、経理部門の効率化や自動化を進めています。このような変革期において、監査で培った業務フローの理解と改善提案能力は、企業にとって貴重な戦力となります。
(3)理想的な転職のタイミングは?
転職のタイミングとしては、
監査法人で3年以上の経験を積み、修了考査を突破した段階が理想的
です。この時点で基本的な監査スキルは身についており、かつまだ若手として柔軟性も評価されます。シニアアソシエイト以上の経験があれば、管理職候補としての採用も期待できるでしょう。
■.監査法人から一般企業への転職成功事例
転職成功事例:Tさん(29歳・男性)
大手監査法人で5年間勤務し、シニアアソシエイト(年収750万円)として製造業・IT企業の監査を担当。長時間労働に疲弊し、ワークライフバランス改善を求めて転職を決意しました。
転職では監査で培った内部統制知識と多様な業界経験をアピール。特にIPO準備企業に注力し、「上場準備における監査対応サポート」を強調。面接では具体的な監査事例を交えて経理実務への応用方法を説明しました。
最終的に東証グロース上場予定のSaaS企業の経理マネージャーとして転職成功。年収800万円(7%アップ)+ストックオプション付与。入社後は月次決算早期化プロジェクトをリードし、決算期間を15日から8日に短縮。監査対応では自身の経験を活かし、監査法人との円滑なコミュニケーションを実現しました。
転職1年後、上場達成とともに経理部長に昇進。ストックオプション価値上昇を含め実質年収1,000万円相当に到達しています。
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■年収アップをどのように実現するのか
監査法人から一般企業の経理への転職における年収アップの可能性は、転職先の選択と交渉戦略によって大きく左右されます。統計的には、適切な転職活動により10%から30%の年収アップを実現するケースが多く見られます。
(1)転職先企業の選択
年収アップの鍵となるのは、転職先企業の選択です。上場企業や外資系企業、急成長中のベンチャー企業などは、専門性の高い人材に対して相応の対価を支払う傾向があります。特に、
CFO直下のポジションや経理部門の管理職候補としての採用では、大幅な年収アップも期待できます。
また、業界選択も重要な要素です。IT、製薬、金融サービスなどの高収益業界では、経理職でも高い給与水準が設定されています。監査経験により、これらの業界の会計処理に関する知識があることは、転職時の大きなアドバンテージとなります。
(2)転職の条件交渉
転職交渉においては、自身のスキルと経験を適切に評価してもらうことが重要です。監査で担当した企業規模、業界の幅広さ、特殊な会計処理の経験などを具体的に示し、入社後の貢献可能性を明確に伝える必要があります。
さらに、株式報酬や賞与制度の充実している企業を選ぶことで、基本給以外での収入増加も見込めます。特に成長企業では、業績連動型の報酬制度により、会社の成長とともに収入も増加する可能性があります。
年収だけでなく、福利厚生や働き方の改善も含めた総合的な待遇向上を目指すことで、長期的なキャリア満足度の向上も実現できるでしょう。
■
転職成功するために、スキルの棚卸しと強みの整理を
転職成功のためには、監査法人で培ったスキルと経験を体系的に整理し、
転職先企業のニーズに合わせてアピールポイントを明確化すること
が不可欠です。
多くの転職希望者が見落としがちなのは、自身のスキルの真の価値を理解していないこと、転職先企業のニーズを踏まえた上でのアピールが必要なことです。
(1)監査業務のスキル
監査業務で身につけたスキルは、経理実務において多面的に活用できます。監査調書の結果は、経理業務のあるべき姿をまとめたものになります。
つまり、経理業務に関わると、日常の経理業務の課題を一早く把握し、業務に反映することができます。この経験は公認会計士でなければ身につかないものです。
(2)プロジェクト管理能力
プロジェクト管理能力も見逃せないスキルです。監査では限られた時間の中で多くのタスクを並行して進める必要がありますが、経理業務も同じこと。限られた時間内をチームプレーで適時開示を達成していきます。このチームプレーの監査経験は経理での月次決算や年次決算業務において大きなアドバンテージとなります。
(3)その他
各業界の監査・経理知識の幅広さも重要な差別化要素です。製造業、サービス業、IT 企業など、様々な業界の監査経験は、転職先企業の事業理解を深める上で貴重な資産となります。
■どのように面接で監査経験をアピールするのか
面接では、監査経験を経理業務における具体的な貢献に結びつけて説明することが重要です。抽象的な専門知識の羅列ではなく、
転職先企業の課題解決にどのように貢献できるかを具体的にイメージしてもらうことで、採用担当者の心を掴むことができます。
(1)STAR法を活用する
面接での効果的なアピール方法として、STAR法(Situation, Task, Action, Result)を活用することをお勧めします。監査業務での具体的な状況を設定し、担当した課題、実行したアクション、そして得られた結果を順序立てて説明することで、説得力のある回答ができます。
例えば、「クライアント企業の内部統制に重大な不備を発見した際、経営陣への報告方法を工夫し、建設的な改善提案を行った結果、翌年度の監査で大幅な改善が確認された」といった具体的なエピソードは、問題発見能力と提案力をアピールする優れた事例となります。
技術的な質問に対しては、監査での経験を経理実務に置き換えて回答することが重要です。「連結決算の経験はありますか」という質問に対して、「監査において連結財務諸表の検証を行った経験があり、消去仕訳や持分法適用の論点について深く理解している」と答えることで、実務経験としての価値をアピールできます。
(2)転職理由はネガティブな表現を避ける
監査法人から転職する理由については、ネガティブな表現を避け、新しい環境での成長への意欲を前向きに伝えることが大切です。
「監査で培った専門性や汎用性を、企業の成長により直接的に貢献できる環境で活かしたい」といった表現が適切です。
逆質問の機会も重要なアピールの場です。転職先企業の財務戦略や今後の課題について質問することで、経営への関心と専門知識をアピールできます。同時に、自身のキャリアビジョンと企業の方向性の適合性も確認できます。
■監査法人と一般企業の仕事の仕方の違い
(1)組織構造と意思決定プロセスの根本的な違い
監査法人と一般企業では、組織の成り立ちと運営方法が根本的に異なります。
監査法人は公認会計士や会計士補を中心とした専門職集団であり、アソシエイトからパートナーまでの明確なヒエラルキーが存在します。この組織では会計・監査の専門知識が最も重要な評価基準となり、クライアントから独立した第三者としての立場を維持することが求められます。
一方、一般企業は営業、製造、開発、人事など多様な部門が存在する多機能組織です。
経理部門は他の部門との横断的な連携が日常的に必要であり、企業の売上や利益向上への直接的な貢献が期待されます。
また、企業の成長に対する当事者としての主体的な参画が重要な要素となります。
(2)業務アプローチとコミュニケーションスタイルの違い
監査法人での業務は基本的に「検証・指摘」が中心となります。
監査業務はリスクの発見と問題事項の指摘が主要な役割です。コミュニケーションは監査調書や報告書などの文書化された正式なものが多く、監査期間中の短期集中的な業務スタイルが特徴的です。
これに対して一般企業では
「協働・提案」が業務の中心
となります。
「どうすれば改善できるか」という建設的なアプローチが重視され、課題の発見から解決策の実行まで一貫して担当することが期待されます。日常的な相談や情報共有といったインフォーマルなコミュニケーションが重要であり、年間を通じた継続的な業務改善への取り組みが求められます。
(3)求められるスキルと視点の転換
監査法人では専門的正確性が最も重要視されます。会計基準や監査基準への完全な準拠、潜在的な問題の早期発見能力、客観的で中立的な判断力、そして一定の品質水準を保った成果物の作成能力が評価されます。
一般企業で求められるのは事業理解力です。
数字の背景にあるビジネスモデルを理解し、理論よりも実践的な解決策を提供する能力が重要
です。また、状況に応じて優先順位を調整する柔軟性と、経営判断に必要なタイミングで情報を提供するスピード感が求められます。
(4)転職時に注意すべき適応ポイント
監査法人出身者が一般企業で避けるべきアプローチがあります。「監査の観点では」という第三者的な発言は、事業現場では受け入れられにくい傾向があります。
一般企業で評価される行動は建設的な改善提案です。「こうすればより良くなります」という前向きな提案、実用的で現実的な解決策の提供、「一緒に解決しましょう」という協働姿勢、そしてプロセスよりも結果に焦点を当てた成果重視の考え方が重要です。
(5)長期的なキャリア成功への道筋
監査法人での経験は一般企業で非常に価値のあるものですが、成功の鍵は「検証者」から「プレイヤー」への意識転換にあります。
監査で培った専門性と正確性を維持しながら、それを企業の成長と価値創造に活かす姿勢を示すことが重要です。
この転換ができれば、経理部門のリーダーとして、さらには経営陣の一員として活躍する道が開かれます。監査経験で得た深い会計知識と厳密な思考プロセスは、適切に活用されれば企業にとって非常に貴重な資産となるのです。
■まとめ:監査経験を活かした新たなキャリアの始まり
監査法人から一般企業の経理部門への転職は、適切な準備と戦略があれば、年収アップとキャリアの充実を同時に実現できる魅力的な選択肢です。監査で培った専門知識、分析力、そして幅広い業界経験は、経理職において非常に高く評価される貴重な資産なのです。
成功の鍵は、自身のスキルと経験を正確に把握し、転職先企業のニーズに合わせて効果的にアピールすることにあります。現在の転職市場は監査法人出身者にとって追い風であり専門性の高い人材への需要はさらに拡大していくことが予想されます。
転職活動においては、
単なる次の職場の年収アップだけでなく、長期的なキャリアビジョンを描いた上で転職先を選択することが重要
です。企業の成長段階、業界の将来性、組織文化との適合性など、様々な要素を総合的に判断し、自身の成長と企業の発展が両立できる環境を見つけることが理想的です。
そして最も重要なのは、転職をゴールではなく新たなスタートと捉え、継続的なスキルアップを通じて市場価値の高い人材であり続けることです。監査で培った学習能力と向上心を活かし、変化する経理業務の環境に対応していくことで、長期的なキャリア成功を実現できます。
監査法人での経験は、あなたのキャリアにとって強固な基盤となっています。この基盤を活用し、戦略的な転職活動を通じて、より充実したキャリアと豊かな人生を築いていってください。新たな挑戦があなたを待っています。
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