2017年10月30日
中小企業の事業承継の促進は近年の政策課題の一つ。今年度も、補助金制度などいくつかの施策が実施されています。事業承継に関する制度において、重要な役割を果たすのが税理士。新しい政策に、税理士が深くかかわることが多くあります。最近の事業承継に関する政策と税理士の関係について考えてみました。
今年実施された事業承継推進の制度として、たとえば、平成29年度予算で創設された「事業承継補助金」があります。
事業承継をきっかけに、経営革新や事業転換等を行う企業に対して、経費の一部を補助するという制度です。事業承継を単なる事業の引継ぎとしてではなく、経営改善、生産性向上などとの一体的な取り組みとしてとらえ後押ししていることが特徴です。
同制度が適用されるには、経営革新等の内容や、事業計画の策定や実行支援に「認定経営革新等支援機関」の確認を受けている必要があります。認定支援機関は平成28年11月時点で25,726人、うち17,567が税理士、2,157の税理士法人と、大部分が税理士で占められています。
なお、補助金の募集は終了していますが、成果次第では、今後も同様の施策が実施される可能性があるものと思われ、企業にとっても、また税理士にとっても要注目です。
そして同じく、平成29年度予算で実施される施策として「事業承継ネットワーク構築事業」があります。
同事業は、全国各地域の実情に合わせ、事業承継支援体制を築き、強化するための施策。各都道府県に支援機関の拠点を置き、地方自治体等と連携する事業承継支援のためのネットワークです。
ネットワークでは、都道府県が地域の事業承継支援策の立案・とりまとめを行い、メンバーとなる金融機関、商工会・商工会議所、中央会、顧問先を有する士業等、中小企業と深くかかわる企業・団体に、事業承継に関する施策等の情報、ツールを提供、各メンバーが関与先に事業承継診断等を実施することで事業承継に関するニーズを掘り起こしていきます。
メンバーとなる「(中小企業の)顧問先を有する士業」の多くが税理士であることは想像に難くありません。同事業の成否は税理士の働きに深くかかわっているといえるでしょう。
税理士は、中小企業の財務相談を継続的に受ける立場であること、また相続、承継に深く税務がかかわっていることから、事業承継支援に唯一無二の存在にほかなりません。会社を永続させる体制を築くとともに、経営体として強くするプロセスに、税理士が適切にかかわることは社会的意義の大きいことでしょう。