2014年11月13日
大企業は会計監査により財務諸表の信頼性が担保されています。
これにより出資者、債権者に財務上の必要な情報が渡り、会社への資金調達が円滑に行われることとなります。
一方、中小企業には会計監査人はいません。会社法上の公告をしている会社も少ないというのが現状です。
中小企業にも銀行融資、また取引の上で信頼性の高い財務情報が必要であることは論をまたないところです。
そして、その信頼を担保するために、現実的に顧問税理士が大きな役割を担うことになります。
中小企業の決算業務に関する税理士への期待は、中小企業向けの会計基準の議論で税理士の意見が取り入れられていることや、
会計参与、書面添付などの法制度が税理士の存在を前提に設計されていることからも明らかです。
金融機関で、会計参与、書面添付などの導入企業に優遇融資制度を設けているところが多くなりました。
これは、公的な制度だけではなく、市場においても税理士の知見に経済的価値が認められていることを示しています。
間接金融だけではなく、ベンチャーキャピタルによる出資、デューデリジェンスなどにおいても、
優れた税理士が関わった決算の価値がますます認知されていくことが期待できます。
節税の観点から、税理士は利益を圧縮する役割が強調されがちです。
税務当局以外の市場関係者にとっての決算書の重要性、会計による企業価値向上について、経営者が気づきを得るためにも、税理士による啓発が必要です。
以前、ある税理士からこのようなエピソードを聞きました。
その税理士は、税務の過程で、顧問先企業に不自然なお金の流れを見つけ、経営者に指摘しました。
経営者もピンとくるところがあったのか、社内調査を実施。営業部門の社員がノルマ達成のため、返品割戻しを利用し不正を働いていたことが発覚しました。
組織ぐるみの粉飾でないかぎり、このような発見は経営者に非常に感謝されます。
そして、期間損益を正確に出すことの重要性を端的に認識させることになります。
税理士は外部の監査人と異なり、その後もその会社について、不正防止や組織作りのコンサルティング業務を引き続き請け負うこともできます。
これは、税理士の転職市場においても重要な視点です。企業が税理士の募集をする場合、
経理・税務の担当者のほかに、内部監査的な業務、会計監査への対応役も期待されることが多くあります。
その際、顧問先企業の税務、決算書作成に加え、見つけ出した経理上の問題をもとに、顧問先に寄り添う形で業務改善に取り組んだ経験があれば、
場合によって監査法人勤務経験のある公認会計士にも負けない実績をアピールすることができます。
税理士は、会計士が持つ監査手法もできるかぎり学習した上で、それを顧問税理士としての業務として応用する知識・技術を身に付けることで、
大きなキャリアアップにつながるのではないでしょうか。