2014年9月16日
企業が税務に関して抱える不安の一つが税務調査。実地調査の際に、立会いを行う税理士がすべき主張をしっかりしてくれるのか、ということも懸念材料です。
そこで力を発揮するのが「税務調査対応」を強みとして掲げる会計事務所。
既に顧問税理士を持っている会社に対し、調査対応だけを請け負う事務所も出てきています。
税務調査に関して、興味深いデータがあります。それは、当局による実地調査の減少です。
「国税庁レポート2014」によると、全税目で行った実地調査は、平成22事務年度は28万3千件、23年度は28万9千件。
そして、24年度は約19万9千件と、1年で大きく減少しています。
これには平成24年の4月に施行された国税通則法の改正が影響していると考えられます。
同法により、調査の際の事前通知のルールが明確化されたことが、実地調査を抑制する動きにつながっているのです。
実地調査の減少とともに、調査の質が変化すると考えられます。
国税庁レポートが強調するのは、「効果的・効率的な事務運営」の実施です。
KSKシステムなどを活用して、机上の実地調査先選定の精度を上げ、実地調査で最大限の「効果」をあげることが今後の方針といえます。
一方、今後、集中的に実地調査を行うことが予測できる税目もあります。
とくに申告で注目されるのは、2014年4月に8%に税率がアップし、また2015年10月以降に10%への増税が予定されている消費税でしょう。
国税庁レポートでも調査に関する重要項目として「消費税の不正還付申告の防止」を挙げています。支払い税額とともに増える仕入税額を利用した租税回避に目を光らせているようです。
また、今後、軽減税率の導入や簡易課税制度、免税制度の変更があった場合も、関連する調査は集中的に行われるものと思われます。
もうひとつ注目すべきは、今後課税ベースが大幅に拡大する相続税です。
相続税は、もともと「必ず調査が来ると思ったほうが良い」といわれるほど、実地調査の割合が高い税目。課税ベース拡大により、その割合は下がることが予想されますが、
課税対象者が増えることから、調査件数は増えていくでしょう。
税務調査対応は、会計実務とは違った緊張感があり、的確な税法解釈、調査担当者とのコミュニケーション能力が求められる業務です。
勤務税理士として、調査立会いを行った経験があれば、ぜひアピールしておきたいところです。
その際は、実際に行った税務調査対応について、対象となった税目、当局が問題とした取引、調査時に聞かれたこと、
そしてそれに対しどのような税法を根拠に、どう回答したか、修正申告の慫慂(しょうよう)にどのように対応したか、
といった調査時のエピソードを整理して、論理的に説明する必要があります。
その説明によって、調査対応に関する基本的な姿勢を示せるようにしておくことが大切です。