2015年5月11日
2017年4月の消費税10%への引き上げに向けて、議論が本格化してきました。 消費税の再増税には、もう一つの重要な論点として、引き上げと同時に導入することが検討されている、軽減税率があります。 すでに、軽減対象となる商品の線引きについて意見が百出している状況。 商品ごとの税率決定の困難さ、中小事業者の事務量増加などに関する懸念も示されています。
軽減税率の導入は、当然のことながら税理士業務にも影響します。
税理士として気になることとして、まず現在、消費税の経理方式となっている税込経理の扱いがあります。
経理事務の簡素さから広く利用されている税込経理ですが、軽減税率が導入され、商品ごとの税率が異なることになれば、税抜経理への移行の必要性が発生する可能性が高くなります。
現在、税込経理を行っている企業は対応を迫られることになるため、顧問税理士として、会計システムのアップデートや入れ替え、
経理体制の整備などへの支援が必要となるでしょう。また、簡易課税のみなし仕入率についても制度の見直しが行われることが予想されます。
新制度に合わせ、改めて顧問先に適合した消費税処理の手法について検討する必要がありそうです。
税理士としては、経理方式やみなし仕入率、あるいは免税事業者の扱い等を含め、法制・当局の運用がどのように行われるのか、
今の時点では不明な部分が多く、事前対策を困難なものとしています。とくに、軽減税率との絡みで、
導入されるか否かによって大きく税務の内容が変わるのが、インボイス制度でしょう。
日本の消費税の算定方法である帳簿方式には、導入当初から、益税の発生などの観点から反対意見がありました。
その声は、増税を機に、近年さらに高まっています。「複数税率の導入を行うなら、インボイスの導入が必須」との意見も頻繁に聞かれるようになり、
再び消費税制の根本的な改正の必要性が議論されている状況です。
インボイスとは、仕入税額など必要事項が記載された送り状のこと。
インボイス制度の導入が行われると、インボイスを保存し、その内容に沿って記帳を行わなければ、仕入税額控除ができなくなります。
事業者にとって実務の変化が著しいため、不安感は強いはずです。
税理士には、制度適用をスムーズに行うためのアドバイザリー業務で不安を払しょくすることが期待されます。
日本税理士連合会をはじめ税務団体は、軽減税率とそれに伴うインボイスについては中小企業の事務負担の増加、
免税事業者の取引排除等、導入によるデメリットについて意見を提出しています。一人ひとりの税理士も、あるべき税制について、
様々な意見を持っているでしょう。事業者の実態をつぶさにみてきた税実務家が、税制に関して意見表明をすることは非常に大切なことです。
とはいえ、会計人は、新たな税制が導入されることが決定した場合は、施行前から法制、当局が示す通達や指針、ガイドラインなどを読み込み、
顧問先に生じる課題を分析し、諸々のリスクを最小限にするために手を打つ必要があります。
今から、新たな制度が導入されたときに、どのような対策が必要となるのか、論点を整理し、
理解を深めておくことが重要なのではないでしょうか。