2017年9月19日
企業業績の回復傾向が顕著になっています。国税庁の「平成27年度分会社標本調査結果~税務統計から見た法人企業の実態~」によると、黒字法人の割合が5年連続で増え、所得金額が過去最大となりました。同調査の結果を概観し、企業経営の状況を考えてみましょう。
平成27年度、連結法人1グループを1社とすると、利益計上法人は前年度比6万3,175社増の93万9,577社で5年連続の増加。一方、欠損法人は同3万8,513社減の169万859社。欠損法人割合は64.3%、利益計上、つまり黒字法人は35.7%となりました。
この黒字法人の割合の増減は、税理士業界でもよく話題になりますが、前平成26年度の33.6%から2.1%アップ。そして、黒字法人の所得金額は、57兆2,354億円で、6年連続増加で過去最大となりました。法人税額も、10兆5,014億円と、前年度の10兆2,098億円から約3,000億円増加しています。
次に、利益計上法人における益金の処分の内訳を見ます。構成比で見ると「社内留保」が45.6%、「支払配当」が28.9%、「法人税額等」が14.5%、「その他の社外流出」が11.0%となっています。
この数字を前年度と比べてみると興味深いデータとなります。平成26年度の益金処分の内訳は「社内留保」51.8%、「支払配当」23.4%、「法人税額等」14.7%、「その他の社外流出」10.1%。顕著に変化したのは、内部留保の減少と配当の増加です。
内部留保と配当の関係を決める要素には様々なものがあり、このデータだけで要因を分析するのは困難ですが、増加した利益を、投資資金としての内部留保するのではなく、配当に回したように見えます。企業の株主への利益還元への意識が高まったことと同時に、また資金調達が必要となる新たな投資先がない状況であることが考えられるかもしれません。
今回の調査結果は税理士にとってはやはりポジティブに受け取れるものでしょう。税理士としては、利益が出ている会社が増えることはいうまでもなくプラス。企業業績が今後も上がれば、会計専門家の活躍の場は増えていくものと考えられます。顧問税理士として赤字企業を黒字化させる方策を、今後も打ち続けていきたいところです。
そして、黒字を確保した企業の中には、利益率の高い事業を求め投資に乗り出す企業もあるでしょう。利益を出し続けるための投資活動を、会計税務の面からサポートするのも税理士の役割です。顧問先の財務診断や投資判断に資する情報を提供し、また設備投資や研究開発、生産性向上に関する各種優遇税制なども駆使しながら、イノベーションの創出をサポートしていきたいところです。