2015年11月26日
景気回復の傾向が各業種でみられる中、特に最近、訪日外国人による「インバウンド需要」の高まり等で話題となることが多いホテルや旅館など観光関連業種。今回は、ホテル・旅館業の現状に触れながら、会計・税務やコンサルティング等、税理士業務としての様々な可能性について考えてみます。
ホテル・旅館業の足元の景気は好調です。観光庁が平成27年8月31日に発表した「宿泊旅行統計調査」によると、平成27年6月ののべ宿泊者数は3,813万人泊で前年同月比+8.5%。そのうち外国人が549万人泊、前年同月比+56.1% と大幅増。全体に占める外国人宿泊者の割合は14.4%と、次第に存在感を高めています。
とはいえ、ポジティブな数字ではありながら、全体でみると近年、ホテル・旅館等の観光業界は決して好調というわけではありません。リーマンショック、東日本大震災後の消費需要の落ち込み等で、老舗旅館、ホテルの倒産のニュースが多く報道されたのは記憶に新しいところ。観光業界の現状にはプラス・マイナスの両面があり、地域によって二極化が生じる可能性も指摘されています。
さて、ホテルや旅館の税務・会計における特徴には、現金売上が多いこと、人件費の割合が高いこと、アメニティ等の備品を一つの取引先から継続して大量購入すること、そして施設の修繕が頻繁に行われるため、修繕費と資本的支出の損金算入時期で問題になりやすいことなどがあります。
コンサルティングでは、経費圧縮による財務体質の改善、減少が著しいといわれる団体客を取り込む旅行業名代理業者等エージェントとの関係構築、また個人客へのアピールを行うホームページや口コミサイト等のメディア戦略などが重要となるでしょう。
また、観光業は地域の他事業者らとの連携が不可欠。自治体や商店街、観光案内所、競合他社などを含めて一丸となって地域の魅力を高めていくための戦略構築の助言を行うことが求められます。そして今後は、海外観光客を取り込むためのサービス、外国語案内表示、通訳ガイドなどに関するアドバイスへの需要が高まることも間違いありません。
これまでは、先述の苦境から、再生案件としても話題になることが多いホテル・旅館業だけに、会計業務ではM&Aの案件が多く発生していました。現在は、再生業務や資金繰り、財務体質の健全化という、どちらかといえば守りのコンサルティングに加え、積極的な売上増加に資するコンサルティングが求められる機運が高まっている状況といえます。
とくに、地方で働く税理士は、近隣の観光地の特質をよく知ることができます。地域の特色を生かしたオンリーワンのコンサルティングサービスを提供できる、観光業のエキスパートの登場が期待されます。