2015年2月3日
会計人にとって、移転価格税制等の国際税務は、今後一層、重要性を増す課題。
しかし、中小企業の税務を行う税理士には身近に感じられないのも現実です。
たびたび新聞紙上を賑わす移転価格税制の億単位の追徴のニュースを読んでも、中小企業とは縁遠いものと感じてしまう方が多いでしょう。
しかし最近、移転価格税制に関する調査対象に変化が見られます。中堅企業に対して、当局が調査に本腰を入れはじめている様子がうかがわれるのです。
国税庁の調査事績によると、移転価格税制の実地調査の件数は、平成14年度の62件から増加し続け、平成23年度は182件、平成24年度は222件と過去最多になりました。
平成25年度は170件に減少していますが、これは国税通則法改正等が影響したとみられます。
そして、注目しておきたいのが調査による申告漏れの金額です。10年ほど前は、調査1件あたりの申告漏れ金額は20億円程度で推移していたものの、
平成23年度は4億6千万円、平成24年度は4億4千万円に、平成25年度は3億2千万円まで下がっています。
税務行政の観点からは、従来、主に国税局によって行われていた調査が、税務署におりてきている状況です。
移転価格税制が困難なのは、課税される企業に申告漏れの認識がなく、継続的な取引について巨額な追徴が行われること。
その「見解の相違」の原因は、海外の自社グループとの取引が適正であるか否かの基準となる、「独立企業間価格」の算定です。
価格が算定しにくい対価としては、例えば、外国の関連法人への設備の貸与、製造ノウハウ等の無形資産の移転、また本国の社員を派遣しての役務提供等があります。
対価を支払う認識自体がなかったという事例もあってか、調査では特に目をつけられるポイントになっています。
大企業では、これらの移転価格の根拠を示す書類の整備、国税当局への事前確認などの対策が進んでいますが、中堅企業は未だ対策を行っていないところが多くあります。
現在の当局の傾向は、この未対策の中堅企業に対して調査を行う姿勢を示しているといえるでしょう。
移転価格税制の調査が中小企業へ広がることにより、大企業の税務を多く行う監査法人系の税理士法人に所属する税理士だけではなく、
中小規模の会計事務所に勤務する税理士も対策を迫られます。
顧問先の海外取引について、価格の適正さの精査を行った上で、調査の事前対策を早めに行う必要がありそうです。