2015年2月5日
税理士の主要業務として、会計上の利益を税法に則って調整し、税務申告を行うことがあります。
会計上の利益と所得の違いは、すべての税理士が注目しているはずです。
しかし、その差異を会計上の資産として計上する税効果会計について、実務上の必要性を感じている税理士は少ないのではないでしょうか。
税効果会計が税理士に注目されにくい理由として、中小企業は税務会計が事実上の財務会計となり、
申告書を利用して融資等の審査が行われていることがあります。
税効果会計を施した決算書を開示する機会がないため、改めて学習する機会を見出しにくいのです。
大企業では義務となっている税効果会計ですが、中小企業は強制されていません。
例えば、会計参与設置会社を想定した「中小企業の会計に関する指針」では、任意的な取り扱いとなっています。
ただし、同指針でも、重要性の高い一時差異がある場合には適用すべきと記載されており、中小企業に無関係ではない存在であることは確かです。
中小会計でも注目される「一時差異」は、税務上当期に損金にはできず、将来の税額に影響すると予測される金額です。
税額が将来減少する場合は繰延税金資産、増える場合は繰延税金債務として計上されます。
税効果会計を行えば、負債が多く計上されることもありますが、多くの企業では、退職金引当金や欠損金の繰越控除など、
将来、減算一時差異によりプラスの資産となることが多いと考えられます。
融資等において、良い影響が出る可能性があることが重要なポイントです。
税理士としては、繰越税金資産、負債額がどのように導き出されるのかといった基礎的な論点を整理し、仕訳や財務諸表の注記等の実務を最低限学んでおきたいもの。
不確定である将来の課税所得の予測を伴うもののため、業績の見込みについても信頼度の高い説明をすることが必要となります。
税効果会計はその名のとおり、税に関連する会計手法であり、法人税法に関する知識が必須となります。
税の専門家である税理士に強みがあることは間違いありません。
税効果会計を学習しておくことで、直接的には、大企業の会計業務を手がけるスキルを身に付けることができます。
また、現在顧問先として関与する中小企業についても、税効果会計を採用した際の損益、資産の状況について計算、与信などのメリットを提示し、
適用について積極的に提言することで、業務の幅が広がっていくものと思われます。