2015年11月30日
平成27年度税制改正のうち、会計事務作業に大きく影響する変更のひとつが、領収書等の証票電子化制度の改正。原則としてすべての領収書等の電子化が可能となりました。従来の電子化制度と比較しながら、税理士の後押しで、使い勝手の良くなった同制度を活用して中小企業の業務改善を行う可能性について考えてみます。
「電子帳簿保存法」では従来、領収書や契約書など国税関連の証票となる書類は、改ざんによる経費水増しの防止等、信頼性の担保の観点から、金額3万円未満のもののみ電子ファイルによる保存(スキャナ保存)が許されていました。しかし「少額の取引にしか適用されないのでは利便性が低い」との声が強くありました。
今回の改正により、この金額制限が撤廃され、原則的にすべての会計書類をスキャナ保存(デジカメでの撮影は不可)することが可能となりました。電子化には税務署へ3か月前に申請することが必要で、平成27年9月30日以後から申請が開始されています。実際にスキャナ保存と原本破棄が可能となるのは平成28年1月以降ということになります。
業務改善のため、社内文書の電子化によるペーパーレス化を実施する企業が増えています。国税関連の書類については、上記の金額制限により電子化は進んでいませんでしたが、今回の改正により大きく前進したと言ってよいでしょう。
しかし、会計証票に限らず、紙ベース・手書きの書類を電子化するにはシステム変更、機器の購入、一時的な事務作業の増加など、イニシャルコストがかかります。また、目に見えるコストだけではなく、心理的抵抗もあります。特に中小企業では、慣れ親しんだ形式を変えることにハードルがあるのが実情です。
書類の電子化は、実施してみると、その利便性にすぐに気づくもの。ここで重要となるのが第三者からの後押しです。メリットが理解されやすい領収書等の電子化を手始めに、社内の申請・届け出などの文書、また取引先との契約締結の電子化が行われ、ERPによる業務システム統一などといった大規模改修につながることも考えられます。
もちろん、技術的なシステム導入、整備については税理士の業務範囲からは外れますが、中小企業の経営者、経理担当者に身近に接する税理士が、業務改善のための大きな一歩を踏み出させる意義は非常に大きいものがあるのではないでしょうか。