2016年3月22日
税理士は、起業家から法人設立、会計体制の構築などスタートアップの相談を多く受け、事業の成功を力強くサポートする存在。その際は、株式会社はもちろん、合資会社や合同会社などの持分会社等、事業体の選択も行います。その選択肢のひとつとして今回注目するのが、有限責任事業組合(LLP)です。
2005年にスタートした有限責任事業組合(LLP)。その最も大きな特徴は、その名の通り有限責任です。債務の差し押さえが原則として個人に及ばないため、出資者を集めやすくなります。
また、LLPは商業登記ができ、不動産の所有などもLLP名義で行うことができます。契約で出資や利益分配の方法などの自由に決められる内部自治も特徴です。組織としての一体性を持ちながら、契約により事業による果実を自由に配分できるフレキシブルな事業体といえます。
LLPは、様々な個人、法人が責任を限定しながら資金やノウハウを提供し、将来有望な分野で共同事業を行う場合に有益であり、ジョイントベンチャー、産学連携事業、不動産デベロッパー、最近ではエネルギー関連事業での活用も注目されています。
LLPの税務上の特徴として、構成員課税、いわゆるパススルー課税があります。LLPは法人ではありませんので、組合で得た利益は、法人所得にはならず、構成員となる法人や個人の所得となり、そこに法人税や所得税がかかることになります。
米国等では、LLC(日本における合同会社)などにおいてパススルー課税が採用されていることもあり、日本でも持分会社に導入するべきだとの議論もありましたが、現在のところパススルー課税が適用される法人はなく、似た形態をとるのであれば、LLPが最も適しています。
多くの税理士は個人事業者の法人化の支援を行ったことがあるでしょう。しかし、LLPは多くの事業者がかかわる「契約」であり、税理士が業務として関与するきっかけは多くないのが現状です。パススルー課税であるため、「法人成り」による所得税節税として利用できないことも税理士とかかわりが浅い理由のひとつでしょう。
しかし、組合契約と登記のみで設立が容易なLLPは、中小事業者が新たな事業を立ち上げる際に使い勝手が良い制度です。税理士が、弁護士や司法書士とも連携しながら、LLP設立について財務知識をもとに提案できれば、起業サポートの幅がより広がるのではないでしょうか。